笹本稜平 : ウィキペディア(Wikipedia)
(1951年10月9日 - 2021年11月22日)は、日本の小説家。本名は非公表である。
略歴
千葉県生まれ。立教大学社会学部社会学科卒。出版社勤務を経て、海運分野を中心にフリーライターとして活躍。2000年、「阿由葉稜」名義で『暗号―BACK‐DOOR』を書き下ろしてデビュー。本作品は後に『ビッグブラザーを撃て!』と改題され、笹本名義で文庫化された。2001年、『時の渚』で第18回サントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。2004年には『太平洋の薔薇』で第6回大藪春彦賞を受賞。
2021年11月22日、急性心筋梗塞のため死去。70歳没。訃報は翌2022年1月14日に公表された。
作風
笹本名義のデビュー作『時の渚』は私立探偵を主人公にした人情ミステリーだったが、第2作の『天空への回廊』は、一転してエベレストを舞台にした正統派の冒険小説。以後、『フォックス・ストーン』、『太平洋の薔薇』、『グリズリー』、『極点飛行』などへと続く作品群で、スケールの大きい冒険・謀略小説を構築する作家として注目を集めた。
その後は、奥多摩の駐在所に勤務する元刑事を主人公に、『時の渚』に通じるペーソスを漂わせた『駐在刑事』、硬骨漢のマル暴刑事を主人公にした警察小説『不正侵入』、あるいはユーモア・ハードボイルドの『恋する組長』で新たな切り口を覗かせ、作家としての間口を広げた。『越境捜査』、『素行調査官』では、警察小説・ハードボイルドの書き手としてさらに深化した境地をみせている。また『還るべき場所』、『未踏峰』では、ヒマラヤを舞台にピュアな山岳小説で気を吐いている。
山小屋の人々を描いた連作短編集『春を背負って』が、『劒岳 点の記』の木村大作監督により映画化された。主演は松山ケンイチ。2013年4月にクランクインし、2014年6月14日に全国東宝系で公開。
著書
シリーズ作品
檜垣耀二シリーズ
- フォックス・ストーン(2003年5月 文藝春秋 / 2005年8月 文春文庫)
- マングースの尻尾(2006年2月 徳間書店 / 2009年4月 徳間文庫)
- サハラ(2008年4月 徳間書店 / 2011年4月 徳間文庫)
越境捜査シリーズ
- 越境捜査(2007年8月 双葉社 / 2009年12月 フタバノベルス / 2010年11月 双葉文庫【上・下】 / 2020年3月 双葉文庫【新装版】)
- 挑発 越境捜査2(2010年2月 双葉社 / 2013年4月 双葉文庫)
- 破断 越境捜査3(2011年10月 双葉社 / 2014年11月 双葉文庫)
- 逆流 越境捜査(2014年3月 双葉社 / 2017年7月 双葉文庫)
- 偽装 越境捜査(2015年4月 双葉社 / 2018年11月 双葉文庫)
- 孤軍 越境捜査(2017年9月 双葉社 / 2020年12月 双葉文庫)
- 転生 越境捜査(2019年4月 双葉社 / 2022年2月 双葉文庫)
- 相剋 越境捜査(2020年10月 双葉社 / 2023年1月 双葉文庫)
- 流転 越境捜査(2022年4月 双葉社 / 2024年8月 双葉文庫)
素行調査官シリーズ
- 素行調査官(2008年10月 光文社 / 2011年8月 光文社文庫)
- 白日夢 素行調査官2(2010年10月 光文社 / 2013年6月 光文社文庫)
- 漏洩 素行調査官(2012年5月 光文社 / 2015年1月 光文社文庫)
- 卑劣犯 素行調査官(2017年12月 光文社 / 2020年7月 光文社文庫)
駐在刑事シリーズ
- 駐在刑事(2006年7月 講談社 / 2009年9月 講談社文庫)
- 尾根を渡る風 駐在刑事(2013年11月 講談社 / 2016年10月 講談社文庫)
所轄魂シリーズ
- 所轄魂(2012年1月 徳間書店 / 2014年6月 徳間文庫)
- 失踪都市 所轄魂(2014年7月 徳間書店 / 2017年5月 徳間文庫)
- 強襲 所轄魂(2015年7月 徳間書店 / 2018年6月 徳間文庫)
- 危険領域 所轄魂(2017年6月 徳間書店 / 2019年7月 徳間文庫)
- 最終標的 所轄魂(2018年10月 徳間書店 / 2022年5月 徳間文庫)
組織犯罪対策部マネロン室シリーズ
- 突破口 組織犯罪対策部マネロン室(2013年2月 幻冬舎 / 2015年10月 幻冬舎文庫)
- 引火点 組織犯罪対策部マネロン室(2018年7月 幻冬舎 / 2020年10月 幻冬舎文庫)
名無しの探偵シリーズ
- 恋する組長(2007年5月 光文社 / 2010年3月 光文社文庫)
- ボス・イズ・バック(2015年10月 光文社 / 2017年12月 光文社文庫)
ソロシリーズ
- ソロ(2017年8月 祥伝社)
- 【改題】ソロ ローツェ南壁(2020年4月 祥伝社文庫)
- K2 復活のソロ(2019年6月 祥伝社 / 2022年9月 祥伝社文庫)
- 希望の峰 マカルー西壁(2020年7月 祥伝社 / 2023年5月 祥伝社文庫)
その他
- 暗号―BACK‐DOOR(2000年9月 光文社カッパ・ノベルス) - 阿由葉 稜(あゆば りょう)名義
- 【改題】ビッグブラザーを撃て!(2003年9月 光文社文庫) - 笹本稜平名義
- 時の渚(2001年5月 文藝春秋 / 2004年4月 文春文庫)
- 天空への回廊(2002年3月 光文社 / 2004年7月 光文社文庫)
- 太平洋の薔薇(2003年8月 中央公論新社【上・下】 / 2006年3月 光文社文庫【上・下】 / 2014年2月 小学館文庫 【上・下】)
- グリズリー(2004年8月 徳間書店 / 2007年2月 徳間文庫)
- 極点飛行(2005年6月 光文社 / 2008年2月 光文社文庫)
- 不正侵入(2006年11月 光文社 / 2009年7月 光文社文庫)
- 許さざる者(2007年12月 幻冬舎)
- 【改題】偽りの血(2010年10月 幻冬舎文庫)
- 還るべき場所(2008年6月 文藝春秋 / 2011年6月 文春文庫)
- 未踏峰(2009年10月 祥伝社 / 2012年5月 祥伝社文庫)
- 特異家出人(2010年8月 小学館 / 2014年9月 小学館文庫)
- 春を背負って(2011年5月 文藝春秋 / 2014年3月 文春文庫)
- 南極風(2012年10月 祥伝社 / 2015年5月 祥伝社文庫)
- 遺産 THE LEGACY(2013年10月 小学館 / 2016年7月 小学館文庫)
- その峰の彼方(2014年1月 文藝春秋 / 2016年12月 文春文庫)
- 分水嶺(2014年10月 祥伝社 / 2017年8月 祥伝社文庫)
- 大岩壁(2016年5月 文藝春秋 / 2019年5月 文春文庫)
- 指揮権発動(2019年1月 KADOKAWA)
- サンズイ(2019年10月 光文社 / 2022年7月 光文社文庫)
- 山岳捜査(2020年1月 小学館 / 2023年1月 小学館文庫)
- 公安狼(2020年3月 徳間書店 / 2023年1月 徳間文庫)
- アイスクライシス(2021年8月 徳間書店 / 2023年3月 徳間文庫)
- 山狩(2022年1月 光文社)
アンソロジー
「」内が笹本稜平の作品
- ザ・ベストミステリーズ 2003 推理小説年鑑(2003年7月 講談社)「犬も歩けば」
- 【改題・分冊】殺人の教室 ミステリー傑作選(2006年4月 講談社文庫)
- 事件を追いかけろ サプライズの花束編(2004年12月 光文社 / 2009年4月 光文社文庫)「死人の逆恨み」
- 宝石 ザ ミステリー(2011年12月 光文社)「ボス・イズ・バック」
- 宝石 ザ ミステリー2(2012年12月 光文社)「師走の怪談」
- 宝石 ザ ミステリー3(2013年12月 光文社)「任侠ビジネス」
- 宝石 ザ ミステリー2014冬(2014年12月 光文社)「ベルちゃんの憂鬱」
- サイドストーリーズ(2015年3月 角川文庫)「ゴロさんのテラス」 - 『春を背負って』番外編
- 不屈 山岳小説傑作選(2020年2月 ヤマケイ文庫)「擬似好天」
映像化作品
映画
テレビドラマ
- 時の渚(2001年12月1日、テレビ朝日系、主演:渡辺徹)
- 越境捜査シリーズ(テレビ朝日系、主演:柴田恭兵)
- 越境捜査(2008年9月11日)
- 挑発 越境捜査2(2010年5月22日、「土曜ワイド劇場」枠)
- 破断 越境捜査3(2011年12月22日)
- 駐在刑事シリーズ(テレビ東京系、主演:寺島進)
- 駐在刑事(2014年4月2日、「水曜ミステリー9」枠)
- 駐在刑事2(2015年4月15日、「水曜ミステリー9」枠)
- 駐在刑事3(2015年9月16日、「水曜ミステリー9」枠)
- 駐在刑事4(2016年12月14日、「水曜エンタ」枠)
- 駐在刑事5(2017年10月13日)
- 駐在刑事(2018年10月19日 - 12月7日、全7話、「金曜8時のドラマ」枠)
- 駐在刑事 Season2(2020年1月24日 - 3月6日、全7話、「金曜8時のドラマ」枠)
- 駐在刑事 SP2021(2021年5月24日、「月曜プレミア8」枠)
- 駐在刑事 Season3(2022年1月14日 - 2月25日、全7話、「金曜8時のドラマ」枠)
- 所轄魂(2015年9月20日、テレビ朝日系「日曜エンターテインメント」枠、主演:時任三郎)
- 越境捜査(2020年4月20日、テレビ東京系「月曜プレミア8」枠、主演:高橋克典)
選考委員
- 小説推理新人賞 、第33回(2010年) - 第35回(2012年)
- 南日本文学賞、第38回(2009年) - 第44回(2015年)
- 船橋市文学賞「第1部 小説部門」、第23回(2011年) - 第34回(2021年)
関連項目
- 日本の小説家一覧
- 推理作家一覧
- 冒険小説
- 警察小説
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/08/15 08:17 UTC (変更履歴)
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike and/or GNU Free Documentation License.