劇場公開日 2024年5月10日

「こんな恐怖ちょっとない程」胸騒ぎ クニオさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5こんな恐怖ちょっとない程

2024年5月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

興奮

 まあ、怖い! 本当に恐い、ラストに至っては観た事を後悔しかねない程の衝撃に言葉もない。

 デンマークとオランダなんて、貧困政治の日本と違って北欧の先進国。国ごとに言語は異なるかも知れませんが、地理的に近く民族も入り乱れ、習慣も似かより、数か国語を操って普通かしらんと思ってました。よくある米国と英国のカルチャーショックなんて映画にもありますよね、同じ言語でもこの有様ですから両国の相違は私達の思う以上なのでしょう。まずは、その辺りに驚きました。とは言え、車で行けられるのですね、フェリーに乗って。言葉もフツーに母国語の他に英語が喋られるのが当然で、だから成り立つお話でもある。

 基本はごくフツーの人々なのに何か変? その積み重ねで違和感が増大した時には時すでに遅し。古くは「ローズマリーの赤ちゃん」1968年、「ゲット・アウト」2017年、「ミッドサマー」2019年、など結構あるけれど、後味の悪さで行ったら、際立ちますね本作は。

 イタリア敢行旅行中に知り合ったデンマークの一家とオランダの一家、是非ウチに遊びにいらっしゃいよ、で映画が始まる。こちらは女の子を連れて、先方には男の子がいる、けれど男の子は「生まれつき舌が無いから喋られない」なんて奇妙な説明が入る。これがラストのおぞましさに繋がるとは露知らず。

 ところ変われば習慣も異なる、を言い訳に些細な食い違いも飲み込んで、飲み込んで。しかし次々と疑念が重なり不審に変わる。一旦は無断で帰国しかけたにも関わらず、女の子のぬいぐるみの置忘れで戻る羽目に。熱心かつ執拗な説得に屈し、もう一晩が最悪の事態に繋がってしまう。

 結果的にこの悪魔の夫婦の目的も、どうして捕まらないのかも含め、一切の説明もない。そもそもこんなに手間暇かけて悪事を繰り返すメリットは何? こいつらの収入源は何? ラスト近くの別棟には多数のトランクが並び、びっしりと幾多の家族の写真が並ぶ、すべて幼い子供のいる家族ばかりが。運河のオランダであり、山が一切なく、ひたすら平原のような光景で、こんな悪魔の住みつく場所があるのかしらとも思う。

 しかし、ラストに向かっての多数の「ひっかかり」の積み重ねが映画としては良く出来ているのも確かなのです。その辺りを邦題「胸騒ぎ」で表現したのでしょう、原題は「Speak No Evil」なんですね、こっちの方がなんとなくラストを暗示してますよね。

クニオ