劇場公開日 2024年3月22日

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「クリスマスの思い出」戦場のメリークリスマス フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

クリスマスの思い出

2021年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

捕虜と看守の複雑な関係の話

はずかしながら初めて見ました。
伝説的な映画だとは知りつつも旧日本軍映画って苦手なんですよね。
劇場でリバイバルとのことで負の歴史を直視したくない弱い心を奮い立たせて鑑賞

伝説になるのも納得の素晴らしい作品でした。

デビッド・ボウイ、トム・コンティ、坂本龍一、たけし、彼らの演技と大島監督のセンスが融合してこの映画を永遠に色あせない作品にしている。
セットも広大だし、捕虜セキストラ多さとガリガリ感、なんともリアルでしたね。

ふてぶてしくてハンサムで仲間に優しいセリアズ少佐、英国紳士たる堂々とした態度は観客までも魅了する。難しい役をボウイは見事に演じていた。かっこよかったです。
仲間を励まし、最後まで抵抗し、己自身の危険よりも仲間を救おうとした勇気。
こんなにも複雑な感情の入り混じった抱擁とキスを見たことが有るだろうか。
セリアズの表情がなんとも言えず胸に刺さる。

ヨノイも複雑でしたね、226事件に参加できず、同期の友と死ぬこともできず、同性に惹かれる自分が許せない。セリアズに一目ぼれして職権乱用、贔屓してるのに拒絶され、でも彼に何らかの対抗をしようとする姿、キスされて腰抜かす所は切なかった。
髪を切り一礼をして去っていく姿、なにかが吹っ切れたのか、いさぎよい姿でしたね。
坂本龍一のアイシャドウとメイクが艶っぽくて始めは違和感があったのだけれど、純粋さと邪さが宿ったいい目でいした。

目といえばハラですね、いやな看守長なのにどこか憎めない。
冒頭の部下の腹切りや囚人いびりは酷かったけれど、戦争という極限状態にあればだれもが正常ではいられなくなる、でも目だけは光り輝き澄み切っている。
ラストシーンのハラの目の輝き、純粋な笑顔はまさに日本人の笑顔なのではないだろうか。
北野武の無邪気な笑顔は世界中の観客の目に焼き付いた事だろう。

公開当時の世間の評価がどんなものであったのか知りたくなりました。
凄まじい映画だとは思うけれど、一般人にはなかなか受け入れられない内容な気がする。

なんにせよ今回のリマスター版を劇場で見れたことに感謝。

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劇中セリフより

「饅頭より花の方が美味いな」

どんな相手でも毅然とした態度で臨む事こそが強力な武器になる。
捕虜たがらと卑屈になる必要はないのだ。

フリント