雪之丞変化(1963)

劇場公開日:

解説

昭和十年朝日新聞連載三上於菟吉同名の原作から「王将(1962)」の伊藤大輔と「抜打ち鴉」の衣笠貞之助が共同で脚色、「私は二歳」の和田夏十がシナリオ化。市川崑が監督した仇討ちもの。撮影もコンビの小林節雄。出演は「秦・始皇帝」長谷川一夫、山本富士子、勝新太郎、若尾文子、「秦・始皇帝」「陽気な殿様」の市川雷蔵、真城千都世、尾上栄五郎など。

1963年製作/113分/日本
原題:Revenge of a Kabuki Actor
配給:大映
劇場公開日:1963年1月13日

ストーリー

ここは市村座の舞台に舞う上方歌舞伎の花形女形、中村雪之丞は、思いがけなくも冤罪で父を陥れた、もと長崎奉行、土部三斎一味の姿をみた。江戸下りの初舞台に早くも怨み重る仇に巡り会おうとは……。師の菊之丞は、逸る雪之丞を抑え訓すのだった。その夜の帰途、雪之丞は一人の刺客に襲われた。かつての剣のライバル門倉平馬だった。その場は忽然と現われた侠盗闇太郎に救われた。さて、三斎の娘浪路は、先日の観劇以来、雪之丞のあで姿に側室の身を忘れ恋患の床についた。これを知った川口屋は、大奥を動かすには浪路の機嫌をと、一計を案じた。それを聞いた雪之丞は好機とばかり浪路に近づくが、地位も名誉も捨ててひたすら己にすがる浪路をみて胸を痛めるのだった。そこへ相棒のムク犬を見張りに、女賊のお初が三斎の屋敷に忍びこんできた。だが、雪之丞に発見され追い返されてしまった。胸のおさまらぬお初は、雪之丞の部屋に忍びこみ、そこで雪之丞の秘密を知ってしまった。一方、川口屋は江戸の飢饉に乗じて、江戸中の米を買いしめていた。雪之丞は川口屋の相棒広海屋をそそのかし、広海屋の米を投売に江戸に出させた。ために川口屋は破産し、広海屋に火をつけた。慌てた広海屋は川口屋を絞め殺し、三斎の力をかりるため、浪路を誘拐した。だが広海屋は浪路に刺され、浪路は島抜け法師によって闇太郎の隠家に連れこまれた。闇太郎の知せで雪之丞が駆けつけた時はおそく、浪路は死んでいた。雪之丞は、三斎との対決に彼の屋敷へ乗り込んだが、三斎はもはやこれまでと自から毒を呷った--。長崎一の海産商、松浦屋清左衛門に無実の罪を押しつけて、謀殺した時の長崎奉行土部三斎と広海屋、それに松浦屋の番頭であった川口屋は、松浦清左衛門の遺児雪之丞によってことごとく裁かれた。江戸最後の舞台をつとめる雪之丞の美しい顔には、一抹の淋しい表情が現われていた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5貴重な体験

2024年1月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

興奮

知的

映画.comの方へ
印象欄に「美しい」「カッコイイ」の項目を加えて欲しいです。

市川崑監督作品なので、見慣れた
「金田一シリーズ」や「細雪」の様に早いテンポで、
アップの画面が切り替わって行くのか?と思いきや、
シネマスコープの横長画面を最大限に活かし
一切の無駄の無い画面。
初期の「必殺シリーズ」が、これを参考にしたと思われる、
主要人物にのみ、ライトの当たったタイトな絵作りは、
緊張感が半端無いっす。

観賞後に町山智弘氏の解説動画で知ったのですが、
シネマスコープの正しい使い方として、
海外では「アラビアのロレンス」と並んで評価が高いとの事で、
さもありなんと思いました。

同時に無駄を一切排したタイトな画面作りは、
お金の無い若手映画人には物凄く参考になるんじゃ無いかと思います。
途中、ちょっとしたチープな特撮もクスリと笑えます。

役者陣に目を向けると、
主役の長谷川一夫氏は当時50代で大柄故、
女形を演じるシーンでは玉三郎さまの女形と
比較してしまうと流石に飲み込み辛いけど、
その分、若き日の若尾文子様の麗しいお姿と
山本富士子様の蓮っ葉なのにそこが色っぽい
ドS女子ぶりをご堪能下さい。(笑)

この時代の映画を観ることはほぼ無いので、
午前十時の映画祭ならではの本当に貴重な経験でした。

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星のナターシャnova

5.0流石のオールスター!これぞ娯楽!

2023年2月16日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

いやあ〜
スゲエ〜
面白かったあ〜
大映映画のオールスター…
ハンパねえ…

ストーリーは大方予想通り。
若尾文子の行く末も、ラストの締めの終わり方も、ほぼ予想通り。
台詞も芝居も割と紋切り型だし(ワザと?)
いわゆるツッコミどころも、まあまあ多い。
なのに、観終わった後の、この満足感たるや!
一体なんなんだ?
予定調和なんていうシレッとした批評気取りの言葉なんぞ軽く笑い飛ばし「これぞ娯楽よ!」とでも言わんばかりの千両役者たちの本物の魅力…
とでもいうべきか、あるいは、まさに様式美とでもいうべきか…

しかし、旧態依然とした様式などに安住したりしないのは、流石の市川崑。
この時代らしく、京都の撮影所でのセット撮影だが、所詮は、撮影所のセットの中での作り物の世界なのだ、という事を逆手にとっていたのかもしれない。
スタジオセット特有の極端に作り込んだダークな夜の闇や、ワイドスクリーンを活かした意外な構図のカメラワークも含めて演出がモダン。
やはり、ジャズの導入も効いている。

そして、なんといっても、長谷川一夫のアノ目。
もうアノ目だけで、観客を引き込んで、有無を言わさずに説得させてしまう。
まさにスター俳優の面目躍如。
ちなみに、あの闇太郎…
随分と似てるけど兄弟とかいたっけ?と思っていたら、なんと、本人二役であった。
長谷川一夫を見慣れている人達は、最初の時点で直ぐ分かるのだろうが…
これは、1930年代の第1作の頃から同様だったみたいで、当時としては、所謂お約束だったのだろう。

しかし、こういった作品をリアルタイムで観て育つのと、そうでないのとでは、圧倒的な体験格差が生まれると思う。
やはり、あのシネマスコープ特有のデカくてワイドなスクリーンが効いている。
自宅のディスプレイじゃ、あの満足感は絶対に得ることは出来ない。
これは是非この機会、映画館で観た方がいい。
というか、この頃の日本映画、あまりにも素晴らしい作品が多すぎる。
今回だけじゃなく、毎年、年に1回は同様の特集上映を定期的に続けて欲しい。

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osmt

5.0光と影、究極の芸

2018年6月24日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

萌える

舞台調の映画。でも、光を当てる部分、周りを暗くしてフォーカスする、襖で区切る等でメリハリをつけ、その映像美とともにあきさせない。

市川監督初の時代劇。だから歌舞伎出身の長谷川氏の意向が結構反映したのだろうか?長谷川氏の記念映画に時代劇が”初”という監督を起用するところがおもしろい。長谷川氏若かりし頃の作品のリメイクだから冒険したのか?

コメディリリーフとしてはアクセントとなるも、ストーリー進行的には特にいらないんじゃ、長谷川氏記念映画だから、花を添える役者のために作ったのかと思われるような登場人物も原作に出ている人もいるのね。
ドラマ化されたり、何度か映画化されたりした作品。二役も慣例。他のも見たくなった。

男優の手堅い演技はさることながら、
貞淑な人妻のイメージがあった若尾さんの色っぽいこと。
初代ミス日本の山本さんのあだっぽいこと。
見た目はびっくりだが、雪之丞の所作の美しさ。そしてその葛藤に心をひき裂かれながらも、ある部分バッサリなところに、性根は”男”が垣間見られる。芸の細かさなのか、粗さなのかはわからねど、面白い。

ある意味、日本映画と舞台の融合。シネマスコープの持ち味を存分に使いながらも、断捨離、一部分だけをフォーカスして使う斬新さ。その映し出された一部分だけで、場面を語れる役者の演技。

光と影の独特の使い方で、”映像”として魅せてくれる。
映画の醍醐味を味あわさせてくれる映画です。

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とみいじょん

4.0映画芸術の一つの到達点

2017年12月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

長谷川一夫が20代に主演したシリーズを市川崑が長谷川一夫主演300本記念作品としてリメークしたもの。
既に長谷川一夫は50代半ばになっていた。

どう観ても長谷川一夫の魅力は伝わらないが、市川崑が持てる芸術性を遺憾なく発揮した、スタイリッシュな時代活劇。
光と影、暗闇と鮮烈なカラー、舞台を彷彿させる大胆な構図。
これが市川崑初の時代劇らしいが、実験的な映画表現でチャンバラをファンタジックに描いている。

若尾文子の魅力は伝わる!

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kazz
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