がめつい奴

劇場公開日:

解説

東宝芸術座で長期公演した菊田一夫の同名のドラマの映画化。「お姐ちゃんに任しとキ!」の笠原良三が脚色し、「羽織の大将」の千葉泰樹が監督した。撮影は「お姐ちゃんに任しとキ!」の完倉泰一。Perspecta Stereophonic Sound。

1960年製作/107分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1960年9月18日

ストーリー

大阪釜ヶ崎--向山鹿はこの一角に一泊三十円の「釜ケ崎荘」を経営している。常客は娘お咲の亭主、通天閣の雄、ポンコツの熊吉と女房おたか、ホルモン焼の小山田初江、絹の姉妹、おさわり按摩のお圭、麻薬の源さん、千三ツ屋の神田……といった面々。お鹿はがめついという定評のあるように、なかなかの財産家だ。お鹿の楽しみは、貯めた金を孤児のテコに見張らせて、台所にかくした梅干のカメの中の札束を数えることだった。泊り客の管理をするお鹿の息子の健太は絹と恋仲だった。お鹿は気に入らない。小山田姉妹は、お鹿が昔奉公していた地主の娘だった。初江は土地をとり戻そうと必死だった。お鹿の義弟、彦八がやって来た。彦八にたきつけられた健太はお鹿と争って首を絞めてしまったところへ、土建屋升金の職人が家をとりこわしに来た。息を吹きかえしたお鹿はかけ合ったが、初江が熊吉の甘言にだまされて身体を奪われた上、土地の権利書を升金に売り飛ばされたためと分った。熊吉をさがした初江は、トランプ占いの店を出しているおたかの目前で、熊吉を刺殺した。お鹿と升金のかけ合いはがめついお鹿の勝ちとなり、三百万円の立退料が払われた。お鹿は勿論、住人たちの立退料をピンハネした。健太はお鹿から借りた金で絹と一緒にウドン屋を開いた。初江は自首した。おたかは初江を待ってパン屋を開くことにした。お鹿はテコをつれて天王寺公園で乞食商売を開いた。ひざの下には札束が沢山敷かれていた。テコに金を貯めることの尊さを教えつつ、お鹿は通行人に何度もがめつく頭を下げた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0過去あるいわ未来の物語

2023年10月28日
Androidアプリから投稿

戦後から復興したばかりの時代を描いた凄まじいブラック喜劇(劇中殺人事件が)かつて裕福だった貧者、のし上がった強者が皆様強烈バイタリティ何てカタカナ言葉をお洒落に感じる程の切羽詰まったと同時に乗り越える生活力・行動力を体現しているこれを観ると現代日本が無くしたものが見えてきた現代は破壊の時代、気取った「お澄まし」では活きて行けない、これは日本人のこれからの姿かも知れないちょっと楽しげだが。

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なんてこった

4.0向かうところ敵無しの銭ゲババァ見参!!  大阪貧民街の簡易旅館を舞台にゼニと愛が飛び交う一周廻った道徳映画

2022年11月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

CSの時代劇専門チャンネルの"蔵出し名画座"放送にて鑑賞。
 元々は前年の芸術祭主催公演用に東宝芸術座に書き下ろされた戯曲で、延べ9か月間の異例のロングラン公演の大ヒットとなったことで本映画版が製作された、との経緯のようです。
 こうした往年の貧民街の物語となると"金は無いけど心は豊かだった"的な人情噺にもっていくのが定石と思ってしまいますが、本作の登場人物たちは主たるというかすべての行動原理がゼニ勘定であり、それを卑下するどころかむしろ誇って堂々と生きている姿が清々しいです。
 モラルも他人への情愛も他のすべてはゼニ勘定の先にあり、されど持たざる者から必要以上には取り立てず、逝んだ者からは後腐れなく頂戴する…狭い社会の中で持ちつ持たれつの循環型土着経済が確固として確立されています。
 ゆえになかなか這い出られないアリ地獄のようでありながら、果たしてそれは不幸せな生活なのか・・・ある種のユートピアの是非を問うた作品でもあるように思いました。
 冒頭からして、地域内での車同士の交通事故が発生するや周辺住民たちが俄かに色めき立ち、両車のドライバーを医者に連れて行った隙に車をみんなして素手や工具であっという間に解体して山分けしたスクラップを競りにかける、という破天荒な滑り出し。
 住民たちの貧しさゆえの突き抜けた逞しさ抜け目のなさを表象するとともに、壊れたものは頂戴するけれども他人様から直接奪ったりはしない、という線引きが共有されているモラルのローカルルール化も垣間見られて面白いところです。
 人生の紆余曲折を経て財産を失って此処へ流れ着いた者もいれば、生まれつきこの地域に住んでいる者もおり、他人からせしめることはあっても奪い取ることはしない、という自己完結した地域内経済を支える自然発生的な暗黙の取り決めを感じさせます。
 わかりやすい人情喜劇でなく、愚直に己の信念に真っ直ぐに生きる人々のふてぶてしさが却って利口にスマートに生きる普通の人々の滑稽さを暗に糾弾しているかのような洒落た構成がゆえに、当時としても評価されつつ長年愛されている由縁なのかも、と思った次第です。

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O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)

4.0戦後の釜ヶ崎

2022年11月14日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

釜ヶ崎でオープンスペースのホテル、というよりも旅籠みたいな宿舎を経営するがめつい奴が主人公(三益愛子)。
建っている土地は自分のもの、と言い張る姉妹(草笛光子、団令子)、親を見習った抜け目のない息子(高島忠夫)、拾われてきた女の子(中山千夏)、叔父だと言い張ってやって来た詐欺師(森繁久彌)など役者は揃っている。
戦争が終わってそんなに時間が経っていない頃なので、さもありなん。

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いやよセブン
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