劇場公開日 2007年11月3日

「天才児の自由奔放な戯れを描く大人のためのファンタジー」僕のピアノコンチェルト Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0天才児の自由奔放な戯れを描く大人のためのファンタジー

2020年4月22日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ドイツ語圏のスイスを舞台にした作品。大変ユニークな物語で、様々な話の展開を詰め込んだ多面的ストーリーに終始引き摺り廻されてしまった。

IQが計測不能の異常な天才児を主人公にした音楽映画と予想して観たら裏切られる。音楽映画のエッセンスは、高名な女性ピアニストのシークエンスと、ラストのシューマンのピアノコンチェルト演奏会場面だけで、途中アンドラーシュ・シフのゴールドベルク変奏曲のCDを聴いて感化されるところは深く描かれてはいない。ブルーノ・ガンツ演じる祖父と主人公の関係が中核の物語。このガンツの演技と存在感がこの映画を”まとも”にしている。前半は神童ゆえの凡人には理解しがたい苦悩を描き、後半は株で大儲けする企業サスペンスものと、私の常識の斜め上を行くぶっ飛び方が面白い。ベビーシッターの少女との淡い初恋も、12歳の身で高級レストランでプロポーズする大胆さが突出している。
サクセスストーリーのファンタジー。どんな天才も二十歳を過ぎれば注目されることがなくなり、世間の関心も薄らぐ。だから十代までのお話で、生き急ぐ悲哀をユーモアの遊びでどれだけ面白がれるか。深刻さは余り感じとることが出来なかった。

Gustav