罪と悪のレビュー・感想・評価
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謎めく川と時を超えた運命に抗えない人々
この「罪と悪」が長編監督デビュー作となる齊藤勇起は、長年著名監督らのもとで助監督としてキャリアを積み、本作の主要キャストを含む多数の俳優らとも信頼関係を築いてきたという。自身のオリジナル脚本でのデビューにこだわったとのことだが、米作家デニス・ルヘイン(「ゴーン・ベイビー・ゴーン」「シャッター・アイランド」の原作でも知られる)の小説をクリント・イーストウッド監督が映画化した傑作「ミスティック・リバー」(2004)に着想を得たのではと考える人も多いだろう。遊び友達の少年3人は“性暴力に関連する事件”ののち疎遠になるが、その数十年後に起きた殺人事件を契機に再会。3人のうち1人は刑事になっていて、地元で商売をしている別の1人は不良連中を束ねる新興勢力のリーダーでもある。そして、複数の死と密接な関わりがあり、抗えない運命を象徴するかのような“川”の存在。このように物語の大枠と主要人物の配置には類似点が多く、もちろん舞台を日本の地方都市に置き換えてのひねりが加わっているものの、独創性の点でやや物足りないし、謎解きの要素も本家に比べてすっきりしない。
名だたる実力派キャストらの演技は見応え十分な一方、比較的若手の俳優たち、たとえば高良健吾が演じる春が面倒をみている若者たちの会話場面などでは棒読みに感じられるやり取りもあって、没入感が損なわれる気がした。
ロケは齊藤監督の出身地・福井県で行われ、印象的な川は南越前町今庄にある鹿蒜(かひる)川だろうか。「ミスティック・リバー」を観た衝撃がモチベーションになり、出身地を舞台にした映画でデビューすることになったのだとしたら、齊藤監督もまた“川がもたらす運命”に身をゆだねた一人かもしれない。監督の日本的なリアリティーを生む演出は好みなので、次は相性の良い脚本家と組んだ映画をぜひ観てみたい。
色々詰め込み過ぎて最後は駆け足。
罪は自分が罪と思わない限り罪じゃない、ってこの胸くそ悪い台詞が一番の核になっている。受け入れるのか。逃げるのか。誰かのせいにするのか。この重要な言葉をあえてモブに言わせたところは上手いと思った。
中学生の時に犯した重罪の呪縛に苦しみながら大人になった3人。再び起こるある少年の死をきっかけに20年の時が動き出す。現在と過去を行き来しながら途中までは面白かったけど、終盤がとっ散らかってしまった。結局そんな終わり方なん?それでいいの?ってかなんでその発想に辿り着いたん?遺品ひとつで?
春が絡む裏社会のエピソードがメインになってて、枝分かれの話がいっぱいある。でも、そこじゃないんよ。もっと立場の違う2人が事件の背景に迫っていく感じが見たかったのに。一番見たかったところがすっ飛ばされた気がしてモヤモヤしてしまった。
どいつもこいつも悪いやつばかり
13歳の正樹が誰かに殺され、遺体が川で発見された。正樹の同級生である春、晃、双子の朔と直哉は、正樹が度々家に遊びに行っていたおんさんが犯人に違いないと考え、家に行きおんさんを殺してしまった。そして、春がおんさんの家に火を放ち、2人を逃して1人で罪を負った。それから22年後、刑事になった晃が町に帰ってきた。久々に会った朔は引きこもりになった直哉の面倒をみながら実家の農業を継いでいた。そんな時、かつての正樹の事件と同じように、川で少年の遺体が発見された。捜査資料を見た晃は、所持品が22年前の正樹の物だと言い、2つの事件に関連性が有ると推理した。さてどうなる、という話。
なかなか面白かった。
しかし、どいつもこいつも悪い奴らばっかりだなぁ、と観てた。
大人も子供をレイプしたりDVしたりでろくなやつが居ない。
1人で罪を負った春がカッコいいな、と思った。
ノアールだけじゃないてんこ盛りを
タイトルからもポスターからもノアールだと思って観に行った。見始めると,どこにでもいるような少年たちが出てきて、友情あり、貧困問題ありのてんこ盛りな展開。
彼らは、1人は亡くなり,3人は大きな罪を背負ってしまう。その子供たちが大人になった姿が,なるほどなという納得感だった。変に成長物語ではなく,閉じ込めた記憶がそれぞれにどう影響したのかを想像させられるのだ。
主人公の彼は貧困の中で虐待されて育ち,でも仲間思いの優しさと強さを持っていた。大人になって半グレながらも若者を守りリーダーシップを発揮しつつ、冷徹さも見せる。でも根底には仲間のために罪を被っても恩も売らずに優しさがあると思う。その点で,最後の終わり方はちょっと残念な気がした。
脇を固めるベテラン陣がさすがです。初監督作品にこれだけの顔が揃うのはすごいと思った。村上淳が好きなのでラッキーだった。
高良健吾渾身の作品だと
2024年3作目は高良健吾主演の「罪と悪」。
幼なじみの少年達が犯した殺人事件と、22年後に新たに起きた殺人事件で過去の殺人事件の真相が明らかになると言うミステリーです。
なお、幸いなことに本作は齊藤勇起監督のオリジナル脚本作品だそうです。ご安心!
ネタバレになるのでこれ以上は書きませんが、最後の最後に「罪と悪」の意味が分かります。
高良健吾は好きな俳優さんですが、この作品でもこれまでにない渋い演技をしていました。
佐藤浩市と椎名桔平の悪者が似合い過ぎ(笑)
立派過ぎる題名
映画『罪と悪』題名に映画の内容が負けているな、人間の原罪にでも迫るのかなんて期待したのですが、出てくるのは悪ぶっても善人ばかり。ラストの処理もいただけない。限られた時間と予算の中で、とりあえず作品にしてみました的なもどかしさしか残らない。
みんな善人に見えるんですが。
そう、根本的にみんな善人なんですよね。
なんで、こんないかめつい題名になるのか。
子供のころの仲良し仲間とふとした間違いから犯した殺人、それを精算せぬまま大人になった主人公。
やがて大人になり、それぞれの生き方を。
だけど過去の過ちを精算しようと。
そこから、いろんな風景が見えてくる。
そんな流れでしょうか。
題材としては面白いし、興味も湧く。
ただ、映画の出来となると。
消化不良でしょうね。
なんか、ラストもよくわからないし。
なぞなぞで終わってしまうような部分とか。
決められた制作費、決められた時間
この枠内で作られた作品だなと。
そこそこの俳優陣がでて入るんですが。
皆さん忙しいのでしょうね。
納得ゆくまでの映像、演出を追求したのかなと。
今の、日本映画の悲しさが詰まってます。
本物思考というか、こだわりというか、どこに行ったのでしょうか。
反社の人が着てる服が、中国大手通販sheinの服で、私も持ってるなんて服が、ちらほら。
ラストの人のマドラスチェックの半袖は、ユニクロですよね。
私も持ってます。
反社の人たちって、高い服きますよね。
Tシャツ一枚1万円とか。
田舎の反社だから、安物でもいいのかな。
なんて、思ってしまいます。
些細なところでも、こだわりが欲しかった。
罪の源流となった事件もありきたり。
主人公の少年達が、小児性愛者にレイプされたことが始まり。
これも、今どきのはやりなんじゃないですか。
一昔前までは、まさかなんて言っていたのに。
今じゃテレビのワイドショーでも取り上げる、はやりの話題。
そんなこと言ったら失礼でしょうか。
小児性愛者の存在自体が、まるで悪のような描き方。
ほんの百数十年前までは、少年愛なんて当たり前だったのに。
戦前までは、その名残もあったはず。
このあたりに、事件のきっかけを持ってくるあたりも安直。
『罪と悪』なんて、人間の存在自体を問われるような題名をつけたんだから。
もっと、深くこだわった作品を作ってください。
そう思ったのは、私だけでしょうか。
殺人の連鎖
役に恵まれないで有名な大俳優こと高良健吾の主演最新作。今回こそ役どころは完璧にハマっていて、良さ大爆発ではあったんだけど、ありがちなプロットにも関わらず滅茶苦茶な展開で、作品自体の面白さはまるで無し。既視感しかない上にワクワクしないって...一体どうなってるんだ。せっかくの高良健吾の好演が台無しです。
大東俊介、村上淳、勝矢、更には佐藤浩市や椎名桔平まで。ここに石橋蓮司や加瀬亮なんかが加わったら、令和のアウトレイジが作れるレベル。こんなに豪華なキャスティングしといて、これか〜とガッカリ。適材適所じゃないというか、とりあえずノワール映画の重鎮出しとけば物になるでしょって考えが見え見えで、どうも上手いこと使えていなかった。佐藤浩市の写し方とかあからさま。もっと雰囲気大事にしましょうよ。
最近タケシ映画にハマっているというのもあって、どうも粗く見えてしまった。2時間ずっとスッキリしない。ごちゃごちゃ喋りすぎて、何が言いたいのかさっぱり。おかげで緊張感なんてあったもんじゃないです。なんかこう、ズバッと決めてくれないんだよね。生ぬる〜く進んでいくから、サスペンス的な見どころは皆無。こういう映画はハラハラドキドキを求めちゃうから、ダラダラとした展開の本作はどうも好きになれなかった。
ラストもまぁ酷い。何も変わっちゃいねぇじゃねぇか。結局どうなったの?が多すぎて、要素を詰めるだけ詰めた映画になってしまっている。監督としての色を出すために、ありがちなストーリーに色々と盛り込んだんだろうけど、それが全部仇となっている。系列店のボス、ヤクザの会長、相談持ちかけてくる半グレなんかが、もっと上手くまとまっていたらな。面白い映画ってのは、人物描写が秀逸な作品を言うんでしょうね。
椎名桔平演じる刑事なんてもうたまらなく好きだったから、新人刑事とのバチバチな関係をメインに描いて欲しかったな。高良健吾が主人公みたいな立ち回りをしていないのに違和感を感じる作品でした。
隠れた超お薦め映画です
,ミステリー映画の良さは点が最後に線に綺麗に結びつく物語が秀逸。この映画は観終わった後も綺麗には結びつかなくてもやもや感を誰かと推理を語り合いたくなる秀作。高良健吾さん、大東駿介さん、石田卓也さんの高い演技力が伝える幼き頃の悲劇に引き裂かれる友情に涙する。隠れた超お薦め映画です。
久々の
貸切でした、まぁ来週には終わるしね。どこかで聞いたようなストーリーでしたが、仲々ダイナミックで良かったんじゃ? ラストこれで? 感でしたが、交通整理バイトの様子を見て察するべきなんでしょう。
高良健吾カッコいいなー大東くん体大丈夫か? 驚く程イイ顔になったな、石田卓也くん。そういや奥さん以外女っ気無かった。
懐かしき故郷の風景
本日までの上映に滑り込んで観てきました。我が故郷福井県が舞台になっているという事で観ようと思っていた作品でした。福井市の繁華街片町の夜や遠くの山々の風景など観入ってしまいました。
少年時代の事件が消化できずに大人になった3〜4人がケジメをつけるために集まったところが決着でしたが後味の良くない結末。でも事が事だけに仕方なくも感じました。ヤクザと擬きのせめぎ合いに警察幹部が介入して落し所を探るといった感じでストーリーはやや新鮮味に欠けていたかもしれません。
子役の皆さんはちょくちょく見かけるメンバーだったので違った役柄でちょっと面白く感じました。
17
途中から迷走気味・・高良/大東は素晴らしい
・ほぼほぼ「ミスティック・リバー」のリメイク。ラストは違うが、3人の幼馴染、子ども時代の悲惨な出来事、その秘密➡大人になってからの再会とその出来事の解明というメインストーリーも、悲惨な出来事の中身も、3人のキャラクター設定も、ほぼ同じ。
・大人になってからのパートでサイドストーリーにやたらと時間を費やし、何を描きたい映画なのかよく分からなくなっている。2つ目の殺人の意味はほとんど理解できなかった。
ヤクザとの抗争部分は長すぎ多すぎ(グロいシーンとか全く不要だと思う)、警察の捜査とそこに出てくる椎名桔平の闇は非常に中途半端。晃の決意表明があっただけ。
サイドストーリーよりも、3人の、あの過去を抱えて生きてきたこれまでの人生をもっと掘り下げてほしかった。
・中学生時代の4人、特に春役の子がとても良かった。中学時代のパートは非常に良かった。警察パートも良かった。椎名桔平はむろん間違いない。つまり前半はとても良かったということ。
佐藤浩市の登場は、とってつけた感あり(こんな大物に出て貰う以上は、長いシーンにしなくちゃ、みたいな。)
・高良健吾、大東駿介ダブル主演に近い(どういう場合に「ダブル主演」と言うのか知りませんが)。高良健吾はこの役には少し線が細い気もした(あの中学時代の春役の子が大人になると、もう少し、見た目からして強そうになると思う)が、春が、自分の育った家庭とは違う家庭をつくること、それを守ることに命をかけている、という人間なのは良く分かった。大東駿介は真面目な若手刑事という感じがよく出ていた。勝矢とのバディ、長い追走シーン、良かった。
皆、悪人。
アウトレイジではないのだが。春は罪を被ったが、結局子分使って朔を轢いてるし、晃はまんまと上司の隠蔽体質に目を瞑ったまま刑事を続けているし。朔はいつ小林に財布を持たせたん?殺したときに忍ばせたのか?
こういう映画、どっかで見たなぁ~アメリカ辺りで。パンフ読んであーっ!「ミスティックリバー」だ!パンフよどうもありがとう。「ミスティックリバー」あらすじほとんど覚えてないけどな。少年春くんはソリが入ってなかったな。その後ソリが入ったんかな。思春期に少年から大人に変わるようでずるずる引きずってぐるぐる回っているような壊れかけのRADIOならぬ蓄音機みたいな作品だったな。スッキリせずにモヤモヤさせるのがテーマなんだろな。
いいか、罪っていうのは自分が悪いと思ってなかったら罪じゃないから。
罪から逃げた人間がずっと罪悪感を負って生きてきた話。そして無二の友人の20数年後の再会アは、警察と半グレ。この映画はなによりも、高良健吾への信頼感で成り立ってる。たとえ半グレのリーダーという社会的にはグレーな立場であっても、彼が演じるとそれなりの説得力がある。正義漢にさえ見える。彼の存在が、ヤクザの世界に堕ちそうな若者のセイフティネットとしての、ある意味社会貢献として機能していた。役者もいいし、テンポもいいし、展開も飽きさせないし、いいとこでいい役者使ってメリハリあるし。と、思ってたら二人目の殺人あたりから細部が雑に感じてきて、ラストシーンへの流れが随分と無理くりな着地だった。
20年前からの蝋燭
罪と悪
ずっと全てを崩したかった。炎に照らされ、自分自身と友人への別離を告げる。
そのままで残るのは、春が嫌悪してきた町を牛耳ってきた男と、その息子だ(そして彼自身は、この町が好きだと言う)
お前たちが生きていてくれれば良いという言葉は嘘じゃない。しかし真実は残酷で、寄る辺は失われる。
家族を持っても、組織を率いても、どこか遠くで生きているかのようだった。
考えさせられる映画
すばらしいとしか言いようがない。
福井を舞台にしたミステリー。俳優陣が豪華すぎる。高良がとりあえずかっこいい。
一番びっくりしたのが監督が新人だったということ。
新人監督とは思えないほど完成度が高い。
とっても考えさせられる映画だった。
想像より面白かった。
(地元の人が期待する)福井アピールの映画ではありませんので。
普段、このような怖い題名の映画は観に行かないのですが、撮影した舞台が福井県で、監督も福井出身で、これは新幹線も来るし、満を持しての福井アピールの映画かと思って観に行きました。
しかし、あの独特な福井弁は出てきません。自然が多い景色はきれいでしたが、引きで撮影しているわけではないので場所を特定できず、夜の8号線もきれいに撮れており、実際とは違ったおしゃれな都会の街並みで、福井らしさを前面に出した映画ではありませんでした。観光客誘致のための映画ではないと、実際見て、ようやくさとりました。(確かに地元でもそのような宣伝もされていなかったのですが、勝手に期待していました。)
映画としては、一人一人の人物のキャラクターがしっかり描かれており、重みのある映画で、個人的には高評価です。
お話は最後まで分かりやすい繋がりがあって、飽きずに見れた。個人的に...
お話は最後まで分かりやすい繋がりがあって、飽きずに見れた。個人的には音楽の入れ方が好きだった。ただ、ちょっとわかりずらい部分が多くて、もう少しそこら辺がクリアであったら、なおさら良かった。。
新人監督でこの完成度は驚き
本作の監督を務めた齋藤勇起は、本作が初監督とのことだが、そうとは思えないほど密度が濃く、完成度も高い作品だった。
脚本で褒めたいのは、誰がいい、悪いといったように単純な勧善懲悪モノにしなかったことだ。人によって正義が変わってくるように、なにが“悪”でなにが“罪”なのかも変わってくる。もっと言えば、年齢によって立場は変わってくるわけで、同じ人間でも“悪”や“罪”の基準は常に変わっていくだろう。正解のない難しい問いにいきなり挑んだ齋藤監督の意気込みは大したもんだと思う。
本作は主人公たちが子供時代に犯した“殺人”という重い罪が、20年以上の時を経て再び再燃する仕組みになっているが、どれだけ時が経過しても犯した罪は消えないという製作陣からのメッセージのように感じた。主人公たちが過去の罪で今さら捕まることはないだろうが、罪悪感は一生消えないし、もしかしたら逮捕されたほうが罪を償えた気になって楽かもしれない。そういった意味ではかなりビターな内容だったのではないだろうか。
俳優陣の演技も本当に素晴らしかった。高良健吾、大東駿介、石田卓也らメイン3人の演技は全員良かった。それぞれ立場は違うが、今を必死に生きている様子を3人の俳優がそれぞれ違う角度で表現しており、とても見応えがあった。
そして子役たちの演技も忘れてはいけない。とてつもなく難しい役柄だったはずだが、リアルというものすら超越した演技で、“田舎の普通の高校生”が“人を殺した犯罪者”に移り変わっていく様子を繊細な演技で魅せていて素晴らしかった。
最後それぞれのキャラクターがどうなったかは詳しく描かれない。ただ、それはそれで鑑賞した人の想像に任せればいいのかもしれない。齋藤監督の次回作が今から楽しみだ。
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