劇場公開日 2008年6月28日

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告発のとき : インタビュー

2008年6月27日更新

現代ハリウッド最高の脚本家と称されるハギスが、05年度のオスカー作品賞受賞作「クラッシュ」に引き続き、再び監督に挑戦した本作。監督ハギスの本作製作にかけた思いを聞いた。(編集部)

ポール・ハギス監督インタビュー
「これは、僕らが直面しなくてはならない厳しい現実を描いた映画なんだ」

“今、何が起きているんだ”と自分に問いかけた答えがこの映画だという
“今、何が起きているんだ”と自分に問いかけた答えがこの映画だという

――この物語を書き始めたのはいつですか?

「イラク戦争が始まって1年後の03年頃から、心を悩ます物語を耳にするようになった。
その後、ネットでイラクの兵士たちが作っているビデオクリップを見たんだけど、いずれも心を掻きむしられるような内容ばかりだった。そこで、“今、何が起きているんだ”と自分に問いかけてみたんだ。それから、帰国した退役兵数人に取材し、彼らの生の声を聞いているうちに、この話の基になっているマイク・ウォールズの物語に出会ったんだよ」

――資金集めが大変だったようですね。

「エージェントから申し出があって、映画化を決意したのはいいんだが、なかなか資金が集まらない。その後、半年間エージェントが奔走したけど駄目だった。そこで、クリント・イーストウッドに助けを求めたら、彼がワーナー・ブラザースに持ち込んでくれて、ようやく製作にGOサインが出たんだよ」

ハリウッドの中心的存在となった ポール・ハギス
ハリウッドの中心的存在となった ポール・ハギス

――トミー・リー、スーザン、そしてシャーリーズという3人のアカデミー賞俳優が集まる豪華なキャストになりました。

「みんなが考えるよりも簡単で、僕はただ彼らに電話しただけだよ。幸運なことにシャーリーズとは、ここ数年何度か会うことがあった。僕は彼女と会う度に、今回の映画のストーリーを話していたので、彼女はうんざりしていると思っていたんだが、出来上がった脚本を送ったらすんなりと出演を決めてくれたよ。次に、トミー・リーのエージェントに電話すると、彼もすぐに出演を決めてくれた。ギャラが普段より少ないにもかかわらずね。スーザンも含めて、ただやりがいのある役というだけで引き受けてくれるんだからこの3人には、本当に感謝しているよ」

――最初はトミー・リーが演じた退役軍人の役を、クリント・イーストウッドに演じて欲しかったそうですが?

「それは、僕の頭の中だけのことだよ。この企画が立ち上がった頃にクリントに尋ねたことで、この話をする前に彼は、「『ミリオンダラー・ベイビー』に出るために私は俳優引退を撤回したけど、俳優として、これまでよりいい仕事が出来たと思うか?』と聞いてきたんだ。いずれにしても、これは終わった話さ。それに、クリントもトミー・リーがこの役に最適だと言っていたからね」

――この作品について、監督自身はどのように定義していますか?

「この映画で言いたいのは、この戦争に正当性があるにせよないにせよ、争点はそこじゃない。こういうことが起きているということなんだ。これが、僕らが直面しなくてはならない厳しい現実だ。皆で直面しなければならない。僕も他の人と同罪だ。開戦前に僕が反対したかどうかは問題じゃなくて、今これが起こっているという現実がある。この状況に目を見開き、それに対処しなければならないんだよ」

今のアメリカの厳しい現実が描かれる
今のアメリカの厳しい現実が描かれる

――この映画は、反戦映画なのでしょうか?

「ノー。だけど戦争賛成の映画でもない。そうだったら、最初から作らなかっただろうからね。クリントの『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』も戦争賛成映画ではない。僕が語りたかったのは、このような状況に置かれた男と女が、どのような人間だったか、そして彼らに何が起こったのか、ということなんだ。でも究極的には、戦争反対の物語になっていると思う」

――「クラッシュ」は社会の人種差別を題材にしていましたが、今回は戦争とPTSDが題材でした。将来は別のジャンルを手がけたいと思いますか?

「僕は、その時々の懸念事項に関する映画を作る必要があると思っている。その時に僕が懸念していること、僕には答えの出せないことをね。政治的テーマばかりとは限らないよ。それはハートの問題かもしれないし、ロマンティックコメディになることもあるかもしれない。でも僕は、この地上で与えられた時間は限られていることを知っている。だから、最善を尽くすのみさ」

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