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小栗康平監督がフィルムに焼き付けた、藤田嗣治への愛情

2015年10月29日 04:00

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小栗康平監督
小栗康平監督

[映画.com ニュース] パリに愛された日本人画家、藤田嗣治が生きた、ふたつの文化ふたつの時代を、「泥の河」「死の棘」「眠る男」などで知られる小栗康平監督が静ひつな映像美で描き出した「FOUJITA」。監督にとって10年ぶりの新作は日仏の共同製作。藤田の生きた時代のパリ、戦中の日本をみごとに再現してみせる。藤田役のオダギリジョーをはじめ、中谷美紀など出演者の演技をみすえた小栗監督の演出、画面と向き合うことを求める映像感性が光る。

まず、東京国際映画祭に出品される心境からお聞かせください。

小栗康平監督(以下、小栗):私がデビューしたのが1980年で、まだ国内に国際映画祭というものがありませんでした。海外の映画祭に出ていくしかなかったので、東京国際映画祭は縁遠いまま来てしまったという印象があります。今回、70歳近くになって初めての参加で縁があってよかったと思います。

本作が10年ぶりの作品ということになりますが、期間を置いて「FOUJITA」を撮った思いというのはどこにありますか。

小栗:「FOUJITA」の企画がスタートしたのは3年ちょっと前です。動き始めてからは真っ直ぐ来ましたが、その前につまずいたり、成立しないことがいくつもありました。いつも企画が通ると次がないという思いで撮っています。作品が終わるたびに年数が空くので、熟成というか、少ないチャンスのなかで悔いを残したくない思いが先に立ちます。だから、とことん納得がいくまで待つし、考える。敗れたらそれまでという戦いだと思います。

FOUJITA」は持ち込まれた企画と聞きました。

小栗:藤田嗣治(以下、藤田)は著作権の管理にとても難しい人でした。藤田自身のエピソードはいっぱいあるから、日本のプロダクションやプロデューサーは映画にするべく、未亡人の君代さんのところにうかがっていたようです。後から聞いた話なのですが、それでたまたまある方が君代さんの存命中に許諾の権利を取って、それが私のところに来たわけです。藤田のことをそんなには知りませんでした。君代さんが亡くなっていましたので、まず聞いたのは戦争画が使えるかどうかということでした。大丈夫だという回答をもらったところから始まりました。1920年代の裸婦と戦争画の大きな落差に心が動いてパリに行きました。それからは本当に真っ直ぐでしたね。

当初はフランスとの共同製作ではなかったということでしょうか?

小栗:君代さんと交わした契約書に、フランスとの共同製作であることという一文は入っていました。僕のところに来る前につぶれた企画ですが、君代さんが存命中でしたので、藝大出のおっちょこちょいがフランスに行って成功して帰ってくるというつまらない話でした。20年代のパリと戦時下の日本、明らかな文化の衝突を描こうと僕は腹を決めました。

当初からパリ編と戦中編のふたつを分けて描こうと考えていましたか。

小栗:20年代の裸婦と戦争画に定めて、ふたつに割ろうと考えていました。伝記にはしないということも決めました。映画という特別な時間、空間のなかで藤田をどう見るかということだけですから。エピソードは関係ないと私は思っているのです。

藤田に対して人間的なシンパシーを感じたことはありましたか。

小栗:映画が終わる時には本当に可愛い存在になっていました。彼は戦争中に日本に帰ってきて、あのような絵を描いて、戦後、日本には戻らずに向こうで亡くなりました。藤田が本当に深く日本の文化と出会ったのだろうかという問いが私のなかにありました。日本が持っていた共同性の良さ、自然観、風土というものに、藤田を包みたいという思いが強かったんです。四季の移り変わりや、命の捉え方とかですね。「もののあはれ」という言い方にするなら、藤田の人生にも「もののあはれ」はあると思えるようになりました。それが私にとって藤田への愛情ですね。撮影を重ねるにつれ、藤田に対する思いも深くなりました。

オダギリさんをはじめ、出演者のキャスティングはいかがでしたか。

小栗:うまくいったと思います。オダギリくんは極めて良かったと思うけれど。

FOUJITA」は画面を凝視することの大切さを教えてもらえる作品ですね。

小栗:絵を見て対峙しないで、どういう絵の見方ができるのですか。映画についても基本は同じだと思います。画像と向き合うということです。トーキーになって言葉が意味を持ってくるようになったので、画と向き合う力が極端に弱くなってきたと思います。今回はデジタルで撮影しました。デジタルだからできる表現領域はものすごく広がりました。もちろん、私もフィルムに愛着はありますがどちらにしても道具ですからね。

(取材/構成 稲田隆起 日本映画ペンクラブ)

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