劇場公開日 2009年1月24日

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「すごいアクションのデパートのような作品。でもストーリーに取り残されてしまいました。」007 慰めの報酬 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0すごいアクションのデパートのような作品。でもストーリーに取り残されてしまいました。

2009年1月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

★★★★☆
 前作カジノロワイヤルのラスト1時間跡という設定だけに、冒頭が前作のエンディングシーンになっていて、激しいカーチェイスを展開します。車が何台も吹っ飛ぶ壮絶さ。のっけからこれは半端でないアクションだと感じさせてくれました。
 アクションはここだけでなく、全編にわたってほぼノンストップに続いていきます。ホワイトを追うシーンでは、道具を使わず自分の体だけで屋根から屋根へ障害を乗り越えていくスポーツ「パルクール」を取り入れています。前作よりも遙かに危険で難易度の高い移動シーンでした。これは『K-20怪人二十面相・伝』が参考にしたようですが、さすが本家だけに迫力が違いましたね。
 他には船や飛行機でのチェイスもあり。まさにアクションのデパート状態。圧巻は、ラストは敵が集まるホテルが爆発で崩壊する中、カミーユを救うために炎の中に飛び込むところです。
 シリーズで一番短い上映時間でしたが、余りに濃密なアクションシーンの連続に痺れてしまい、短さを微塵に感じさせませんでした。

 但し展開がすごく早く登場人物が多いので、前作のおさらいと今回のリサーチをしておかないとあれは誰だっけ?と考えいくうちにストーリーに取り残されてしまいました。
 そこで、老婆心ながら・・・
●カジノロワイヤルのおさらい
 イギリス秘密情報部員となったジェームズ・ボンドの初仕事は、ポーカーでル・シッフルを負かして破滅させるミッション。
 ボンドは、同僚の女性ヴェスパー・リンド、フランス参謀本部2課のルネ・マティス、 CIAのフェリックス・ライターと連携し、一度は窮地に陥りながらも任務達成に成功します。
 しかし、その直後にヴェスパーがル・シッフルに拉致され、後を追ったボンドも捕まり、金を返すよう拷問にかけられます。そのときル・シッフルはスメルシュの刺客に粛清され、ボンドは命拾い。ボンドはつくづく自分の仕事に疑問を抱いて辞職を決意し、ヴェスパーとの結婚を考えます。しかしヴェスパーはミスターホワイトという男に操られていて、ボンドの金を取り逃げてしまいました。さらにそのヴェスパーは、彼女を追うボンドとホワイトとの追い激しい戦闘のさなかに死んでしまうのでした。
 ボンドはミスターホワイトを撃つところで前作は終了しています。

 そして本作は、捉えたホワイトをトランクルームに押し込め、追っ手を振り切り、Mの待つM16の現地本部へと乗り込むのです。
 ところが本作の敵は、なかなか侮れません。なんとM16の内部にも協力者がいて、ホワイトは逃げてしまいます。
 ホワイトと上司のMまで殺される寸前にまで追い込んだ謎の組織の実態を追って、ボンドは捜査を進めていくうちに、南米のある国が丸々利権を含めて取引されようとする陰謀を突き止めるという話なんです。

 今回のボンドガールは、ボリビア政権転覆をねらうメドラーノ将軍に家族を殺された元ボリビア諜報員カミーユ。
 これまでのボンドガールと違って脱がないし、ボンドとのからみもキスぐらい。ボンドガールの意味合いが変わってしまったようです。
 前作に引き続き、秘密情報部員としては若葉マークのボンドは、次々証人となる人物を殺してしまうなど勝手にやりたい放題で、Mどころか首相まで激怒させてしまうほど。
 今までのボンドが超人的で、斬新なスパイアイテムを使いこなすところが見せ場でしたが、本作はあくまで人間くさくアクションで敵を追い詰めていくところが違っていました。今回国益上ボンドを敵視するCIAなのに、個人的にボンドに協力するフェリックスとの微妙な関係をもっと描いてほしかったですね。

流山の小地蔵