アウェイ・フロム・ハー君を想う : 新作映画評論

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アウェイ・フロム・ハー君を想う

劇場公開日 2008年5月31日
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アウェイ・フロム・ハー君を想う 5月31日より銀座テアトルシネマほかにてロードショー

悲劇の中でこそ、人間のエゴや許容度が顕わになる

画像1(C)2006 The Film Farm/Foundry Films/
pulling focus pictures Inc.

どんなに仲の良い夫婦でも、お互い20%位は相手に不満を抱いているもの。その不満を押さえて一緒の生活をキープさせるのが、積み重ねてきた共通の記憶だ。もし突然、その記憶が奪われたら夫婦の絆はどうなるのか。アルツハイマーに記憶を奪われた妻を前に、夫は、積み重ねてきた夫婦の絆を突然ゼロに戻されたと感じる。病気だから仕方がないという境地にはほど遠く、今までの2人の絆さえあやふやに思ったり、妻が過去の自分の浮気を罰しているのではと疑ったりする。悲劇の中でこそ、普段は見えない人間のエゴや許容度が顕わになっていくというサラ・ポーリーの視線がシビアで、人間ドラマとして説得力がある。冬のカナダの凍てついた空気を感じさせる透明感のある映像、そして静かな演技。知的で思慮深い演出は、サラの並々ならぬ才能を伺わせるに十分だ。

ただ、記憶が壊れた妻との関係さえもYESかNOかと突き詰めて確認したがる夫を見ていると、これは個と個が向き合う西洋文化の精神構造なのでは?という気もしないではない。小津映画に見るごとく、夫婦が並んで同じ方向を見ている日本の夫婦は、曖昧さという知恵を使ってもっと穏やかに苦しい時を乗り越えるだろう。そんな気にさせられた。

森山京子

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ABOUT THE MOVIE

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  • アウェイ・フロム・ハー君を想う
  • 「スウィート・ヒアアフター」「あなたになら言える秘密のこと」のサラ・ポーリーが、アリス・マンローの短編小説「クマが山を越えてやってきた」を自ら脚色し、長編監督に初挑戦した人間ドラマ。44年間連れ添った仲睦まじい老夫婦が、妻のアルツハイマー病発症をきっかけに変化していく様を描く。妻のフィオナにオスカー女優のジュリー・クリスティ。夫グラントにカナダの名優ゴードン・ピンセント。製作総指揮はアトム・エゴヤン。
  • 原題:
    Away from Her
    監督・脚本:
    サラ・ポーリー
    製作:
    ダニエル・アイロン、シモーン・アードル、ジェニファー・ワイス
    原作:
    アリス・マンロー
    撮影:
    リュック・モンペリエ
    音楽:
    ジョナサン・ゴールドスミス
    出演:
    ジュリー・クリスティ、ゴードン・ピンセント、オリンピア・デュカキス、クリステン・トムソン、マイケル・マーフィ、ウェンディ・クルーソン
    2006年カナダ映画/1時間50分
    配給:
    ヘキサゴン・ピクチャーズ、アニープラネット
  • 5月31日より銀座テアトルシネマほかにてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C)2006 The Film Farm/Foundry Films/pulling focus pictures Inc.

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