川島文夫 : ウィキペディア(Wikipedia)
川島 文夫(かわしま ふみお、1948年11月3日 - )は、日本の美容師、美容教育者。 美容室『PEEK-A-BOO』の創設者および代表。東京都出身。高山美容専門学校卒業後に渡英し、『ヴィダル・サスーン』ロンドン本店にてトップスタイリストおよびアーティスティック・ディレクターとして活動した。その後1977年、東京・表参道にてPEEK-A-BOOを創業。以降、美容技術、教育、経営の分野において先駆的な役割を果たし、「生涯美容師」を掲げながら、現在も現役で活動を続けている。
経歴
生い立ちと渡航(-1970年)
1948年11月3日、東京都に生まれる。高校在学中に海外への関心を持つようになり、自主退学後に高山美容専門学校に進学した。卒業後は在日米軍施設「グラントハイツ」内の美容室「PX」に勤務し、アメリカ式接客文化に触れた。この頃、独学で英語を学び、海外での技術研修を目指すようになった。
1968年、19歳でカナダ・トロントに渡航。現地の個人経営サロンでの勤務を経て、百貨店内のサロン『グレンビー』にスタイリストとして採用された。同店では固定客を持たずに入客できる体制で、川島文夫は歩合制での勤務のもと、シャンプーから仕上げまで一貫して担当していた。
その後、さらなる技術習得を志し、1970年にイギリス・ロンドンへ渡航した。
ヴィダル・サスーン時代(1970年 - 1975年)
1970年、川島文夫はロンドンのヴィダル・サスーンのスクールに入学した。スクールでは入社選考に向けた実技訓練が行われており、川島は約3か月間、1日2名のモデルカットを繰り返して技術を磨いた。規定の5人のモデルを使ったカット試験に合格し、スタイリストとしてボンドストリート店に配属された。その後、約2年でトップスタイリストに昇格し、1973年にはアーティスティック・ディレクターに任命された。なお、マンチェスター店でも勤務していたとされている。
1975年、当時26歳の川島はロンドンにて、自身が考案したカットスタイル「BOX BOB(ボックスボブ)」を発表した。このスタイルは英紙『サンデー・タイムズ』のファッションページに掲載され、それを見たクリストファー・ブルッカーの注目を受け、サスーンの新作コレクションに採用された。このスタイルは後年もサスーンカットの代表的な例の一つとして言及されている。
帰国とPEEK-A-BOO創設(1975年 - 1990年)
1975年末、日本へ帰国。全国でカット講義を展開し、圧倒的な支持を得る。1977年11月3日、東京・表参道に「川島文夫美容室(1号店)」を開業。ロゴデザインはグラフィックデザイナーの長友啓典が手がけた。80年代以降、都内各地に店舗展開を進める。講義活動・技術教育と並行してサロン経営を拡大する。
教育活動と技術革新(1990年以降)
1990年代、写真集や教育書籍、技術ビデオなどを発表。1990年には写真集『HOMME 1990' at LONDON』をロンドンにて制作。1993年・1994年にはロサンゼルスで『PEEK-A-BOO』シリーズを連続刊行。1995年にはテキスト写真集『FUMIOKAWASHIMA The Text 1×3 』、1996年には『川島文夫カット大全集』(全5巻)をリリースするなど、次世代に向けた教育的コンテンツを数多く発信した。
1997年以降は、原宿店・Olympia店などの新店舗を展開。1998年にはニューヨークで写真集『PEEK-A-BOO」を制作し、2000年にはリオデジャネイロにて『PEEK-A-BOO BRAZIL - YEAR 2000』をRio De Janeiroで制作し発表するなど、海外での創作活動も本格化した。2001年には技術書『THE PROFESSIONAL STANDARD CUT PEEK-A-BOO』を刊行。2002年には『THE PAINT-BOX』を発表し、同年ロンドンの『オルタナティブヘアショー』にゲスト参加するなど、国際的な教育活動にも注力した。
2000年代より、アジアの主要都市を中心に技術講習活動を展開。定期的にカット講習会を実施し、現地における技術の普及と育成に努めている。2003年には『第4回 アジアビューティエキスポ』、2004年には『REVLON PROFESSIONAL SHOW』に出演するなど、アジアでの活動も拡大した。2014年には美容師育成を目的とした『PEEK-A-BOO ACADEMY』を開校。2022年にはオンライン教育プラットフォーム「PEEK-A-BOO WEB ACADEMY」をリリースし、教育事業のさらなる拡充を図る。また、関西美容専門学校の特別顧問を務めており、同校主催の『川島文夫杯」カットコンテストを監修するなど、美容師の育成にも注力している。
店舗展開も継続的に進め、2006年には銀座への初出店となる『GINZA PEEK-A-BOO』をオープン。2012年に池袋、2016年には新宿・恵比寿に出店するなど、首都圏を中心にネットワークを広げている。
2022年、Bunkamura主催の『マリー・クワント展』との公式コラボレーションを実施https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_maryquant/topics/peek-a-boo.html。60年代ファッションをオマージュしたスタイル提案やキャンペーンを展開し、美容業界外からも注目を集めた。同年、最新公式技術書『THE BEGINNING』を刊行。
2024年には韓国にて『PEEK-A-BOO ACADEMY Korea』を開校。2027年の創立50周年に向け、技術・教育・国際展開のさらなる強化を見据えた活動を進めている。
略歴
- 1948年11月3日 - 東京都に生まれる。
- 1970年 - ロンドンのヴィダル・サスーンに入社。
- 1975年 - 日本へ帰国。全国各地でデモンストレーションやライブショーを開催し、サスーンカットの技術と理念を紹介。
- 1977年 - 表参道に「PEEK-A-BOO 川島文夫美容室(1号店)」を開店。第1回PEEK-A-BOO LIVE SHOW を開催(以後毎年開催)。
- 1981年 - 表参道に「PEEK-A-BOO ANNEX(2号店)」オープン。
- 1983年 - 竹下通りエリアに「PEEK-A-BOO EXTENSION(3号店)」オープン。
- 1986年 - 「PEEK-A-BOO 原宿」オープン。技術書「WISH YOU WERE HERE」を出版。ビデオ「Summing up Last 10 years」を制作。
- 1987年 - 日本青年館劇場にて10周年・出版記念ヘアショーを開催。
- 1988年 - 写真集「YOUR'S SINCERELY」を制作。
- 1990年 - 写真集「HOMME 1990’ at LONDON」を出版。
- 1992年 - 新社屋竣工に伴い原宿本店をリニューアルオープン。
- 1993年 - 写真集「PEEK-A-BOO Tokyo, Japan 1993」をロサンゼルスにて制作。
- 1994年 - 写真集「PEEK-A-BOO TOKYO JAPAN 1995」をロサンゼルスにて制作。
- 1995年 - 教育書「FUMIO KAWASHIMA THE TEXT 1×3」を出版。
- 1996年 - 技術ビデオ「川島文夫カット大全集」(全5巻)を発売。
- 1997年 - 「PEEK-A-BOO OLYMPIA」オープン。
- 1998年 - 写真集「a Day in New York」を制作。
- 1999年 - 技術書「MODERN CONTEMPORARY TECHNIQUE」を出版。「PEEK-A-BOO LIVE 1999」ミレニアムイベントを開催。
- 2000年 - 写真集「PEEK-A-BOO BRAZIL - YEAR 2000」をリオデジャネイロにて制作。
- 2001年 - 写真集「2001 PEEK-A-BOO」、技術書「THE PROFESSIONAL STANDARD CUT PEEK-A-BOO」を出版。「m2 PEEK-A-BOO」オープン。
- 2002年 - 原宿店をリニューアルオープン。教則本「THE PAINT-BOX」を出版。ロンドンの「オルタナティブヘアショー」にゲスト出演。
- 2003年 - 第4回アジアビューティエキスポに出演。
- 2004年 - 「REVLON PROFESSIONAL SHOW」in Spainに出演。
- 2006年 - 「GINZA PEEK-A-BOO」オープン(銀座初進出)。
- 2008年 - 「川島文夫のクリエイション」を出版。
- 2009年 - PEEK-A-BOO 青山を東京・青山に開店、同日、PEEK-A-BOO 表参道をリニューアルオープン。
- 2010年 - 「プロフェッショナルの極意」を出版。上海・ソウル・香港にての講習会を開催(以後毎年実施)。
- 2012年 - 「PEEK-A-BOO AVEDA 池袋東武店」オープン。
- 2014年 - 美容師教育機関「PEEK-A-BOO ACADEMY」開校。渋谷ヒカリエに於いて単独ヘアショー PEEK-A-BOO Live「GREAT DESIGNERS Premium super Live」を開催。技術書「PEEK-A-BOO ACADEMY CLASSIC & BASIC」を制作・発売。
- 2015年 - GINZA PEEK-A-BOO 中央通りを東京・銀座にオープン。GINZA PEEK-A-BOO 並木通りをリニューアルオープン。
- 2016年 - PEEK-A-BOO NEWoMan 新宿を東京・新宿にオープン。PEEK-A-BOO AVEDA アトレ恵比寿を東京・恵比寿にオープン。
- 2017年 - GINZA PEEK-A-BOO AVEDA GINZA SIXを東京・銀座にオープン。
- 2018年 - PEEK-A-BOO 表参道をリニューアルオープン。
- 2022年 - オンライン教育サービス「PEEK-A-BOO WEB ACADEMY」リリース。Bunkamura主催「マリー・クワント展」との公式コラボレーションを実施。
- 2023年 - 公式技術書「THE BEGINNING」を刊行。PEEK-A-BOO Head Office 移転。
- 2024年 - 「PEEK-A-BOO ACADEMY Korea」開校。
受賞歴
- 1995年:WORLD MASTER OF THE CRAFT at N.Y.
- 2020–2025年:KAMI CHARISMA AWARD カット部門 三つ星(2020年〜2025年)(6年連続)
- 2024年:第10回プラチナエイジ ビューティ部門受賞
主なヘアショー出演(一部)
- PEEK-A-BOO Live 1999(1999年)
- Alternative Hair Show|オルタネイティブ ヘアショー London(2002年、2008年)
- ASIA BEAUTY EXPO|アジアビューティーエキスポ(2003年〜)
- Revlon Professional Show in Spain(2004年、2008年)
- WELLA TREND VISION SUPER LIVE 2010(2010年)
- COLOMER STYLE MASTERS ヘアショー in AMSTERDAM(2011年)
- TWBC|タカラ ワールド ビジネス コングレス(2022年)
- PEEK-A-BOO -GREAT DESIGNERS Premium Super Live-(2015〜2023年、東京/ソウル/上海/成都/北京)
- DREAM PLUS CONTEST 2024(2024年)
コンテスト関連
審査員
- 川島文夫杯 KANBIカットコンテスト 審査員
- PEEK-A-BOO ウィッグデザインコンテスト(第1回〜第19回)審査員
- GAMO北海道主催「川島文夫杯」技術コンテスト監修
- WELLA TRENDVISON Award
- Generation Next / ジェネレーション ネクスト
- 関西美容専門学校『第75回芸術祭 Beauty Festival 1st』
実行委員
- 表参道コレクション ヘア・トレンド 2024-2025 実行副委員長(2024年)
メディア掲載
雑誌(一部)
- GENERATION(ジェネレーション)
- an・an
- クリネタ
- IZANAGI(イザナギ)
- CATs ビューティビジネスニュース
- Snip Style(スニップスタイル)
- PREPPY(プレッピー)
- Men's PREPPY(メンズプレッピー)
- Discover Japan(ディスカバージャパン)
- TOKYO FASHION EDGE(東京ファッションエッジ)
- リクエストQJ(Request QJ)
- HAIR MODE(ヘアモード)
- 致知(ちち)
- 美髪メニュー攻略本
- 月刊『美容界』
- 月刊『美容の経営プラン』
- 月刊『HAIRMODE』
出演
- BSフジ:髪カリスマたち~日本が誇る美容師のワザ~
- TOKIO インカラミ CM 2019
著書・映像作品
カット技術書
- 「WISH YOU WERE HERE」(1986年)
- 「FUMIO KAWASHIMA The Text 1×3」(1995年)
- 「MODERN CONTEMPORARY TECHNIQUE」(1999年)
- 「川島文夫のクリエイション」(2008年)
- 「プロフェッショナルの極意」(2010年)
写真集
- 「YOUR'S SINCERELY」(1988年)
- 「HOMME 1990' at LONDON」(1990年)
- 「PEEK-A-BOO Tokyo, Japan 1993」(1993年)
- 「PEEK-A-BOO TOKYO JAPAN 1995」(1995年)
- 「A Day in New York PEEK-A-BOO」(1998年)
- 「PEEK-A-BOO Rio」(2000年)
- 「PEEK-A-BOO L.A. Red Book」(2001年)
ビデオ
- 「Summing up Last 10 years」ビデオ制作(1986年)
- 「川島文夫カット大全集」Video全5巻(1996年)
関連項目
- ヴィダル・サスーン
- PEEK-A-BOO
外部リンク
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2025/07/13 06:37 UTC (変更履歴)
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