コラム:シネマ映画.comコラム - 第28回

2023年4月1日更新

シネマ映画.comコラム

「“シッチェス映画祭”ファンタスティック・セレクション」開催!

第28回は、4月1日から30日までシネマ映画.comでオンライン開催している「“シッチェス映画祭”ファンタスティック・セレクション」で配信の6作品をピックアップして紹介。映画.comの編集部&スタッフの今田カミーユ、岡田寛司、飛松優歩、蛯谷朋実、和田隆がそれぞれの視点から配信作品の見どころやポイントなどをあげましたので、ご鑑賞の参考にしてください。

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“シッチェス映画祭”は、世界最古で最大のファンタスティック映画の祭典。1968年に創設されたスペイン・バルセロナ近郊の海辺のリゾート地シッチェスで毎年10月に開催されています。国際映画製作者連盟(FIAPF)公認の国際映画祭であり、ファンタジー系作品(SF映画・ホラー映画・スリラー映画・サスペンス映画など)を中心に扱うスペシャライズド映画祭として、世界でも権威のある国際映画祭のひとつです。ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭、ポルト映画祭(ファンタスポルト)と並ぶ世界三大ファンタスティック映画祭の代表格であり、ホラーやファンタジージャンル映画の最先端作品を選定する特徴があります。

歴代の最優秀作品には「狼の血族」「ZOMBIO 死霊のしたたり」、日本映画の「リング」などがあり、最優秀賞受賞者もビンセント・プライスからデビッド・クローネンバーグ、審査員には「食人族」のルッジェロ・デオダートが名を連ねていたりと、本映画祭の歴史がホラー映画の歴史を表していると言っても過言ではありません。近年では中島哲也監督「渇き。」が最優秀男優賞、新海誠監督「君の名は。」がアニメーション部門で最優秀長編作品賞を受賞するなど、日本ともゆかりが深く注目が高まっています。

今回配信する作品は、「ヴィーガンズ・ハム」「パラミドロ」「呪われた息子の母 ローラ」「ゾンビ・サステナブル」「ビハインド・ザ・ドア 誘拐」「ぼくのデコ 23歳のヴァンパイア兄貴」。ハイテンションホラーからゾンビバイオレンスアクション、狂気のドラマ、ホラーコメディなど、バラエティに富んだファンタスティック作品がラインナップされています。

鑑賞料金は1本399円(税込)で作品ごとに鑑賞チケットの購入ができますが、6本まとめ買いがお得な特別セット割引(通常料金2394円が1800円に!)もご用意しております。

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「ヴィーガンズ・ハム」
「ヴィーガンズ・ハム」

■「ヴィーガンズ・ハム

2021年製作/87分/フランス
原題:Barbaque

【作品概要】
 肉屋の夫婦が繰り広げる人間狩りを描いたフランス発のブラックコメディ。コメディアン出身のファブリス・エブエが監督・主演を務め、「私は確信する」のマリナ・フォイスが共演。

▼見どころ 和田隆

フランス発のブラックな痛快肉食コメディということもあって、血しぶきが飛び散るホラーやスプラッター系が苦手な方でも楽しめる作品です。理由の一つは、人間狩り=殺人の動機が猟奇的ではなく、結婚生活と家業の経営危機が大きな要因になっているからでしょう。最初の殺害と死体の処理は偶然で、気弱な夫は連続殺害に躊躇するのですが、死体を処理加工し、イラン豚と偽ったハムが人気商品になったことから、妻は愛の再燃という体とともに夫に人間狩りを急き立てるのです。

選り好みする人間狩りはまるでコントのようでもあり、ビーガン(菜食主義者)活動家と肉屋の対決という構図に加え、差別や偏見という人種や宗教的な問題も内包。現代社会を皮肉りながら、生きるためには食べなければならないという人間の欲求についても考えさせられる、歪んだウィットに富んだ作品です。

>>【「ヴィーガンズ・ハム」を今すぐ見る!】


「パラミドロ」
「パラミドロ」

■「パラミドロ

2021年製作/90分/スペイン
原題:La pasajera

【作品概要】
 元闘牛士の中年男と女エイリアンの死闘を、ストレートなグロ描写に加えジェンダー問題を盛り込みながら描いたスパニッシュホラー。出演はドラマ「ロック・アップ スペイン 女子刑務所」のラミロ・ブラス、ドラマ「ハウス・オブ・フラワーズ」のセシリア・スアレス

▼見どころ 和田隆

ストレートなグロテスク描写とホラーならではの驚きの展開が堪能できます。主人公は元闘牛士で、女性蔑視的な発言を繰り返す中年男ブラスコ。対するは女エイリアンという説明不要な設定に気持ち悪さと恐怖への期待は高まります。闘牛士を引退後、ライドシェア(相乗り車)で日銭を稼ぐブラスコの車に訳ありな母娘とメキシコ人女性が乗ってくると、ブラスコの軽薄な態度に車内はいきなり険悪なムードに。目的地を目指して出発するや、闘争心を煽るようなスパニッシュな音楽が流れ、ロードムービー的な展開に少々肩透かしを食らいますが、それもつかの間、夜になるとムードは一変。霧が立ち込める山道でハイカーを轢いたことから、ドロドロの恐怖に巻き込まれていく展開は、ホラーの鉄板と言えます。道中助け合いながら心を通わせていく娘とブラスコは果たして生き残ることができるのか、その目で確かめてください。

>>【「パラミドロ」を今すぐ見る!】


「呪われた息子の母 ローラ」
「呪われた息子の母 ローラ」

■「呪われた息子の母 ローラ

2021年製作/98分/アイルランド・アメリカ・イギリス合作
原題:Son

【作品概要】
 「ハロウィン KILLS」のアンディ・マティチャックが主演を務め、カルト集団に追われる母子の恐怖を描いたスリラー。共演に「イントゥ・ザ・ワイルド」のエミール・ハーシュ。「ザ・カナル 悪魔の棲む場所」のアイバン・カバナーが監督・脚本を手がけた。

▼見どころ 蛯谷朋実

不穏な出産シーンから始まり、望まない子どもなのかと思いきや、8歳になったデイヴィッドを愛情たっぷり育てる母・ローラ。そんなデイヴィッドが謎の集団に取り囲まれてしまいますが、息子は脱がされていただけで特に何もなし。しかし、その直後から原因不明の病気で生死の境を彷徨ってしまいます。ローラはそれもすべて彼女が元いたカルト集団のせいだと主張しますが、果たしてそれは彼女の妄想なのか。そして何が”呪われた息子”なのか。息子の真実を目の当たりにした母がとった行動とは―。

はじめから漂う不穏な空気と、”何か”が確実に近づいてくる怖さは「ヘレディタリー 継承」を彷彿とさせます。そこに息子を守る母の強さ、一方で守り切れないのではという不安や自分の息子に恐怖の気持ちを抱きそうになる葛藤という要素が加わり、何とも言えない気持ちをもたらすラストまで98分あっというまでした。アリ・アスター監督作好きにも、押したい作品です。

>>【「呪われた息子の母 ローラ」を今すぐ見る!】


「ゾンビ・サステナブル」
「ゾンビ・サステナブル」

■「ゾンビ・サステナブル

2021年製作/90分/オーストラリア
原題:Wyrmwood: Apocalypse

【作品概要】
 「ゾンビマックス! 怒りのデス・ゾンビ」のキア・ローチ=ターナー監督が、同作と同じ世界観で描いたオーストラリア製アクションホラー。出演は「ゾンビマックス! 怒りのデス・ゾンビ」のルーク・マッケンジー、「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」のジェイク・ライアン

▼見どころ 岡田寛司

ゾンビって燃料になるんじゃね?――この突飛なアイディアが示されたのが「ゾンビマックス! 怒りのデス・ゾンビ」(2016年日本公開)。「マッドマックス 怒りのデス・ロード」に乗っかる気満々の邦題でしたが、この要素はかなり刺激的でした。

世界観を共有した本作では、ゾンビの有効活用がめちゃくちゃ進化を遂げています。もはや“生活の必需品”と言ってもよいレベル。QOL(生活の質)の向上にゾンビは必要不可欠――そんな感じの光景を冒頭からかましてくれますよ。

ストーリーは、コメディリリーフにもなり得る“マッドすぎるサイエンティスト”なんかも出ちゃいますが、これが結構シリアス。王道ゾンビ物語を描きつつ、そこにゾンビを操れる“ハイブリッド”という仕掛けをぶち込みながら、血みどろバトルを炸裂させていきます。

可能であれば「ゾンビマックス!」も鑑賞を。同作の主人公だった兄妹が再登場するから……実は、それだけが理由でないんです。なんと今回の主人公は「ゾンビマックス!」で悪役だった男の“双子の弟”(演じているのは、どちらもルーク・マッケンジー……つまり、ほぼ「ターミネーター2」的展開!)。2作鑑賞で面白さが倍増です!

>>【「ゾンビ・サステナブル」を今すぐ見る!】


「ビハインド・ザ・ドア 誘拐」
「ビハインド・ザ・ドア 誘拐」

■「ビハインド・ザ・ドア 誘拐

2020年製作/88分/アメリカ
原題:The Boy Behind the Door

【作品概要】
 何者かに拉致監禁された少年たちの運命を描いたホラー。ボビーを演じるのは、アカデミー短編実写映画賞を受賞した「SKIN」のロニー・チェイビス。本作が初長編となるデビッド・シャルボニエジャスティン・パウエルが監督・脚本を手がけた。

▼見どころ 今田カミーユ

これ、ホラー映画なの?と思ってしまうような、少年ふたりの爽やかな映像から一転、ボビーとケヴィンが恐怖のどん底に突き落とされます。小児性愛や虐待を目的とした人身売買犯に拉致監禁されてしまうのですが、閉じ込められたケヴィンを救うためのボビーの勇気ある行動から目が離せません。ボビー役で、アカデミー短編実写映画賞「SKIN」に出演したロニー・チェイビスの高い演技力は今後要チェックです。

そして、複数いる犯人のひとりが、一般的にイメージされるような人物ではないことも興味深く、恐ろしい。特別にグロテスクな描写はありませんが、子供が狙われ、ケガをしたり虐待を受けるシーンがあります。もちろんフィクションですが苦手な方はご注意を。

>>【「ビハインド・ザ・ドア 誘拐」を今すぐ見る!】


「ぼくのデコ 23歳のヴァンパイア兄貴」
「ぼくのデコ 23歳のヴァンパイア兄貴」

■「ぼくのデコ 23歳のヴァンパイア兄貴

2021年製作/96分/アイルランド
原題:Let the Wrong One In

【作品概要】
 「道化死てるぜ!」のコナー・マクマホンが監督・脚本を手がけ、兄がバンパイア化したことを知った青年の葛藤を描いたアイルランド発のホラーコメディ。原題「LET THE WRONG ONE IN」は、「ぼくのエリ 200歳の少女」の英語版タイトル「LET THE LIGHT ONE IN」をもじったもの。

▼見どころ 飛松優歩

テーマがヴァンパイアということで血は多めですが、ポップなストーリーゆえ、グロ表現が苦手な方も笑顔で楽しめる、安心安全のホラーコメディです。兄デコはもちろん、弟マットをはじめ周囲の人々もどこかズレていて、一大事が起こっているのに、終始対応はゆるめ。ヴァンパイアになりたての初期症状なのか、デコに大量の血を吐きかけられても、マットは「着替えがないのに」と顔をしかめたりしています。「10秒に1回は笑いをとらないと!」というルールでも課されているのか、誰かしら勝手に変なことをし始めるので、ツッコミが追いつきません。

そんなオフビートかつシュールな雰囲気に油断していると、最後はめちゃくちゃいい話(!?)でフィニッシュ。惜しくも命を落としてしまう人もいるけれど、ダメなところだらけでも愛さずにはいられないキャラクターたちの続編希望! また、突如誰かがヴァンパイアになった場合の対応マニュアルとしても見ておきたい、有用な1本です。

>>【「ぼくのデコ 23歳のヴァンパイア兄貴」を今すぐ見る!】


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ホラーやファンタジージャンル映画の最先端の作品をこの機会にご堪能ください。(※作品を視聴するには「シネマ映画.com」の会員登録が必要です)
 なお、ホラー映画専門の動画配信サービス「オソレゾーン」とも連動していますので、そちらもチェックしてみてください。(編集 和田隆

>>【「“シッチェス映画祭”ファンタスティック・セレクション」はこちら!】

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