明治天皇と日露大戦争

劇場公開日:

解説

明治天皇と日露戦争をテーマにした歴史映画。新東宝社長大蔵貢の原案から「妖雲里見快挙伝・前後篇」の渡辺邦男が原作を書き、「黄色いからす」の館岡謙之助が脚色、渡辺邦男が総監督した。応援監督に「姫君剣法 謎の紫頭巾」の毛利正樹。撮影は「桂小五郎と近藤勇 竜虎の決戦」の渡辺孝。主演は「桂小五郎と近藤勇 竜虎の決戦」の嵐寛寿郎、「死刑囚の勝利」の天城竜太鄭、田崎潤、「リングの王者 栄光の世界」の宇津井健、中山昭二、「日米花嫁花婿入替取替合戦」の高島忠夫、「風雲急なり大阪城 真田十勇士総進軍」の小笠原竜三郎。そのほか藤田進、江川宇禮雄、阿部九洲男、沼田曜一など、新東宝オールスター・キャスト。シネパノラマミック方式による“大シネスコ”。色彩はイーストマンカラー。同年の5月14日には35ミリ版も上映された。

1957年製作/113分/日本
原題:Emperor Meiji and the Great Russo-Japanese War
配給:新東宝
劇場公開日:1957年4月29日

ストーリー

明治三十七年、ロシヤの極東侵略政策に脅威を感じた日本は、日露交渉によって事態を収めようとしたが、ロシヤ側の誠意のない態度に国内は、自衛のためロシヤを討つべしとの声が高まり、それまで開戦の国民生活に与える影響を考え慎重だった明治天皇もついに開戦のご英断を下された。かくて連合艦隊に護送されたわが陸軍は仁川に上陸を敢行し、一路満洲へと進撃を開始した。一方海軍は、旅順港にある敵艦隊を封鎖し日本海の制海権を握らんとして決死隊を編成、第一次、第二次と相次ぐ閉塞決行に遂に成功したが広瀬少佐、杉野兵曹長はじめ多くの勇士が壮烈な戦死をとげた。次いで黄海大海戦での勝利。この海軍の目覚しい活躍と同様、陸軍数十万の将兵は大陸の奥深く敵を蹴散らしていたが、敵将ステッセルの守る旅順要塞は、攻撃司令官乃木将軍以下必死の攻撃にもかかわらず噂通り難攻不落を誇っていた。乃木将軍の長男もここで戦死した。第一回の総攻撃は、新兵器機関銃の出現に一万五千の犠牲者を出して失敗に終った。一方、大山元帥が率いる他の軍団は遼陽総攻撃を行い、関谷連隊長、橘少佐を失うが、これを占領した。この間旅順要塞への攻撃は休みなく続けられ、ことに十一月三日天長節を迎えて乃木第三軍は要衝二〇三高地攻撃を決行、一時は奪取したが後続部隊が続かず、遂に乃木将軍の二男保典をはじめ全員戦死した。だが激闘幾度、三八年一月遂に二〇三高地は陥落し、ステッセルは旅順を開け渡した。続く奉天の大会戦に露軍も三十万の兵を動員したが、我軍必死の猛攻に、三月十日遂に奉天入城は達成された。一方、バルチック艦隊と、東郷司令官率いる連合艦隊は対馬海峡で接触、海戦史上初の一八〇度転回作戦によって敵艦隊を全滅した。--勝利を祝う提灯行列と万歳の声を陛下は何時までも飽かずに見守っておられた。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

監督
応援監督
毛利正樹
脚本
館岡謙之助
原作
渡辺邦男
原案
大蔵貢
企画
野坂和馬
撮影
渡辺孝
美術
梶由造
黒沢治安
音楽
鈴木静一
録音
鈴木勇
照明
佐藤快哉
製作委員長
大蔵貢
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映画レビュー

5.0太平洋戦争の悲惨な結末の出発点は、日露戦争の圧倒的な戦勝に国民全員が増長してしまったことにある それが本作の本当のテーマだったのだと思う

2020年11月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

これは凄い!
これほどまでに凄い作品であるとは知らなかった
白黒のよく見えない映像、しょぼい戦闘シーン、チープな特撮、過剰な演技の歌舞伎的演出
どうせそんなものであろうと勝手に思い込んでいた自分を恥じたい

特撮は円谷英二の弟子の上村貞夫、黒田武一郎の名前がクレジットされている
1969年の東宝の日本海大海戦の於ける師匠の円谷英二には一歩及ばないが、決して悪くないどころか、場面によっては勝るものすらあるぐらいだ
先頭艦の旗艦三笠を敵艦の斉射砲弾が挟夾し、内1発が直撃しているカットは軍事オタクなら思わず声がでるほど痺れるものだ
海面の波浪表現、航行する艦船の艦首波の表現
どれも素晴らしい

旅順港閉塞作戦のシーンは闇夜の航行シーンは良いがドラマパートはよくない
広瀬中佐にスターを配していないので、どうでも良いサイドストーリーに見えてしまう
1969年の東宝の「日本海大海戦」ではそこを加山雄三を配役して人物背景も描いており、本作の失敗点を参考にしていたことが分かる

中盤の見せ場はご存知二百三高地の攻防戦
しかしこのスペクタクルさはどうだ!
1980年の東映作品「二百三高地」をも上回っているほどだ
CG のコピペが無い時代なのに、遥か彼方まで続く行軍の長い長い隊列には仰天するだろう

雪中の中での二百三高地の攻防戦は、本作でしか観た事がない
これが本当だ
他の作品はなんだか温かい季節のようにみえる
記録写真の現場は雪の丘陵地なのだ
そこでの攻防を「二百三高地」にも負けない迫真さで映像にしている
野砲がずらりと並ぶシーンは素晴らしい

奉天大会戦のシーンも雄大な大平原での大部隊での騎兵の機動などを見せてくれる素晴らしいものだ

嵐寛寿郎は明治大帝はまさに絵画でみるそのままの姿形と雰囲気を再現している
田崎潤の東郷司令長官も、あの有名な戦艦三笠の司令塔での指揮光景を描いた絵画から抜けでたようだ
林寛の演じた乃木大将は、残念なことに笠知衆や仲代達矢が演じたようなオーラはない
しかしその風貌はそっくりに再現できており乃木大将にキチンと見える

ステッセル司令官と乃木大将との水師営の会見シーン、奉天入城のシーンも素晴らしい映像で感激した

では本作は戦前を懐かしむ軍国主義的映画なのだろうか?

違うと思う
なぜなら、「二百三高地」のような過剰に感傷的でこそないが、敵味方ともに近代戦争の巨大な人間を切り刻む機械に投げ込まれ死んでいく光景も表現されているからだ
英雄的に戦って死ぬことを決して本作は賛美してはいないのだ

そして明治天皇と軍部とのやり取りに置いても、端々で太平洋戦争に於ける軍部の在り方への批判的な皮肉に聞こえてくるものなのだ

そしてラストシーンの戦勝に沸く提灯行列の光景
それは戦前の栄光を賛美しているだけのものなのだろうか?

それに被さるナレーションはどうだ

それまで一島国に過ぎなかった日本が、世界列強の間に互していく始まりであった
いまこそ我等は日本民族の誇りと力を合わせて、今後の世界平和の発展に貢献すべきであろう

このナレーションを聞いた時、私達観客はみんな知っているのだ
日露戦争に勝ち、増長して軍国主義に傾斜した結果、中国との泥沼の戦争にはまり込み、遂にはアメリカを相手に無謀な戦争に突入して国を滅ぼしてしまったことを

日露戦争は国防の戦いであったことは間違いない
だかその勝利こそが大敗北の遠因であったことを本作は訴えているのだ

ナレーションの後半の部分は、1957年当時の観客に向けて話されている言葉だ

戦後の復興が進み平和日本の再建が急速に進む1957年の公開
二度とあのような間違いをしてはならない
それを全ての国民自身が肝に銘じなければならないというメッセージだ

太平洋戦争は、決して天皇陛下や軍部が起こしたものではない
あの日露戦争の戦勝に沸いた日本国民こそが、増長し、慢心し傲慢になって起こしたものなのだ

太平洋戦争の悲惨な結末の出発点は、日露戦争の圧倒的な戦勝に国民全員が増長してしまったことにある
それが本作の本当のテーマだったのだと思う

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あき240

3.0・ところどころで詠まれる歌が場面の締めになっててよかった ・天皇が...

2019年6月25日
iPhoneアプリから投稿

・ところどころで詠まれる歌が場面の締めになっててよかった
・天皇が戦するなって言ってるのに反論するヤツいつの時代にもいるんだな
・感傷的な場面がほとんどなくて流れが分かりやすい

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小鳩組

2.0スペクタクルは素晴らしいが・・・

2019年1月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 1904年(明治三十七年)、国交断絶の後、連合艦隊による閉塞隊が旅順に達する前に沈没。そして旅順総攻撃。ロシア側の最新兵器・機関砲と電気鉄条網により第三部隊は窮地に追い込まれる。失敗。犠牲は1万5千余。秋になるとバルチック艦隊がロシアを出航したという報せが届く。日本近海に到達する前になんとしてでも旅順を落とさねばならない。乃木将軍の更迭問題にまで発展したが、天皇の一声でそれは回避される。

 中盤の盛り上がりはやはり二百三高地。乃木将軍の息子(高嶋忠男)が高地に到達して戦死したところか。彼にしてもそうだが、バルチック艦隊に向けての兵士たちが「誰も帰ってこようとは思っていない」などという神風特攻隊の精神がこの頃からあったのだと、これが第二次世界大戦までの日本の戦争の中心に添えられていたことに歴史を感じてしまう。

 明治天皇の高潔な人物像といった描写を除けば、ごく普通の戦争映画であり、50年代の映画にしてはかなりのスペクタクル。まずは戦争を避ける努力、国民のことを思う博愛主義者と、美化しすぎのところが鼻につく。さらに、戦争映画とくれば、最後にどこか虚しさを覚えなければ反戦・厭戦映画にはなり得ないが、最後に喜び沸く国民の姿を描いているので、まさしくこれは戦意高揚を狙ったもの。ただ、敗戦後の日本人に勇気を与えてくれた作品となると、複雑な思いにかられてしまう・・・ちなみに『千と千尋の神隠し』に抜かれるまでは観客動員数歴代1位をキープしていたらしい。

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kossy

4.5日露戦争とは・・

2017年7月30日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

興奮

知的

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亮一君
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