君が生きた証 : 特集
編集部も“男泣き”した、映画ファンこそ見るべき“父と息子の珠玉のドラマ”
果たして辛口評論家たちは、この良作に“いくら支払う”のか?
「ファーゴ」「マグノリア」の名優ウィリアム・H・メイシーが、64歳にして初メガホンをとった「君が生きた証」(2月21日公開)は、音楽と父子の思いが染み渡る至高のヒューマン・ストーリーだった。映画.comも泣いた本作の価値をストレートにユーザーに伝えるべく、今回は評論家・ライター陣による“鑑賞料金の自己申告”を実施した!
■「もし、大切な人が突然亡くなったら、あなたなら“何を生きる糧”にする?」
配給会社も劇場もほれ込んだ感涙のドラマに、映画.comも男泣き!
命を落とした息子が作った音楽を通じて、彼が何を考えて生きていたのかに父親が向き合っていく。心に響くロック・ミュージックに彩られた、魂の再生を描くヒューマン・ドラマが誕生した。初監督作として、この珠玉のドラマを撮り上げたのは、「ファーゴ」や「マグノリア」ほか数々の傑作で強い印象を残す名バイプレーヤー、ウィリアム・H・メイシー。緊張感とユーモアをたたえた存在感を誇る、メイシーの持ち味そのままに紡がれていく物語に、我々もまた涙を流してしまったのだ。
やり手の広告マンとして順風満帆だったサム(ビリー・クラダップ)は、大学で起こった銃乱射事件で、大学生の息子ジョシュを突然亡くしてしまう。それから2年後、失意のどん底に落ち、荒んだボート暮らしを送るサムは、離婚して再出発を果たそうとする妻(フェシリティ・ハフマン)から、生前にジョシュが書きとめていた自作曲の歌詞とデモCDが詰まった箱を受け取る。息子の楽曲を聞き、ジョシュが何を思いながら生きていたのかを全く分かっていなかったと自覚したサムは、息子に近づきたい、彼のことをもっと知りたいという思いから、遺品のギターをつま弾きだす。
そんなサムの演奏と歌唱は、孤独なロック青年クエンティン(アントン・イェルチン)を刺激し、彼の説得によってバンド・スタイルとなり、街の注目を集める存在となっていく。「自分が作った曲ではない」と言い出せないまま、音楽を奏でる純粋な喜びに包まれていくサムだったが、そこには衝撃的な“秘密”が隠されていた。サム、そしてクエンティンの魂の旅路は、果たして、どこにたどり着くのか。
「映画ファンにどうしても本作を見てもらいたい」という、配給会社ファントム・フィルムと劇場を運営する東京テアトルの強い思いを受けた映画.com。「その自信通りの作品なのだろうか?」と、試写室に足を運んでみると……彼らと同じ思いを実感する結果となった。息子が残した楽曲を歌い継ぐことを通して、父が息子を真の意味で理解し、それが人生を失ったひとりの男の再生にもつながっていく。終盤に待つ映画的な驚きと心躍らせられる演奏シーンの素晴らしさともあわせて、涙を流さずにはいられなかったのだ。
本作が行う「観客に入場料金を決めてもらう」スタイルの先行レイト上映も、こうした実状があっての流れ。作品のクオリティに絶大な信頼を寄せるファントム・フィルムと東京テアトルが協議し、いわゆる“投げ銭”形式での上映を実施することになったという(上映の詳しい情報はオフィシャルサイト を参照)。
見れば誰もが納得する良作であっても、劇場で見られないまま、人知れず埋もれてしまうことが多い小規模公開作の現状。この状況を打破し、1人でも多くの映画ファンに良作を届けたいという願いから生まれたチャレンジに、我々が期待を込めてしまうのも当然だ。
■見れば、何か語らずにはいられない“この良作”──
実際に鑑賞した辛口評論家たちは、“いくらの価値”を付けたのか!?
「見た人が鑑賞料金を決める」。この先行上映のシステムに刺激を受けた我々は、映画評論家、ライター陣にレビューを依頼する際に、「あなたなら、いくらの鑑賞料金を支払うのか?」という金額設定もあわせてお願いすることにした。果たして「君の生きた証」はどれほどの価値があるのか。そして、映画の目利きたちに、本作はどのように映ったのか?