■ジョージー(シャーリーズ・セロン)はDV夫と別れ、長男サミーと長女カレンを連れて、故郷ミネソタ州に戻り、父ハンク(リチャード・ジェンキンス)が働く、鉱山で働き始める。
だが、そこには高校時代のボーイフレンド、ボビー・シャープ(ジェレミー・レナー)も居たが彼も含め、女性従業員達への酷いセクシャルハラスメントが蔓延する男社会であった。
女性従業員たちは、更なる嫌がらせを恐れ、必死に耐えていたが、ジョージーは度重なるセクハラに対し、ニューヨークから戻って来ていた元アイスホッケーの名選手だったビル・ホワイト(ウディ・ハレルソン)に頼み、セクシャルハラスメント訴訟を独りで起こす。
◆感想<Caution!内容に触れています。&非常に沁みたシーンを記します。>
・当初、父ハンクは娘ジョージーが、同じ職場で働くことに冷淡な態度を取る。それは、彼女の二人の子の父親が違うという”噂”が起因しているのかもしれない。
だが、ジョージ―が鉄鋼会社の組合員の会合で、声明を読もうとしたときに男性組合員たちから、卑猥な言葉を浴びせられた時に、ハンクがジョージーを横に立たせ組合員たちを見ながら”情けない。君らの娘が同じことをされたら、どう思う!”と、怒りを堪え乍ら語る姿は沁みた。
ハンクのその言葉に静まり返る会場・・。
そして、ハンクをその行動に導いた妻エリスの置手紙。
■今作では、劇中1991年に起きたアニタ・ヒル事件(最高裁判事が、黒人女性へのセクシャルハラスメントを行ったとして、起こった一連の事件)がTVで流されている。
そして、ジョージ―達女性従業員達が、男性従業員達から仕事中に様々なセクシャルハラスメントを受けるシーンが、裁判のシーンと並行して描かれる。
そこでは、高校時代のボーイフレンド、ボビー・シャープが執拗にジョージーに嫌がらせをするシーンが描かれる。だが、彼の鬱屈した想いが何処から来ているかが、裁判シーンで明らかになるのもミソである。
更に言うならば、男性従業員達が女性従業員達に嫌がらせをする理由の一因として、鉱山不況が背景にある事も、描かれている所も、この実話ベースの映画のリアリティを醸し出していると思うのである。
・圧倒的なのは、鉄鋼会社側幹部とビル・ホワイトを弁護士に建てたジャージーとの裁判シーンであろう。
そこでは、ビル・ホワイトがジョージ―の息子サミーの実の父親である愚かしき元高校教師を証人として連れて来る。その事実に激昂するハンク。
だが、ビル・ホワイトは更にボビー・シャープに対し、”その場にいただろう。そして、お前は逃げ出しただろう!”と激しく詰問し、ボビーは弱弱しくその事実を認めるのである。
更には、ジョージ―を昔から知るALCに罹患しているグローリー(フランシス・マクドーマンド)とカイル(ショーン・ビーン)夫妻の姿が、沁みるのである。カイルは母を嫌悪するサミーの気持ちを察し、理解者となる姿と、何といっても身体の自由が利かなくなったグローリーが車椅子で裁判所に来て、目で女性達に真実を訴える事を促すシーンである。
<そして、裁判所ではジョージ―の訴えを認める女性達が、次々に椅子から立ち上がる姿。そして男性従業員達も、次々に立ち上がって行く姿が、心に沁みるのである。
今作は、女性へのセクハラが蔓延する腐った鉄鋼会社に対し、決然と声を上げる女性の姿を描いた実話ベースの社会派ヒューマンストーリーである。
和解した息子サミーに対し、階段に座って語りかけるジョージ―を演じたシャーリーズ・セロンの姿も、素晴らしき作品でもある。>
■それにしても、フランシス・マクドーマンド出演映画の殆どが逸品であるのは驚異的である。彼女の秀でた映画出演選択眼の賜物であろう。