スタンドアップ

劇場公開日:

解説

「モンスター」のオスカー女優シャーリーズ・セロン主演で、全米初のセクシャル・ハラスメント訴訟勝訴の実話を映画化。シングルマザーのジョージーは故郷に戻り炭鉱で働き始めるが、男性達の露骨な嫌がらせに直面する。監督は「クジラの島の少女」のニキ・カーロ。撮影は「マイケル・コリンズ」「プレッジ」のクリス・メンジス。脚本はリーリー・ソビエスキーとジョシュ・ハートネットの「愛ここにありて」のマイケル・サイツマン。

2005年製作/124分/アメリカ
原題または英題:North Country
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:2006年1月14日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第63回 ゴールデングローブ賞(2006年)

ノミネート

最優秀主演女優賞(ドラマ) シャーリーズ・セロン
最優秀助演女優賞 フランシス・マクドーマンド
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映画評論

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(C) 2005 Warner Bros. Entertainment Inc.

映画レビュー

4.0【””友”の為に立ち上がれ!”女性へのセクハラが蔓延する腐った鉄鋼会社に対し、決然と声を上げる女性の姿を描いた社会派ヒューマンストーリー。沁みるシーンが数々ある作品でもある。】

2024年11月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

知的

幸せ

■ジョージー(シャーリーズ・セロン)はDV夫と別れ、長男サミーと長女カレンを連れて、故郷ミネソタ州に戻り、父ハンク(リチャード・ジェンキンス)が働く、鉱山で働き始める。
 だが、そこには高校時代のボーイフレンド、ボビー・シャープ(ジェレミー・レナー)も居たが彼も含め、女性従業員達への酷いセクシャルハラスメントが蔓延する男社会であった。
 女性従業員たちは、更なる嫌がらせを恐れ、必死に耐えていたが、ジョージーは度重なるセクハラに対し、ニューヨークから戻って来ていた元アイスホッケーの名選手だったビル・ホワイト(ウディ・ハレルソン)に頼み、セクシャルハラスメント訴訟を独りで起こす。

◆感想<Caution!内容に触れています。&非常に沁みたシーンを記します。>

・当初、父ハンクは娘ジョージーが、同じ職場で働くことに冷淡な態度を取る。それは、彼女の二人の子の父親が違うという”噂”が起因しているのかもしれない。
 だが、ジョージ―が鉄鋼会社の組合員の会合で、声明を読もうとしたときに男性組合員たちから、卑猥な言葉を浴びせられた時に、ハンクがジョージーを横に立たせ組合員たちを見ながら”情けない。君らの娘が同じことをされたら、どう思う!”と、怒りを堪え乍ら語る姿は沁みた。
 ハンクのその言葉に静まり返る会場・・。
 そして、ハンクをその行動に導いた妻エリスの置手紙。

■今作では、劇中1991年に起きたアニタ・ヒル事件(最高裁判事が、黒人女性へのセクシャルハラスメントを行ったとして、起こった一連の事件)がTVで流されている。
 そして、ジョージ―達女性従業員達が、男性従業員達から仕事中に様々なセクシャルハラスメントを受けるシーンが、裁判のシーンと並行して描かれる。
 そこでは、高校時代のボーイフレンド、ボビー・シャープが執拗にジョージーに嫌がらせをするシーンが描かれる。だが、彼の鬱屈した想いが何処から来ているかが、裁判シーンで明らかになるのもミソである。
 更に言うならば、男性従業員達が女性従業員達に嫌がらせをする理由の一因として、鉱山不況が背景にある事も、描かれている所も、この実話ベースの映画のリアリティを醸し出していると思うのである。

・圧倒的なのは、鉄鋼会社側幹部とビル・ホワイトを弁護士に建てたジャージーとの裁判シーンであろう。
 そこでは、ビル・ホワイトがジョージ―の息子サミーの実の父親である愚かしき元高校教師を証人として連れて来る。その事実に激昂するハンク。
 だが、ビル・ホワイトは更にボビー・シャープに対し、”その場にいただろう。そして、お前は逃げ出しただろう!”と激しく詰問し、ボビーは弱弱しくその事実を認めるのである。
 更には、ジョージ―を昔から知るALCに罹患しているグローリー(フランシス・マクドーマンド)とカイル(ショーン・ビーン)夫妻の姿が、沁みるのである。カイルは母を嫌悪するサミーの気持ちを察し、理解者となる姿と、何といっても身体の自由が利かなくなったグローリーが車椅子で裁判所に来て、目で女性達に真実を訴える事を促すシーンである。

<そして、裁判所ではジョージ―の訴えを認める女性達が、次々に椅子から立ち上がる姿。そして男性従業員達も、次々に立ち上がって行く姿が、心に沁みるのである。
 今作は、女性へのセクハラが蔓延する腐った鉄鋼会社に対し、決然と声を上げる女性の姿を描いた実話ベースの社会派ヒューマンストーリーである。
 和解した息子サミーに対し、階段に座って語りかけるジョージ―を演じたシャーリーズ・セロンの姿も、素晴らしき作品でもある。>

■それにしても、フランシス・マクドーマンド出演映画の殆どが逸品であるのは驚異的である。彼女の秀でた映画出演選択眼の賜物であろう。

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NOBU

4.0職業人としての女性のたたかい

2022年12月25日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2011/5/7 08:33
評価: 80点

確かに、男性中心の荒っぽい職場では、女性が労働者として進出することに歓迎しない空気があるかもしれませんね。
角界でも、女性を土俵に上がらせないという仕来りがあり、賜杯の授与のために大阪府の太田知事(当時)が土俵に上がることに異を唱えた相撲協会の対応の是非が問題となりました。
また、トンネル工事の現場などでも、長らく女性が立ち入ることは禁忌とされてきたと思います。

それは、別に女性を忌み嫌うということではなくて。
男性には「すけべ心」がありますからね。多かれ少なかれ。
紅一点で、男性労働者が中心の職場の中に女性労働者がいれば…。
職場の緊張が弛緩してしまうというのは、ある意味で真実だろうと思います。
ちょっとおどけて女性労働者の関心を惹こうとする男性労働者が必ず現れて。
土俵の上にしろ、トンネルの工事現場にしろ、そして、この作品の舞台となる鉱山労働の現場でも…「怪我がつきもの」の危険な職場ですからね。
その職場の緊張が弛緩することは、労働安全上、少なからぬ問題があったのでしょう。
科学的な根拠のない、古い因習だけが理由というわけではなかったと思います。

もっとも、この作品の場合には、あまり「正当化」もできませんけど。
不況で仕事が減っていることの「はけぐち」を、男たちは彼女たちに押し付けていたような気配もありますから。
そういう意味では、他のレビュアーさまが適切に指摘をしているとおり、かえって男性労働者連中の「弱さ」が、その横暴な態度から、透けて見えているのかもしれません。

それだけに。
高給に引かれて、そういう職場に入ろうとした以上、さぞかし大きかったことでしょう。
ジョージーに対する職場の拒否反応というものは。
会社は、性別による差別を禁止する連邦最高裁の判例の手前、彼女たちの入社を拒むことができなかったのでしょうけれど。

そんな中で、苦労をしながら、女性労働者としての立場を確立してきたジョージーたちの苦労と努力には、敬服すべきものがあります。
ひとりの人間、ひとりの労働者、否、一人の女性としての存在を懸けて。

それがある故に、ジョージーに賛同して原告団に加わるべく、傍聴席から起立する仲間が次々と現れるシーンは、胸に痛いものがあります。

観終わって、気持ちの晴れる、素晴らしい作品だったと思います。

なお、蛇足を加えれば。
苦渋の決断でジョージーの弁護を引き受けたビル(ウディ・ハレルソン)の役柄は素敵でしたね。
法律的な知識には必ずしも明るくないジョージーのために、堂々と法廷での論陣を張る。
在野の法曹として、そんな仕事をすることができれば。
その意味で、彼の役どころも、強く印象に残りました。

自身が法律屋である評論子は、その印象を大切にしたいと思った作品でもありました。

(追記)
実話に基づく作品ということで。
原題は「north country」となっています。
「(小さな)北の町から」といったところでしょうか。
あるいは邦題よりも原題のほうがよかったか。
「小さな北の町から起きた、大きな女性の社会進出のうねり」という意味では。

しかし、最後の法廷の場面だけでなく、差別に負けないで立ち上がったジョージーなど、いろいろな意味で「スタンドアップ」というのは、むしろ、この作品にはフィットしているのかもしれません。

(追々記)
「女性が職業をもつこと」、「女性の社会進出」ということでは、たまたま、2本の作品を続けて観ることになりました。本作品と『隠された日記 母たち、娘たち』が、それです。
どちらも感慨深い作品であったことは、映画ファンとして、しあわせだったと思います。

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talkie

3.5セロンさんはすごい

2022年10月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

彼女はどんな役でもこなせるすごい女優さんですね。
脇を固める方々も有名どころばかりで
良い作品だと思います。
実話ベースなんですね。
当時の女性は大変だったんですね。

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けはえ

4.0先陣を切る難しさ

2021年8月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

アメリカで初めてセクハラ裁判に勝利した主人公を描く物語。

すこし「エリン・ブロコビッチ」に似ている映画ですね。
シングルマザーの彼女達。厳しい境遇にめげず、そのバイタリティで逞しく生きていきます。

法廷闘争がメインだった「エリン~」と比較して、本作は「人間ドラマ」がメインの印象。
凄まじい鉱山でのハラスメント描写。それに打ちひしがれる主人公。プライド高き鉱山労働者の父親との確執。母親への中傷で傷つく息子とのすれ違い。
そして同じ被害者でもある女性達から得られない共感。
四面楚歌のような主人公の状況が、重く圧し掛かります。
それだけに、裁判からクライマックスへの展開はカタルシスを感じるものでした。

ただ、法廷劇としては、やや弱さを感じます。
説明が端折られていいたり、大袈裟過ぎたり・・・少し勿体なく感じ、評価をやや下げました。

新しい権利を獲得することの難しさ、古い固定観念を覆ることの難しさを感じさせる良い映画だったと思います。

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よし