「鋼の錬金術師」曽利文彦監督が説く、オール日本人キャストの必然性
2017年10月31日 13:30
荒川弘氏の人気漫画を、「Hey! Say! JUMP」の山田涼介主演で映画化。物質を変化させる“錬金術”が中心の世界を舞台に、失った母を生き返らせるため人体錬成の禁忌を犯したエド(山田)&アル兄弟が、絶大な力を秘めた賢者の石を求め旅する姿を描く。既に世界190カ国以上での公開が決定している。
「ピンポン」で知られる曽利監督は、本作をオール日本人キャストで実写映画化した理由について「原作のハートの部分は完全に日本人ですし、エドとアルの兄弟関係も日本人(ならでは)。たとえハリウッドのビッグバジェットでやってルックを合わせても、ハートの部分がずれてしまう。どちらをそろえていくかは究極の選択だと思いますが、ソウルの部分を重視して、日本人がやらないと難しいという結論に至った」と明かす。「本作ではイタリアロケを行いましたが、イタリア人にもものすごくファンが多い。彼らも日本人でやることを望んでいました。“日本のコンテンツだからね”と言ってくれましたし。日本で作れば原作者の先生方と密に話すこともできるし、原作を大切にしたものに仕上がるのは間違いない」とメイドインジャパンの利点を挙げた。
「実写にしかできない部分を掘り下げました。人間のドラマなので、人が演じられないわけがない。空想の世界であっても生身の人間がやる意味ってすごく大きいと思う」と持論を語った曽利監督は、アニメ版では釘宮理恵が演じたアル役に水石亜飛夢を抜てきするなど、キャスティングにもこだわりを見せる。「元々アル役にはある有名な方の名前が挙がっていたんですが、モーションキャプチャ用の演技をしていた水石亜飛夢くんのけんかのシーンでの演技がすごくて、山田涼介くんとの掛け合いがあまりにもエドとアルでこれは変えられないなと。“大人の事情”をことごとく説得し、頭を下げて水石くんを起用させていただきました」と明かし、「アニメも原作がベースですし、本作はアニメの実写化ではない。新たなイメージを作り上げていかなければならないんです。新しい提案をしていって、そこに慣れていただいたらまた次につながるし、新たなハガレンが始まる。だから勇気をもってリニューアルして、新しいチームを組んでみました」と胸を張った。
原作の大ファンという映画評論家の前田有一氏も駆けつけ、「見る前は不安ばかりで、なぜ日本人なんだ?と思っていた。悔しいことに、最初のアクションシーンを見終わったくらいで慣れちゃって没頭してしまいまして。泣けるシーンもあり、よかったです」と絶賛。「漫画の映画化に求めているのは、縮小再生産になってほしくないということ。ハガレンの面白さを知らない人に知らしめてほしい。アメコミの映画化なんてまさにそうじゃないですか。バットマンを知らなくても“『ダークナイト』すごいぞ”となるし、映画にはそれをできるパワーがある」と熱を込めて語った。
本作ではアルをフルCGで生み出しているが、前田氏はCGキャラクターについて「『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』が最高峰にあるんじゃないかと思う。でも見ていたら、CGキャラクターが生身の人間と格闘したりハグをしたりするシーンがないんです。だけど、ハガレンには全部ある」と本作の強みを挙げる。
曽利監督も大きくうなずき「CGのキャラクターと人間が絡むのはハリウッドでもビビると思う。我々はチャレンジャーなので、向こうがやらないことをやっている。アルの存在が皆さんの中で実体化し始めれば、新しい扉が開けるし、この映画の中にはそういったわくわく感が詰まっていると思う」と手ごたえをにじませる。そして、CGキャラクターの生成に重要な要素であるライティング技術について「ライティング技術には到達点があって、例えばここの照明を全部再現できれば、その先はない。つまり、そこまで行っちゃえば、ハリウッドに追いついたことになる。面白い時代になると思うし、この映画がきっかけになったらうれしい」と力強く語った。
「鋼の錬金術師」は、12月1日から全国公開。
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