スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする : 新作映画評論

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映画

スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする

劇場公開日 2003年3月29日
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スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする 3月29日よりニュー東宝シネマほか全国東宝洋画系にてロードショー

今回もきっちりクローネンバーグの世界

きみの見ている世界とぼくの見ている世界は違う。デビッド・クローネンバーグの映画を一言で説明するとすればこうなる。主観的世界と客観的現実の衝突をテーマに映画を撮りつづけて30年。クローネンバーグも同じ作業に没頭する職人よろしくいつの間にか枯淡の域に達しつつある。頭も爆発せず、腹にバギナもできない最近のクローネンバーグ映画を地味だと感じる向きもあるだろうが、そこは心のゆとりで名人の筆先──ミランダ・リチャードソンの微妙な演技とかタイトル・バックの壁紙の美しさとか──を楽しんでいきたいものである。

今回新たな現実を見いだすのはシャツの重ね着がキュートな中年男スパイダーである。スパイダーは一冊のメモ帳を持ち、そこに自分が少年時代に目撃したことを書きつけていく。だが記憶は決まったものではない。記憶は暗示や錯誤からたやすく捏造されてしまう。人間は悪魔主義者に幼児虐待されたことも、UFOにアブダクトされたこともたやすく思い出してしまうのである。記憶は過去を作る。現在=現実はその過去の上にのっかっている。自分の過去が信じられなくなったら、何が信じられるというのか? そのときスパイダーが味わう現実崩壊は、これまであまたのクローネンバーグ映画の主人公を襲ったのと同じものなのだ。

柳下毅一郎

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ABOUT THE MOVIE

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  • スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする
  • 20数年に渡り精神病院に入院していた男が退院、少年時代を過ごした町に帰郷する。その日から、彼の脳裏に少年時代の記憶が少しずつ甦ってくる。「そうだ、僕の愛する母は、父とその愛人に殺されたのだ……」。 「グロテスク」などで知られる英国のカルト作家パトリック・マグラアの同名小説(ハヤカワepi文庫)を、「裸のランチ」「クラッシュ」とカルト小説の映画化に挑戦してきたクローネンバーグ監督が映画化。
  • 原題:
    Spider
    監督・製作:
    デビッド・クローネンバーグ
    脚本・原作:
    パトリック・マグラア
    出演:
    レイフ・ファインズミランダ・リチャードソンガブリエル・バーン
    製作国:
    2002年フランス映画
    上映時間:
    1時間38分
    配給:
    ブエナビスタ
  • 3月29日よりニュー東宝シネマほか全国東宝洋画系にてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C)2002 Spider Productions Limited/Spider Film Limited All rights reserved

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