古舘寛治 : ウィキペディア(Wikipedia)
古舘 寛治(ふるたち かんじ、1968年〈昭和43年〉3月23日 - )は、日本の俳優。主な出演作に、テレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』『コタキ兄弟と四苦八苦』や映画『淵に立つ』『宮本から君へ』 『罪の声』などがある。大阪府立泉北高等学校卒業。空(くう)所属。
略歴
大阪府岸和田市の団地育ちで、小学4年生の時、堺市の泉北ニュータウンに建てた一軒家に転居。このため媒体により「岸和田市出身」、「堺市出身」とする場合がある。
高校3年生の夏に交通事故に遭い、2か月以上の入院となり大学予備校に通う浪人となったため、“大学卒業まで5年かかると考えると、このモラトリアムな時間は無駄だ”と思い劇団オーディションを受け上京する。この時期にバックダンサーとして日本放送協会(NHK)テレビの歌番組『紅白歌合戦』、TBS系『ザ・ベストテン』に一度ずつ出演するも、思い描いたものとの違いを感じ約3年で退所。
米国に渡り、6年半ニューヨークで演技を学んだ後、日本に帰国。その後33歳で、平田オリザ主宰の劇団「青年団」に入団。他の劇団も受けたものの演劇論で演出家と対立した結果とのちに当時のことを語っている。
39歳(2007年頃)、山内ケンジがディレクターを務めた英会話教室「NOVA」のCM出演により、世間一般に顔が知られるようになった。以後、山内や沖田修一監督作品の常連俳優として、個性的な役柄を演じている。
2012年(平成24年)より2021年(令和3年)まで、山内演出のパチンコ・コンコルドのCM(静岡県ローカル)にコンコルゲン(コンコルド人間の略)として出演(2016年は歌唱のみ)していた。
2013年のドラマ『リーガル・ハイ』(第2期)、NHKの連続テレビ小説『ごちそうさん』などに出演して注目を集め、知名度を高める。以後、2016年のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)、2017年の大河ドラマ『おんな城主 直虎』、2019年の大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』などに出演し、バイプレイヤーとしての地位を確立。また、2016年に準主役で出演した映画『淵に立つ』が、第69回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門審査員賞を獲得した。
滝藤賢一と共にテレビ東京のプロデューサーに話を持ち込んだ企画が、2020年(令和2年)1月に滝藤とのダブル主演による『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京)でドラマ化され、ギャラクシー賞奨励賞を受賞。
エピソード
学生時代
技術職のサラリーマンを父に持ち、二人兄弟の次男として生まれた(兄は3歳上)。小学生時代の将来の夢は、漫画家やアニメーターになることだった。中学生になるとテレビ放送のアメリカ映画に熱中し始めた。
高校在学時、クラブ活動で少林寺拳法部に所属する傍ら、ダンスにも興味を持ち始めてブレイクダンスの真似事をしていた。高校2年生の頃に「自分は漫画家のような机に向かう仕事より、体を使う仕事が向いてるかも」と考え、映画好きなことから俳優を目指し始める。大学進学を考えていたが、3年生の夏に兄の運転するバイクの後ろに乗っていたところ、信号無視の車にはねられ、脚を骨折するなどして2か月入院。これにより受験勉強に完全に出遅れてしまい、進路が決まらないまま高校を卒業。
後日たまたま手にしたテレビ情報誌で、東京のミュージカル劇団創立による劇団員第1期生オーディションを知って応募。これに合格して上京し、渋谷区にある同劇団のスタジオへ通い始め、以後横浜の日吉、東急東横線がある綱島、京王堀之内駅近くなどのアパートを転々とした。劇団でダンス、演技、歌のレッスンを受け、2年後にはテレビの人気歌番組でバックダンサーに起用されるようになった。しかしその後、ダンスへの興味が薄れたことや東京暮らしにいまいち馴染めなかったことから劇団を退団。
演技を学ぶため渡米
その後アメリカに行きたいと思ったことから、23歳で単身ニューヨークへ渡った。英語力があまり必要なくビザが取りやすいという理由から、とりあえずダンサーの養成学校に入った。数か月後、同校を辞めて同市マンハッタン地区のグリニッジ・ヴィレッジにある「HBスタジオ」という俳優学校に入り直した。この学校では、演技理論「メソッド・アクティング」など演技に関する様々なことを学んだ。
1995年ニューヨーク滞在中の27歳の頃、友人の運転する車の後部座席に乗車中、急カーブでスピンして車が大破する大事故に遭った。意識不明の状態で病院に救急搬送され、診断により「首の骨にヒビが入り、顎が割れて肋骨が数本折れ、肺が一つ潰れていること」が判明。そんな状態だったが、アメリカの医療費が高いことから10日ほどで入院を切り上げて退院した。
病院から出る際、視界に入ってきた外の景色の美しさに身動きが取れなくなったことから、「この世は、天国のように素晴らしい世界だったんだ」と気づいた。大事故から奇跡的に助かったことで“残りはおまけの人生”と考え、以降は好きなことをやって生きていくことを決意。事故後のリハビリに半年かかり、俳優学校に復帰したが、ビザの期限と30歳という年齢も目前に迫っていた。まだカリキュラムは残っていたが、“自分なりに学べることは学んだ”として29歳で帰国。
小劇場俳優から映像作品に
帰国後は高円寺の風呂なしのアパートで10年間暮らしながら小劇場のオーディションを受ける日々を送った。舞台に立つようになってからは、先述の「メソッド・アクティング」をベースにした演技方法で俳優活動を行った。しかし、当時古い演技法が主流だった日本では、古舘の演技はなかなか受け入れられなかった。このため演出家と意見が合わないことも多く、数年間は俳優業が思うように行かなかった。
劇団「青年団」に入ってからも演出家との意見の対立は続くが、主宰の平田オリザはそんな古舘を面白がってくれたという。その後同劇団に観客として訪れた映画監督や他の演出家や、他の小劇場の人たちを通じて映画、ドラマ、CMなど映像の仕事にも出演を依頼されるようになった。英会話教室の「NOVA」のCMでまとまったお金が得られたことから、石神井公園近くの、風呂ありで以前より少し広い部屋のアパートに引っ越した。
人物
小学生の頃は、宮崎駿がキャラクターデザインや監督を務めたアニメ(『アルプスの少女ハイジ』(1974年)や『未来少年コナン』(1978年))を夢中で見ていたことがきっかけで、漫画家やアニメーターに憧れた。
20歳前後のミュージカル劇団員時代に2回テレビに出たことがある。一つは『ザ・ベストテン』で南野陽子の『話しかけたかった』の歌唱時に、バックで衣装の学ランを着て踊った。もう一つは紅白歌合戦で、小柳ルミ子のバックで約50人の男性ダンサー陣の1人として踊った。
憧れの俳優は、ロバート・デ・ニーロ。憧れたきっかけは、中学生の頃に見たロバート主演映画『ディア・ハンター』に感動したこと。アメリカの俳優学校時代は、アパートの自室の壁に彼の代表作の一つである『タクシードライバー』のポスターを貼っていた。また、ニューヨーク滞在中に、ロバートがオープンさせた日本料理屋「NOBU」でのバイト経験がある。当時古舘曰く「ウェイターの中で一番英語ができず、記憶力も悪かった」とのことで、ロバートと何度も共演した俳優で常連客のハーヴェイ・カイテルに怒鳴られたりもした。ある日店のトイレから出てきたロバートと偶然鉢合わせしたが、憧れが強すぎて“うわー、やべえ”と焦った。その結果気づかないフリをし、ロバートと会話する千載一遇のチャンスをみすみす逃してしまったという。
日本の俳優では、若い頃から役所広司に憧れている。その後役所とは2012年の映画『キツツキと雨』、大河ドラマ『いだてん』などで共演している。
若い頃から、演出や演技に関して舞台演出家などに率直に意見している。このため舞台俳優として駆け出しの頃は、演出家から「君は役者に向いていないよ」とよく言われ、知名度が上がってからは「面倒くさい俳優」と評されるようになった。
米国で演技を学んでおり、感情ではなく、プロセスから理屈をつけて芝居の動きを考えている。演じる役柄について、「一風変わった、どこか普通じゃないところのある人間を演じるのが好きです。様々な役を演じてきましたが、演じて楽しいのはクセのある人間の方ですね」と語っている。ちなみに普段は、元々人見知りで集団に属するのが苦手な性格とのこと。
2010年頃からの「アラブの春」で、SNSの力で独裁政権が次々と倒れるのを見たことがきっかけでTwitterを開始。以後安倍晋三政権(当時)に対する痛烈な批判など、SNSを通じた発言でも注目されるようになった。その後色々と思うところがあり、2022年にTwitterのアカウントを停止した。
約13年ぶりに再会した知人女性との交際を経て、その後2017年頃に結婚。妻は、舞台制作の仕事をしている。プライベートでは東京での生活があまり合わないため、以後東京と京都の2拠点生活となり、仕事がない時は築百年くらいの京町家で過ごしている。
50代を迎えてからは体力維持のため、時間がある時にランニング、スクワット、腕立て伏せなどに励んでいる。また、同時期に健康のことも考えて食生活にグルテンフリーを取り入れるようになったとのこと。
主な出演作品
映画
劇場アニメ
テレビドラマ
テレビアニメ
- LUPIN the Third -峰不二子という女-(2012年、日本テレビ) - ルイス・勇・アルメイダ伯爵 役
ゲーム
- すばらしきこのせかい(2007年7月27日発売、スクウェア・エニックス) - ハネコマ / 羽狛早苗 役
ドキュメンタリー
- ワーキングデッド〜働くゾンビたち〜(2014年10月2日 - 12月25日、BSジャパン) - キャスターワーキングデッド〜働くゾンビたち〜(BSジャパン)、2014年9月1日閲覧
- BS民放5局開局15周年共同特別番組「バック・トゥ・ザ21世紀〜気づけば未来があふれてた〜」 第四章 21世紀の「東京」(2016年1月2日、BSジャパン担当分) - スリープマン 役BS民放5局開局15周年共同特別番組「バック・トゥ・ザ21世紀〜気づけば未来があふれてた〜」、2015年12月23日閲覧
- ねこ育て(2019年2月16日、NHK BSプレミアム) - 語り、猫仙人の声
- ねこ育て いぬ育て(2019年7月20日、NHK BSプレミアム) - ねこ仙人、いぬ仙人の声
テレビ番組
- Rの法則
- ランコレ×ドラマ アールんの寄り道(2013年4月25日、NHK Eテレ)
- ランコレ×ドラマ 第2回「アールんとオオカミ少女」(2013年5月30日、NHK Eテレ)
- 100分de名著 玄侑宗久「荘子」(2015年5月6日 - 27日、NHK Eテレ) - 動物専門の整体師 役
- SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜(2015年10月10日 - 12月26日、テレビ東京) - 天本和己 役
- メディアタイムズ(NHK Eテレ) - 後藤ヒロノブ 役
- パイロット版(2017年6月18日)
- レギュラー版(2017年10月12日 - 2020年3月5日)
- バリバラ スケッチコメディー〜障害者が職場にやってきた〜(2019年5月16日・23日、NHK Eテレ) - 主演・フルタチ部長 役
- えいごであそぼ with Orton「That's Life」(2020年3月9日 - 、NHK Eテレ)
- NHK俳句(2021年7月11日、NHK Eテレ)
- 京コトはじめ(2022年10月14日、NHK)
朗読・ナレーション
- NHKスペシャル「従軍作家たちの戦争」(2013年8月14日、NHK総合)
- 零戦〜搭乗員たちが見つめた太平洋戦争〜(2013年8月3日・8月10日、NHK BSプレミアム) - 朗読
- ETV特集「戦場で書く~作家 火野葦平の戦争~」(2013年12月7日、NHK ETV) - 朗読
- ETV特集「路地の声 父の声~中上健次を探して~」(2016年11月26日、NHK ETV) - 朗読
- ETV ハートネットTV「夢のかけらを集めて ―写真家・甲斐扶佐義と女たち―」(2017年7月18日、NHK ETV) - ナレーション
- 映画『father カンボジアへ幸せを届けた ゴッちゃん神父の物語』(渡辺考監督)(2018年4月7日公開) - ナレーション
- RUN!HOPE!RUN!〜N響×大友良英×いだてんコンサート〜(2019年3月31日、NHK BSプレミアム) - ナレーション
- 100分de名著 ロジェ・カイヨワ『戦争論』(2019年8月5日 - 26日、NHK ETV) - 朗読
- NHK京都スペシャル「宮本組 旦那たちの祇園祭」(2019年9月6日、NHK京都) - ナレーション
- NHK BS1スペシャル「知られざる絆〜日本とローマ教皇400年の交流〜」(2020年1月16日、NHK BS1) - 朗読担当
- 映画「パンケーキを毒見する」(2021年7月30日公開予定、内山雄人監督) - ナレーション
- NHK特集ドラマ「ももさんと7人のパパゲーノ」(2022年8月20日、NHK)-ナレーション
ウェブドラマ
- ココダケノハナシ 〜短篇.jpルーキーズ第三弾〜(2008年7月配信開始、goo)
- 第1話「ポイズンラジオ」
- 最終話「ゴメンナサイが言えなくて」
- 舞妓さんちのまかないさん(2023年1月12日 - 、Netflix) - 古舘寛治朗 役
ラジオドラマ
- FMシアター「わたしのまなざし」(2015年5月2日、NHK-FM)
- J-WAVE SPECIAL SHORT SHORT(2020年5月4日、J-WAVE)
CM
舞台
Web連載
- クイックジャーナル〜カルチャーからニュースを読む〜(2020年1月15日 - 3月25日、QJWeb クイックジャパンウェブ
注釈
出典
参考文献
外部リンク
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/10/10 06:03 UTC (変更履歴)
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