清原惟 : ウィキペディア(Wikipedia)
清原 惟(きよはら ゆい、1992年 - )は、日本の映画監督・映像作家。東京都出身。
概要
和光高等学校(東京都)に在学中から自主映画の製作を開始。武蔵野美術大学映像学科で監督した作品がPFFアワードで連続入選を果たして関係者から注目を集めた。卒業後、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域で黒沢清・諏訪敦彦らに映画製作を学ぶ。
同大学院で修了作品として監督した初の長篇作品『わたしたちの家』が、ぴあフィルムフェスティバル2017でグランプリを受賞。これも高い注目を集め、全国各地で上映されたのち第68回ベルリン国際映画祭・フォーラム部門に正式出品。続いて、ニューヨークの映画協会と近代美術館(MoMA)が共催で各国の新進監督を紹介する「ニューディレクターズ/ニューフィルムズ(New Directors/New Films)」でも上映された。
短編製作やオムニバス作品への参加を経て、2022年、PFFスカラシップ作品として商業映画第1作『すべての夜を思いだす』を監督。同作は同年9月に日本国内で初公開されたのち、2023年2月に第73回ベルリン国際映画祭・フォーラム部門に正式出品 。4月には再び、ニューヨークで「ニューディレクターズ/ニューフィルムズ」の1本として参加、同年秋には北米で一般上映された。。北米、日本国内に続いて、イギリスで公開中。
出品上映
- 『わたしたちの家』
第48回香港国際映画祭、第20回台北映画祭(台北電影節)、第21回上海国際映画祭、第22回プチョン国際ファンタスティック映画祭、第67回メルボルン国際映画祭、第6回サンフランシスコ日本映画祭、第18回クリチパ国際映画祭(Olhar de Cinema)、第2回ウィーン日本映画祭、第25回バルディビア国際映画祭、第26回ブリスベン国際映画祭、第27回釜山国際映画祭など。
- 『すべての夜を思いだす』
第23回クリチパ国際映画祭、第13回北京国際映画、第25回台北映画祭、第72回メルボルン国際映画祭、第71回サン・セバスティアン国際映画祭、第28回釜山国際映画祭、第20回香港アジア映画祭、第64回テッサロニキ国際映画祭など。
評価
米国の映画批評で大きな影響力をもつ『ハリウッド・リポーター』誌は『わたしたちの家』が2018年に海外で上映され始めるとすぐに注目し、これは黒沢清『岸辺の旅』(2015) を思わせる冷ややかな亡霊のドラマで、清原はその繊細な脚本・謎を未解決のまま終わらせる大胆な手法によって、デビュー作でいきなり日本のインディーズ映画の最前線に立った、と紹介した。
『ニューヨーク・タイムズ』紙は多摩ニュータウンを舞台とした『すべての夜を思いだす』について、構成・脚本があいまいで力強さを欠くものの、東京郊外で暮らす3人の女性の姿を優美に描いており、画面のいたるところに溢れている森とあざやかな緑が、鋼鉄とコンクリートの大都市で生きる生の周辺性を象徴するかのようだ、などと評している。
表彰
- 2014年 - PFFアワード2014入選『暁の石』
- 2015年 - PFFアワード2015入選『ひとつのバガテル』
- 2017年 - PFFアワード2017グランプリ『わたしたちの家』
- 2018年 - 第18回クリチパ国際映画祭(ブラジル)グランプリ『わたしたちの家』
- 2018年 - スペインムービングイメージフェスティバル2018 グランプリ『わたしたちの家』
- 2018年 - 第21回上海国際映画祭「Asian New Talent Award」部門 最優秀監督賞『わたしたちの家』
- 2023年 - 第13回北京国際映画祭「Forward Future Award」部門 審査員特別表彰『すべての夜を思いだす』
監督作品
+ | 公開年 | 題名 | 脚本 | 主な出演 | |
---|---|---|---|---|---|
2009 | 白と三角 | 清原惟 | |||
2013 | ムーンドーン(※飛田みちるとの共同監督) | 清原惟・飛田みちる | 85分 | ||
2014 | 暁の石(※飛田みちるとの共同監督) | 清原惟 | 30分 | 坂藤加菜、橋本日香里、菊沢将憲、吉村英治 | |
2015 | ひとつのバガテル | 清原惟 | 72分 | 青木悠里、原 浩子、加藤周生、中島あかね、菊沢将憲 | |
2015 | しじゅうご円 | 加藤法子 | 15分 | 小畑みなみ 横田光亮 上野みき | |
2016 | 音日記 | 清原惟、峰尾賢人、加藤法子 | 30分 | 横田光亮、守谷周人、堀夏子 | |
2017 | 波 | 清原惟 | 5分 | 青木悠里、福地脩平 | |
2017 | 火星の日 | 清原惟 | 11分 | 青木悠里 | |
2017 | わたしたちの家 | 清原惟・加藤法子 | 80分 | 河西和香、安野由記子、大沢まりを、藤原芽生、菊沢将憲 | |
2018 | 網目をとおる すんでいる | 清原惟・青木悠里ほか | 15分 | 坂藤加菜、よだまりえ | |
2020 | これが星の歩きかた | 清原惟 | 村上由規乃、石倉来輝、菊沢将憲、青木悠里 | ||
2021 | 三月の光(※オムニバス作品『MADE IN YAMATO』より) | 清原惟 | 小山薫子、石倉来輝、田中真琴、南辻史人 | ||
2021 | バストリオ+松本一哉『黒と白と幽霊たち』パフォーマンス記録映像 | 清原惟 | |||
2022 | すべての夜を思いだす | 清原惟 | 116分 | 兵藤公美、大場みなみ、見上 愛、内田紅甘、遊屋慎太郎、奥野 匡 | |
2022 | 建築作品「海老名芸術高速」記録映像(部屋) | 清原惟 | |||
2022 | ユートピアのすごろく 映像インスタレーション作品(部屋) | 清原惟 | |||
2022 | 7日間のままごと(ままごと 瀬戸内国際芸術祭2022 ドキュメンタリー) | 清原惟 | |||
2023 | A Window of Memories | 清原惟 | 67分 | 砂子旭子、清原磋智子、小山薫子、坂藤加菜 |
関連文献
- 三浦哲哉「映画川特別編・清原惟レトロスペクティブ」 (2017年6月30日)
- 「新時代の映像作家たち:清原惟インタビュー」(批評誌『エクリヲ』2018年3月19日)
- 「『わたしたちの家』:清原惟監督インタビュー」(『i-D』2018年1月17日)
- 若き最優秀アジア新人監督が映す「パラレルワールド」#NEXT_U30 清原惟映画監督 (Forbes JAPAN日本編集部 2019年1月9日)
- 「清原惟インタビュー」(Cinemarche, 2019年5月7日)
- 『すべての夜を思いだす』(井戸沼紀美のエッセイ「二十二日の半券 2022年9月22日)
- 『新映画論 ポストシネマ』渡邉大輔著 2022年2月
- 『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』北村匡平・児玉美月著 2023年12月
- De Luca, Tiago and Nuno Barradas Jorge eds., Slow Cinema (Edinburgh University Press, 2015)
- Ira Jaffe, Slow Movies: Countering the Cinema of Action (Wall Flower Press, 2014)
- 『すべての夜を思いだす』清原惟監督インタビュー(NOBODY,2024)
- 太田達成 × 清原惟。日本映画の次代を照らす、監督2人のフレンドシップ (BRUTUS,2024)
- 映画「すべての夜を思いだす」 清原惟監督 他人を風景にしたくない(東京新聞 2024年2月25日)
- 風景のスクリーン・プラクティス/ 佐々木友輔 第3回高畑勲と清原惟の遊歩=風景論(かみのたね・フィルムアート社ウエッブマガジン 2024年12月20日)
関連項目
外部リンク
- - IMDB
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