キャサリン・ウォーターストン : ウィキペディア(Wikipedia)

キャサリン・ウォーターストンKatherine Boyer Waterston、1980年3月3日 - )は、イギリス出身のアメリカ合衆国の女優。ファッションアイコン。『インヒアレント・ヴァイス』のシャスタ役、『ファンタスティック・ビースト』シリーズのティナ・ゴールドスタイン役、『』のダニエルズ役などで有名。

生い立ち

出生地はロンドンのウェストミンスターにあるチェルシー・アンド・ウェストミンスター病院だが、これは両親が仕事でロンドンに滞在しているあいだに生まれたためである。出生後はアメリカ合衆国へ戻り、コネチカット州北西部にある小さな町で育った。

父親はアメリカ合衆国の俳優サム・ウォーターストン(Sam Waterston、1940年11月15日 - )。母親は1970年代に雑誌『Vogue』のファッションモデルとして活躍したリン・ルイーザ・ウッドラフ(Lynn Louisa Woodruff、現姓ウォーターストン、生年不明 - )。両親ともに背が高く、ウォーターストン本人も高校時代にはすでに身長180cmを超えていた。現在も長身の女優として知られるが、身長の記載にはゆらぎがあり{{efn|本人は、身長について質問を受けた場合には「おおよそ6フィート(約183cm)」とごまかしがちだと話している。}}、海外では主として5フィート11.5インチ(約182cm)、日本などでは180cmとされる。

姉のエリザベス・ウォーターストン(、1977年3月30日 - )は女優および画家として、弟のグレアム・ウォーターストン(、1983年4月29日 - )は映画監督として、異母兄のジェームズ・ウォーターストン(James Waterston、1969年1月17日 - )は俳優として、それぞれ活躍している。くわえて、近しい親戚に言語学者、教師、画家、作家(詩人)がいることが知られており、学術・芸術家肌の家筋といえる。ウォーターストンも、幼少期から父サムとともに撮影現場や劇場の舞台裏に出入りし、演技の世界に親しみながら育つ一方、俳優の道を選ぶ以前には、陶芸、絵画、写真などにも取り組み、とくに10代の頃は写真家を目指す気持ちも強かったという。

1998年、アメリカ合衆国コネチカット州にある寄宿制の有名進学校を卒業。その後、ニューヨーク大学芸術学部(New York University Tisch School of the Arts)ドラマ学科(Department of Drama)で演技を専攻し、2002年に学士(BFA)を取得した。大学卒業後は6ヶ月にわたりロンドンの王立演劇学校で学び、さらにニューヨークのの卒業者名簿にも名前がある。

2014年、『インヒアレント・ヴァイス』のキャスティング・ディレクターは、演技に関する専門的な知識を有し、多くの経験を積んでいることから、ウォーターストンを「演劇の専門家(theater maven)」と称している。

キャリア

概要

  • 舞台・映画への出演に加えて、テレビ関係の仕事やリーディング公演、広告モデルなど多彩な活動経験を持つ。
  • キャリア開始後しばらくはうまく仕事を得られなかったと話しており、ブレイクまでに10年以上の時間を経ている。

テレビ関係

2000年代前半には複数のテレビドラマ・テレビ映画へ出演していた。本人のインタビューによると、プロとしての最初の仕事はNBCのテレビドラマ「Deadline」シリーズ、あるいはのコマーシャルへの出演だったという。

映画

2006年、大学時代の友人ブライス・ダラス・ハワードによるショートフィルム『Orchids』に出演し、映画デビューを果たした。同作品は『Glamour』誌による短編映画プロジェクト「リール・モーメント(Reel Moments)」シリーズとして、2007年のパームスプリングス国際短編映画祭で上映された。

2007年8月、第64回ヴェネツィア国際映画祭で公開された『フィクサー』で長編映画デビュー。同2007年9月の第32回トロント国際映画祭で公開された『援助交際ハイスクール(The Babysitters)』では主役を演じている。

その後もインディーズ作品やショートフィルムを中心に多数の作品へ出演を続け、2014年に『インヒアレント・ヴァイス』でシャスタ・フェイ・ヘップワース役を演じてブレイク。助演女優として複数の賞にノミネートされ、一躍有名となるが、キャリア開始から長い時間を経ていたため、本人はこの飛躍がなければ俳優としての生き方を断念する心づもりもあったと話している。

近年は、2016年からの「ファンタスティック・ビースト」シリーズや2017年の『』など世界規模のフランチャイズ作品に続けて参加する一方、2018年の『Mid90s』や『夫の秘密/ポイズン:あるスキャンダルの秘密(State Like Sleep)』などのインディーズ映画にも複数出演している。

舞台

2000年代初期からの下積み時代を経て、2007年にニューヨークにあるフリー・シアター(Flea Theater)の舞台『Los Angeles』で主演デビュー。同作品の監督アダム・ラップ(Adam Rapp)は、2006年の『Orchids』を見てウォーターストンを抜擢したという。

2010年のコメディ作品『Bachelorette』、2011 - 2012年の『The Cherry Orchard』のリバイバル上演など複数のオフ・ブロードウェイ作品に出演するとともに、演劇関係のワークショップ やイベントにも名前が見られる。

リーディング公演/ナレーション

2007年、ニューヨークにある劇場アルス・ノヴァ(Ars Nova)で開催された公演会において『The Jesus Year』の読み手を担当した。また、『ラファムズ・クォータリー(Lapham’s Quarterly)』誌が主催するリーディング公演会にパフォーマーとして複数回参加し、2013年には世界的な文学祭であるペン・ワールド・ヴォイス・フェスティバル(PEN World Voices Festival)中の企画で『ジェーン・エア』の朗読を担当した。

このほか、オーディオブックのナレーターやビデオゲームのCVにも取り組んでいる。

広告モデル

2009年、ブルーミングデールズによるファッションイベント「Girls’ Night Out」にモデル兼役者として出演。また、2010年から2014年頃まで、大学時代の友人であるダフネ・ジャヴィッチ(Daphne Javitch)によるランジェリーブランド「TEN」の広告モデルを務めていた。

近年では、スコット・スタンバーグ(Scott Sternberg)が設立したオリジナルブランド「Entireworld」のサポーターとして、2018年6月から8月にかけて公開された複数の広告動画に出演した。

そのほかの主な活動

  • 2015年、弟グレアムが監督・脚本を担当し、義兄ルイス・キャンセルミ(Louis Cancelmi)が主演するショートフィルム『And It Was Good』のプロデューサーを務めた。
  • 2015年4月、父サムとともに海洋自然保護団体Oceanaのイベント、ニューヨーク・シティ・ガラを主催した。
  • 2020年3月、ロックダウン下のロンドンにおいて、非営利のボランティア・プラットフォーム「SpareHand」を設立。ウォーターストン本人もボランティア活動に複数回参加し、Instagramの個人アカウントを通してその活動の様子を伝えるとともに、チャリティーへの呼びかけなども行っている。

私生活

  • 2000年代後半から2010年代前半にかけて、劇作家・舞台監督のアダム・ラップと交際し、同棲・婚約していたことが知られる。ラップの監督作のうち、2011年の3部作『The Hallway Trilogy』はウォーターストンに捧げられた作品である。
  • 2018年11月に第1子の妊娠を明かし、2019年の早い段階で息子が生まれている。父親については公表されていない。
  • 2020年3月、イギリスで新型コロナウイルスCOVID-19に罹患し、回復した。
  • 2020年5月、Instagramの認証済みアカウント運用を開始。個人として情報発信を行う中で、LGBTQの人々へのサポートやブラック・ライヴズ・マターの支持などについて積極的に声明を発している。

エピソード

  • 父親のサム・ウォーターストンは、NBCの刑事ドラマ『ロー&オーダー』の看板キャラクター、ジャック・マッコイ役を16年にわたり演じたことで知られるが、ウォーターストンは複数回このシリーズのオーディションを受けるも一度も採用されず、出演を果たせなかった。この事実について、著名な父親の威光を笠に着て自身のキャリアを築いてきたわけではないことの裏付けとする一方で、姉、異母兄、義兄など多くの身内が同ドラマに出演できていることを自他ともにたびたびネタにしている。
  • 外見について、童顔であるために自身のエージェントからは「ベンジャミン・バトン」と称されている。また、2016年から2017年にかけて髪型がベリーショートだった期間があるが、外出先でたびたび青年(boy)と勘違いされていた。
  • 「ファンタスティック・ビースト」シリーズの共演者であるエディ・レッドメインとは、非常に遠いが親戚関係にあるという。同作品の共演者ダン・フォグラーが制作するPodcast番組『DAN FOGLER'S 4d Xperience!』シリーズのうち、2018年2月16日に公開されたエピソードでレッドメインが言及したことにより判明した。

出演

+長編映画
題名役名備考脚注
2007フィクサーMichael Clayton"Third Year"
援助交際ハイスクールThe Babysittersシャーリー
2008Good DickKatherine日本未公開
2009ウッドストックがやってくる!Taking Woodstockペニー
2011Almost in LoveLulu日本未公開
トランス・ワールドEnter Nowhere/The Haunting of Black Woodサマンサ
2012素敵な相棒 〜フランクじいさんとロボットヘルパー〜Robot & Frank"店員"
ロバート・デ・ニーロ エグザイルBeing Flynnサラ
パラノイド・シンドロームThe Letterジュリー
コレクターThe Factoryローレン
2013Night Moves アン
The Disappearance of Eleanor Rigby: Herチャーリー
2014Glass ChinPatricia Petals O'Neal日本未公開
Are You Joking? /You Must Be Joking Lisa
インヒアレント・ヴァイスInherent Viceシャスタ・フェイ・ヘップワース
2015愛とセックスSleeping with Other Peopleエマ
Queen of EarthVirginia日本未公開
マンハッタン・ロマンスManhattan Romance カーラ
スティーブ・ジョブズSteve Jobsクリスアン・ブレナン
2016ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅Fantastic Beasts and Where to Find Themティナ(ポーペンティナ )・ゴールドスタイン
2017Alien: Covenantジャネット・ダニエルズ
ローガン・ラッキーLogan Luckyシルヴィア・ハリソン
エジソンズ・ゲームThe Current Warマーガリート・ウェスティングハウス
FluidicTell
2018夫の秘密/ポイズン: あるスキャンダルの秘密State Like Sleepキャサリン(ケイト)WOWOW放映(プレミア)時の邦題:『夫の秘密』DVDタイトル:『ポイズン: あるスキャンダルの秘密』
ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生Fantastic Beasts: The Crimes of Grindelwaldティナ(ポーペンティナ)・ゴールドスタイン
Mid90sダブニー
2019AmundsenBess Magids日本未公開
2020ワールド・トゥ・カム 彼女たちの夜明けThe World to Come アビゲイル 2020年9月の第77回ヴェネツィア国際映画祭でワールドプレミア
2022 ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密Fantastic Beasts: The Secrets of Dumbledore ティナ(ポーペンティナ )・ゴールドスタイン
バビロンBabylon ルース・アーズナー
TBA They Listen
+短編映画
題名役名備考脚注
2006Orchids Beatriceオンライン公開
2011Eat!Claireオンライン公開
Without PaulAimeeオンライン公開
2012Ástarsaga("Love Story")Solangeオンライン公開
2015Forgive Me Dear"Woman"オンライン公開(※2019年頃に削除)
Outlaws"The Trapeze Artist"オンライン公開
2017 - 最後の晩餐Alien: Covenant - Prologue: Last Supperジャネット・ダニエルズ2017年2月22日オンライン公開
Alien: Covenant - Crew Messages: Daniels2017年4月17日オンライン公開
- 恐怖心測定Alien: Covenant - Phobos2017年7月19日オンライン公開
+テレビ映画・ドラマ
題名役名備考脚注
2000PalmerNBC製作のテレビドラマ(全13話)* 2000年10月2日オンエアの第1話「Pilot」に出演
2004Americana/Home and HardwareNBC製作のテレビドラマ(パイロット版)
2005Untitled Jerry Bruckheimer/Marsh McCall ProjectCBS製作のコメディ映画(パイロット版)
2012-2013Boardwalk Empire エマ・ハロー HBO製作のテレビラマ(全56話のうち5話に出演)* シーズン3 - 第6話「彼女たちの決断(原題: Ging Gang Goolie)」* シーズン4 - 第1話「ニュー・ゲーム(New York Sour)」* シーズン4 - 第2話「新参者(Resignation)」* シーズン4 - 第3話「晴れのち土砂降り(Acres of Diamonds)」* シーズン4 - 第12話「グッバイ・ダディ(Farewell Daddy Blues)」
2020サード・デイ 〜祝祭の孤島〜The Third DayジェスHBO/Sky製作のミニシリーズドラマ(全6話のうち5話、およびライブイベントに出演)日本ではスターチャンネルが配信・放映を行う。配信版はAmazon Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」で2020年11月20日(金)から、放映版はBS10 スターチャンネルで2020年12月19日(土)から、順次公開予定。* 「夏」パート - 第1話「1日目(原題:Friday - The Father)」* 「夏」パート - 第2話「2日目(Saturday - The Son)」* 「夏」パート - 第3話「3日目(Sunday – The Ghost)」* スペシャル・ライブイベント「Autumn」[2020年10月3日オンライン公開(全編:Part1Part2)、さらに2020年10月15日に編集版がオンライン公開されたが、いずれも日本での配信は未定]*「冬」パート - 第2話「Tuesday - The Daughter*「冬」パート - 第3話「Last Day - The Dark
TBABecoming Helen KellerAnne SullivanPBS製作の伝記映画状態:制作進行中(2011年頃から)
2023 窓際のスパイSlow Horses アリソン・ダン Apple TV+ テレビドラマシリーズ
ペリー・メイスンPerry Mason バージニア・エイムス HBOテレビドラマシリーズ
+プロモーションビデオ
作品名役柄備考脚注
2009Bloomingdale's Screen Test本人Bloomingdales、2009年7月23日オンライン公開* Velveteen* Quinn* Q&A
2015Katherine WaterstonFlaunt Magazine、2015年6月24日オンライン公開
Behind OutlawsBelstaff、2015年9月22日オンライン公開
2018Katherine WaterstonEntireworld* 1: 2018年6月18日オンライン公開* 2: 2018年6月20日オンライン公開* 3: 2018年7月3日オンライン公開* 4: 2018年8月6日オンライン公開* Color Test: 2018年8月22日オンライン公開
2018Katherine Waterston for Contributor No16Contributor Magazine、2018年11月2日オンライン公開
2020A Cover Story with Katherine WaterstonThe Italian Rêve、2020年9月11日オンライン公開
+舞台
作品名役名備考脚注
2003Smashing"Nubile book fan"The Play Company、2003年10月4日 - 2003年10月26日
2005Matyr PartySquare Theatre、2005年12月5日のみの公演
2007Los AngelesAudreyThe Flea Theater、2007年2月12日 - 2007年4月14日
2008The Metal Children(Developmental lab production)Vera DundeeVineyard Theatre、2008年6月10日 - 2008年6月29日
KindnessFrancesPlaywrights Horizons、2008年9月25 - 2008年11月2日
2009ReborningKellySummer Play Festival、2009年7月7日 - 7月12日
2010BacheloretteGenaSecond Stage Theater、2010年7月12日 - 2010年8月14日
2011The Hallway Trilogy - Part1. RoseRose HathawayRattlestick Playwrights Theater、2011年2月24日 - 2011年3月27日
Dreams of Flying Dreams of FallingCora CabotClassic Stage Company、2011年10月3日 - 2011年10月30日
2011-2012The Cherry OrchardAnyaClassic Stage Company、2011年11月16日 - 2012年1月8日
+リーディング公演・ナレーション・CV
作品名担当備考脚注
2007The Jesus Yearリーディング
2012Lysistrata(女の平和)リーディング
2013Jane Eyre(ジェーン・エア)ナレーター
2014Gone with the Wind(風と共に去りぬ)ナレーター
2016Lego Dimensionsキャラクターボイス:Porpentina 'Tina' Goldsteinビデオゲーム
2017A Separation: A Novelナレーターウォーターストン主演で映画化される可能性が報じられている
2020An Ordinary LifeナレーターStories from Tomorrow、2020年7月5日オンライン公開

受賞およびノミネート

賞および部門作品名結果脚注
2014サテライト賞(映画部門) - 助演女優賞インヒアレント・ヴァイスノミネート
トロント映画批評家協会賞 - 助演女優賞ノミネート
ヴィレッジ・ヴォイス映画投票(Village Voice Film Poll) - 助演女優賞ノミネート
インディワイヤー批評家投票(Indiewire Critics' Poll) - 助演女優賞ノミネート
ビッグ・アップル映画祭 (Big Apple Film Festival and Screenplay Competition)- NYエマージング・タレント賞マンハッタン・ロマンス受賞
2015インディペンデント・スピリット賞 - ロバート・アルトマン賞インヒアレント・ヴァイス受賞
デンバー映画批評家協会(Denver Film Critics Society)賞 - 助演女優賞ノミネート
ワシントンD.C.映画批評家協会 - アンサンブルキャスト賞スティーブ・ジョブズノミネート
アワード・サーキット・コミュニティ賞(Awards Circuit Community Awards) - アンサンブルキャスト賞ノミネート
2016ゴールド・ダービー賞(Gold Derby Awards) - アンサンブルキャスト賞ノミネート
クロトゥルーディス賞(Chlotrudis Awards) - 助演女優賞Queen of Earthノミネート
2017ティーン・チョイス・アワード - ファンタジー映画女優賞ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅ノミネート
2019ティーン・チョイス・アワード - SF/ファンタジー映画女優賞ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生ノミネート
2020キネオ賞(Kineo Award) - グリーン&ブルー・プロジェクトU.N.賞本人受賞
ストックホルム国際映画祭 - 主演女優賞The World to Come受賞

注釈

出典

外部リンク

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/10/04 23:11 UTC (変更履歴
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