劇場公開日 1969年9月13日

「ピーターの美しさ」薔薇の葬列 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ピーターの美しさ

2020年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ピーターの美しさに見惚れてしまう。こんなに妖艶な人物がいるのかと驚く。新宿のゲイバーで働くエディ(ピーターが演じている)と唐突にスクリーンにデビューしたピーターがアヴァンギャルドな演出の中で虚実がないまぜになっていく。インタビュー映像を挟んだり、当時の文化人たちが本人の役で出演したりなど、虚構と現実を意図的に混濁させる手法で観客の中にある虚実の壁を破壊してゆく。当時の狂乱的かつ退廃的な文化を覗き見る点でも面白い。
ゲイバーで働く人物を描いたことに、監督は「男と女の境界にたっているような人々だから」と答えているのだが、「境界」という言葉はこの映画のキーワードではないかと思う。性別の境界、虚実の境界、善悪の境界などなど。境界の上に立ってみてはじめて見えるものがある、混沌としていて、この映画が描くものははっきりしないが、映画の中には「確固たる曖昧さ」が確かにある。曖昧模糊としていないとこぼれ落ちてしまうものをこの映画はたしかにすくい上げている気がする。

杉本穂高