博士の愛した数式 : 新作映画評論

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映画

博士の愛した数式

劇場公開日 2006年1月21日
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博士の愛した数式 1月21日より渋谷東急ほか全国松竹・東急系にてロードショー

「晴明」という価値観に明確な輪郭を与える美しい映画

画像(C)「博士の愛した数式」製作委員会

とかく映画の中の数学者は、奇行ばかりが強調されがちだ。数式に対峙して内向する姿を表現する困難からくる、苦し紛れの演出でもあるのだろう。ここに描かれる数学者(寺尾聰)は、事故で記憶を80分しか保持できない。静かな格闘は行き詰る前にリセットされ、絶妙な設定と寺尾の枯れたキャラから際立つのは、数学の美しさに取り憑かれた純化した魂である。

その魂に魅せられたシングルマザーの家政婦(深津絵里)と10歳の子供。自然界の法則を数式で表わす真理への心酔という絆で結ばれた、友情よりも、擬似家族よりも強固な関係性。原作を改変し、この子が成長した姿である数学教師(吉岡秀隆)が、生徒たちに向かって素晴らしき人物の逸話を話して聞かせる構成が活きている。吉岡の誠実な個性を形成した、括弧に括られた過去。それは「潔さ」や「清明」といった言葉に象徴される、こんな時代に忘却された価値観を尊重する心に明確な輪郭を与える。

読む者に居住まいを正させるような原作者・小川洋子の凛とした文章は、小泉堯史の風格と品性を伴う演出によって見事に映像に転換された。泣ける映画や愛の物語などと呼ばないでほしい。これは、ただただ純粋に美しい映画である。

清水節

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ABOUT THE MOVIE

  • 博士の愛した数式 画像1
  • 博士の愛した数式
  • 「阿弥陀堂だより」「雨あがる」の小泉堯史監督、寺尾聰主演で小川洋子の同名小説を映画化。家政婦として働くシングル・マザーの杏子が、今度お世話をすることになったのは、ケンブリッジ大学で数学を学んでいたが、交通事故の後遺症で記憶が80分しかもたなくなってしまった老博士。杏子とその息子は博士の人柄と、彼の語る数式の美しさに魅了され、3人は次第にうち解けていくが、やがて博士の痛ましい過去が明らかになっていく。
  • 監督・脚本:
    小泉堯史
    原作:
    小川洋子
    撮影:
    上田正治、北澤弘之
    音楽:
    加古隆
    出演:
    寺尾聰深津絵里齋藤隆成吉岡秀隆浅丘ルリ子
    製作国:
    2005年日本映画
    上映時間:
    1時間57分
    配給:
    アスミック・エース
  • 1月21日より渋谷東急ほか全国松竹・東急系にてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C)「博士の愛した数式」製作委員会

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