劇場公開日 2021年11月5日

「不朽の名作」パリ、テキサス 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0不朽の名作

2023年9月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

何度観ても発見があります。
3度目なのですが、毎回感想が違います。
20年前に初めて観た時。
まるっきり理解できなかった。
映画の基礎知識と映画体験があまりに欠けていたのでしょうね。
2回目。3年前。
これは凄い切ないラブストーリーなのだ。
トラヴィス(ハリー・ディーン・スタントン)が思い詰めてる愛に
涙が止まらなかった。
究極の愛の物語。
そう思いました。
そして今回。
息子への愛と責任。
そう感じました。

ファースト・シーン。
広大な赤茶けた砂漠のような土地。
乾ききった男が水を求めている。
生き倒れた男。
一言も話さない。
記憶がないらしい。
一枚の紙切れの電話番号。
電話を受けた弟はロサンゼルスから駆けつける。
優しい弟。

徐々にその男・トラヴィスが家を捨てた理由が見えてくる。
彼には若い妻と生まれたての男の子がいた。
育児と男の束縛を嫌った妻・ジェーン(ナスターシャ・キンスキー)は、
トレーラーを燃やして出て行ってしまった。
それから男は可笑しくなった。
発見されるまでの4年間は、何をして生きてきたのか、
分からない。
弟のロサンゼルスの家に憩い、息子の7歳に成長したハンターと
どう向き合えば良いのかも分からない。
そして義妹のアンから、ジェーンがらの送金が月に一度
ヒューストンの銀行から振り込まれると聞かされる。
ハンター(ハンター・カーソン)を連れてピックアップトラックで
ヒューストンに向かう。
銀行の前で張り込む。
見つけたのはハンター。
赤い小型車を尾行する。
行き着いた場所はゲームセンターのような、バーのようなビルの
風俗店。
ジェーンが美しい。
トビッキリに美しい。
(ナスターシャ・キンスキーの美しさは、事件です)
カーテンで仕切られたブースに幾つもの小部屋がある。
女の個室のような部屋にはマジックミラーが付いている。
客からは女が見えるが女から客の姿は見えない。
客は受話器越しに女と話すのだ。

2回目に会ったとき。トラヴィスは長い話をする。
どうして、こうなってしまったのか。
男が女を愛しすぎて縛り付けてしまったから・・・。
息の詰まった女は息をするために、子供と3人の生活を壊した。
若く美しすぎる女。
トラヴィスには似合わない。

「息子(ハンター)に会いたくないか?」
「ダウンタウンのホテルにいる。1520号室だ」
ジェーンとハンターが抱き合うシーンは、なんとも言えない。
安堵、放浪の果ての帰航。

トラヴィスとジェーンとハンター。
このトライアングルは、上手くいかない。
けれどジェーンは母親ならちゃんと出来るはず。

心が壊れるほど、1人の美しい女性を
愛しすぎた男
身を滅ぼす愛
究極の愛の映画だった。

琥珀糖
2023年9月22日

琥珀糖さん、こちらの映画は素敵なロード・ムービーでした☆映画を製作した方も予想外のトラブルで脚本が変わったり
した背景を後に知りました。

美紅
活動写真愛好家さんのコメント
2023年9月19日

私、ヴェンダース監督大好きなんです。まだこの作品しかレビュー出来てませんが・・・今年公開の役所広司さん主演の新作も楽しみですよね

活動写真愛好家