ルポ作家・石井光太氏、映画「遺体」で「温かさを伝えたかった」
2013年1月22日 12:30
[映画.com ニュース] 東日本大震災直後の遺体安置所での出来事を描いた映画「遺体 明日への十日間」の公開を記念し1月21日、原作の石井光太氏と君塚良一監督が都内でトークイベントを行った。
原作は、震災で甚大な被害を受けた岩手県釜石市の遺体安置所を取材した、石井氏のルポタージュ「遺体 震災と津波の果てに」(新潮社刊)。震災直後、釜石市民の医師や歯科医たちが犠牲者を一刻も早く家族と再会できるよう遺体の搬送や検視、身元確認などのつらい作業にあたる姿を描く。主演は西田敏行、共演に緒形直人、勝地涼、國村隼、佐藤浩市、柳葉敏郎ら豪華俳優陣が出演する。
石井氏は、「震災の報道というと義援金などの話ばかりだった。遺体安置所で働く人々の思いや、遺体捜索の現場を描かなければ震災を描いたことにならないと思っていた」と執筆の動機を明かす。主人公のモデルとなった「老人と初めて会った時、雪のなか4~5時間待って5分だけ話を聞くことができた。彼の洋服のポケットというポケットはヘドロの手ぬぐいや防腐剤でパンパンにふくれあがっていて、僕の方は見ずに涙をボロボロ流していた。遺体の尊厳だけは守らなければいけないと。彼が遺体に声をかけている時に、その声が暗い遺体安置所の中で温かく響いていた。その温かさを人に伝えたかった」と語った。
震災直後、君塚監督は「何もできない自分に後ろめたさを感じていた。そんな時に石井さんのルポルタージュに出合い、感銘と衝撃を受け、たくさんの人に伝えたいと思った。震災を風化させたくない、記録として映画に残したいという気持ちが原動力だった」と述懐した。
映画化にあたり、石井氏は君塚監督に「現場に行ってもらいたいとだけお願いした。彼らに実際に会うということは重みを背負うことであり、見たことがないと色々と劇化してしまい、想像に委ねてしまう部分があると思う。本当に思いを背負った時、作り手というのはそういうことができなくなってしまうもの。それが本来、ドキュメンタリーやノンフィクションといわれるもの」と持論を展開。これに賛同した君塚氏も現地を訪ね、「取材はしなかった。ただ関係者の皆さんに『原作を映像化をすることをどう思うか』を聞いた。1人にでもやめてくれと言われたら、そこでやめようと思っていた。だけど、『この町であったことを日本中の人に伝えてほしい』と言っていただき、責任を取らなければという覚悟をもって撮った」という。そして、「遺体安置所となった体育館に行った時、これはもう今までやってきた技術や方法論が全く通用しないと思った。ありのまま俳優に演じてもらい、ドキュメンタリーのように撮っていくしかないと思った」と決心を語った。
本作を観賞した石井氏は、「本当にありがたいという気持ちだけ。僕は人の言葉の温かみ、善意、真摯(しんし)な気持ちを描いたつもり。それをそのまま形にしていただいた」と仕上がりに満足。そして、「僕にできることは文章で書いて人に伝えることだと思った。これだけ人が死んだんですよということでなく、そこで働いている方がどれだけ尊いものなのかを伝えたかった。目の前で繰り広げられていたことを活字にして、読者に感じてもらいたかった」と語りかけた。
「遺体 明日への十日間」は2月23日より公開。本作の収益は全額、被災地に寄付される。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
コンコルディア Concordia
【衝撃のAIサスペンス】優秀な若者が殺された…そこは“20年間、犯罪が起きていない町”だった。
提供:hulu
映画料金が500円になる“裏ワザ”
【知らないと損】「映画は富裕層の娯楽」と思う、あなただけに教えます…期間限定の最強キャンペーン中!
提供:KDDI
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
【最速レビュー】絶対に配信開始を待ってはならない映画。間違っても倍速で観てはいけない。
提供:東和ピクチャーズ
クリスマス中止のお知らせ
【「ホーム・アローン」級クリスマス映画の“新傑作”】おもしろ要素全部のせ、まさかの涙も…
提供:ワーナー・ブラザース映画
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
死刑囚の告発をもとに、雑誌ジャーナリストが未解決の殺人事件を暴いていく過程をつづったベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」(新潮45編集部編)を映画化。取材のため東京拘置所でヤクザの死刑囚・須藤と面会した雑誌ジャーナリストの藤井は、須藤が死刑判決を受けた事件のほかに、3つの殺人に関与しており、そのすべてに「先生」と呼ばれる首謀者がいるという告白を受ける。須藤は「先生」がのうのうと生きていることが許せず、藤井に「先生」の存在を記事にして世に暴くよう依頼。藤井が調査を進めると、やがて恐るべき凶悪事件の真相が明らかになっていく。ジャーナリストとしての使命感と狂気の間で揺れ動く藤井役を山田孝之、死刑囚・須藤をピエール瀧が演じ、「先生」役でリリー・フランキーが初の悪役に挑む。故・若松孝二監督に師事した白石和彌がメガホンをとった。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。