劇場公開日 2010年12月1日

「日本VFXの新しい船出」SPACE BATTLESHIP ヤマト ジェームズ・ボンドさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5日本VFXの新しい船出

2011年2月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

宣伝に日本初のSFエンターテイメントと謳っていたが、では今まで日本映画はSFを作ってこなかったのか・・・?いや、決してそんな事はない幾つか作品を挙げると・・・(アニメは除く)。
「地球防衛軍」「吸血鬼ゴケミドロ」といったSFの王道侵略物。
「時をかける少女」「転校生」といった日常を舞台とした物。
「日本沈没」「世界大戦争」といった終末物。
「海底軍艦」「ガンヘッド」といったスーパーメカニック物。
「マタンゴ」「リング」といったホラー物。
とけっこう幅広く作られているのだ。
そうそう「ゴジラ」や「ガメラ」といった怪獣物だってSFだ。
そんな和製SF映画だがどうしても苦手とする分野がある、それが宇宙を舞台としたスペースオペラだこれだけが何故か作れない。
何故作れないか、幾つか理由を挙げると
1.企画が通らない、通っても満足な製作費を確保できないー作る以上はヒットさせなければならないそれだけに制作費に何十億と掛かるこの手の企画に手が出ない。
2.脚本家がいないーSFを書く小説家はいるのに不思議な話だ。
3.監督がいないー昔SFを馬鹿にする監督が本当にいた、今更ながら本多猪四郎氏の偉大さがわかる。
4.役者がいないーこれが一番の問題、農耕民族の体系である日本人では宇宙空間、そして宇宙服が似合う役者がいないのだ。
5.観客が観に行かないーつまらなさそう、子供騙し、所詮ハリウッドに敵う訳がないといった偏見にも似た理由で観に行かない、当然ヒットしないそうして又理由の1.に戻る、こんなナイナイずくし堂々巡りの繰り返しなのだ
といっても全く宇宙物を作らなかった訳ではない映画全盛期の60年代には
「宇宙大戦争」ー世界初の宇宙戦闘シーンを描いた事で有名。
「幼星ゴラス」-元祖アルマゲドン、その発想はハリウッドも適わない。
「ガンマ第3号宇宙大作戦」-エイリアンの元ネタともいえる怪物フローラは今見ても結構怖い。
しかし映画界が不振になると前述した理由が表面化して作られなくなってしまう、だがあの「スターウォーズ」が公開された78年、ブームに乗ろうとして「惑星大戦争」「宇宙からのメッセージ」が公開、TVでも「スターウルフ」「宇宙からのメッセージ銀河対戦」が作られたが何れもブームに便乗しただけにすぎずどれも作品的にも技術的にも惨敗に喫しました。*「宇宙からのメッセージ」のみラストの戦闘シーンがアメリカで絶賛され後に「スターウォーズジェダイの復讐」で模倣されるという意外なオマケがつきました。
そんな現状を打破しようと84年には「さよならジュピター」も公開されたが結果はやはり大惨敗、もうどうしようもなくなってしまう。
だがいつしか時は経ち映像処理がアナログからデジタルに変わりで昔出来なかった映像も比較的簡単できるようになり今や一般映画にもデジタルCGが使われるようになった。
そしてSF世界が似合う俳優も揃い始めSFのヒット作も出始めたそして・・・・・・。
前置きが長くなったが「ヤマト」である。
あの「ゴジラファイナルウォーズ」を観た時「ヤマト」の実写化はいつかなるものと思っていたが前述した理由をクリヤ出来ても少なくても10年以上は掛かるものだと思っていた。それがこんなに早くできるなんて事にまず驚いた。
自分はヤマト世代である。アニメで一番好きな作品でシリーズを全て観てきて思い入れも特に強いだけに本家本元であるにも関わらずまるで出涸らしを観せられたかのようなあの「復活篇」の後だけに期待と不安が入り乱れていたが結果は期待以上のものだった。
良かった点
1.第1作のストーリーに「さらば」と「完結編」を合わせた内容はへたをすると不自然になるところだったがうまくまとめてあった(「永遠に」が入っていない様に思えるが1ヶ所それらしい所がありましたそこは皆さんで見つけて下さい。)そしてヒットしても続編は作らないようにしたその潔さが気に入った。
2.ガミラスとイスカンダルの設定変更。批判も多いが個人的には納得のできるものでそれこそガミラス人をアニメと同じ青い顔の人類にしたらそれこそ学芸会になりかねないものになったのではないか?(ただ設定が新スタートレックのボーグに似通っていたのが気になったが)
3.配役が1つを除いてピッタリだった事。キムタクは想像以上に古代になりきっていた今では彼以外では考えられないのでは、沖田艦長役は個人的には中尾彬と思っていたが山崎努の沖田艦長は松本零士とひおあきらの漫画版を合わせた様な感じだった。最も物議を醸した黒木メイサの森雪はいざ始まってみるとこれもありかなと思えてきたのが不思議だこれが始めに予定されていたあのエ○カ様だったらどうだったか?ギバちゃんの真田もまさにはまり役だった。ただもう少し古代との交流があればあの最後の台詞も活きたと思う。西田敏行の徳川機関長も意外にはまっていたがもう少し出番があればもっと印象に残ったのに。そして緒方直人の島はアニメと設定が大きく変わった事に違和感を感じたがこれも意外にはまっていた。そしてなにより驚いたのがブラックタイガーの山本、髪型から何もかもがアニメそっくりだった。
4.最も重要なVFXが想像以上の出来映えだった。特に発進シーン、ガミラス星の攻防シーンは出色の出来だった日本映画もやっとこれだけのものが出来るようになったのだ、そしてなにより制作費が20億でこれだけのものできるのだから大したものだ(これがハリウッドだったら100億は掛かるだろう。)
もちろん批判すべき点もある。
1.高島礼子の佐渡先生。佐渡先生は単なるギャグメーカーではない。シリーズの中でも何度か重要な台詞を言っているあなどれないキャラである(例、第1作23話)それだけにこの変更は納得ができない艦内をウロウロするだけの高島礼子は一升瓶を持ってミーくんを連れていても最後まで佐渡先生には見えなかった。自分としては角野卓造氏こそ適役だと思っていたのに・・・。
2.最初の一撃を主砲にせず波動砲にした点。この主砲こそがヤマトの最大のアピールポイントでありアニメでの最初の一斉発射シーンは今見ても身震いする程感動する。それだけに今回もそれに習って欲しかったこの一発が有るからこそ最大武器の波動砲も活きてくるというのに・・・。またその他の武器パルスレーザー、迎撃ミサイル、艦首ミサイルもしっかりと描写して欲しかった。(個人的には煙突ミサイルも)
3.劇場版アニメ以上に時間の流れを感じない点。ナレーション及び字幕でもいいからあのおなじみのフレ-ズ「地球滅亡まであと○○日」を使って時間の経過を表現して欲しかったあれでは本当にイスカンダル迄何日も掛かっていない様に見えてしまう。
4.ガミラスのメカが印象に残らない点。ギャラクティカのメカを模倣したと言われても仕方がない、アニメのデザインをグレードアップしたものでもよかったのでは?
とにかくこれが作られ無事ヒットした事をもっと喜ぼうではないか、そしてこれを単なるイベントにしないで欲しい、せっかく培った技術も浴びせられた批判も次に活かされなければ意味を成さない、アニメの実写化でも良いからぜひ次に期待したい、そして実写化するなら以下を候補に挙げたい。
松本零士作品なら当然「999」。今回のCG技術を更に高めればクリスタルボーイが出来る筈「コブラ」。ヒットすればシリーズ化も可能「クラッシャージョー」。これこそアニメより実写向き「幻魔大戦」。そしてこれが出来れば本当に本物「銀河英雄伝説」。
いかがだろうか?

ジェームズ・ボンド