劇場公開日 2010年12月1日

「異星人=悪という捉え方をそろそろ止めにしませんか?」SPACE BATTLESHIP ヤマト U爺さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0異星人=悪という捉え方をそろそろ止めにしませんか?

2010年12月29日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

四半世紀以上も前に社会現象を巻き起こしたあのアニメの実写映画化。私はまだ子どもだったのでそういう作品があったということしかほとんど覚えていないんですが、“ガンダム以前”にアニメが世の中にセンセーションを巻き起こしていたという感覚は何となく覚えています。
すさまじい経済発展を経験しつつあったあの時代、カミカゼのように強く波に乗った日本の力を信じられた気持ちと、軍神ヤマトの象徴するイメージとがうまく同調したのかもしれません。

環境問題が叫ばれる現代、根底にあるテーマは一致しており、強い日本を“信じられた”気持ちと“信じたい”気持ちというニュアンスの違いがあるものの、そういった意味ではまさに時流に合ったこのタイミングの映画化といえるかもしれません。VFX技術も素晴らしかったです。

しかし、私は映画と限らずこれからの作品作りにおいては、“ハード”の部分に対して焦点を合わせるのと同じくらい“ソフト”面についても繊細に感じてみる必要があるのではと思いました。
20世紀はとにかく、戦争にしろ経済にしろ“奪い合い”の時代でした。しかし、少しづつではありますが人々の意識が変わってきているということを感じています。もの作りに携わるのであれば、私たちの集合的無意識がどこへ向かおうとしており、作品作りを通じてどのような貢献ができるのか—、という点についてこれからはより繊細に感じとるべきではないでしょうか。

「ヤマト」に限らず日本の大作映画を見ていて感じるのは、とにかく私たちは内外の“敵”と闘うことに囚われていすぎると思います。内では人間関係で不必要に戦い、外では命を張った物理的な戦いがある。たとえば数年前に流行した「アミ 小さな宇宙人」のような本を読んでもらえれば言いたいことが分かって戴けると思うのですが、私たちは高度で知的であるどころか、いかに好戦的で精神的に未発達な存在であるか、ということを思い知らされます。第三者的な視点から地球を眺めてみることの重要性を今ほど感じることはありません。200年も未来の宇宙を舞台にするのであれば尚更のこと、そのような視座を持ってほしかったと思います。

戦いを放棄した愛にあふれた宇宙映画、いつか観てみたいものだと思います☆

U爺