御茶漬海苔 : ウィキペディア(Wikipedia)
御茶漬海苔(おちゃづけのり、1960年4月12日 - )は、日本の漫画家。神奈川県川崎市出身。男性。血液型はO型。
「惨劇館」など多数のホラー作品で知られ、実写ホラー映画の監督も務めている。ペンネームに姓名の区切りはなく、インタビューなどでも「御茶漬海苔」と略されない表記を用いる。
来歴
生い立ち
金物店の長男として生まれる。一人っ子で奔放に育てられた一方、小学生の頃から店番を手伝うなど評判のいい子供だった。当時は高度成長期で経済的に活気はあったが漫画を売る書店はまだ少なく、通っていた小学校の近所にあった貸本屋から借りた漫画を読んでは真似をして絵を描いていたという。
高校生の時に自らが中心となって漫画研究会を設立、大学進学後も漫画仲間に声をかけて同人誌を制作していた。同人サークルは即売会に出品したところ1日で数百冊を売り上げる人気となり、同人活動と並行してえびはら武司にアシスタントとして師事していた。
アシスタント時代
20歳の時、少年サンデーであだち充がアシスタントを公募していることを知る。師匠のえびはらに黙って応募したところ、担当編集者から「あなたのところで働いているアシスタントが応募してきている」と連絡があり、あっさりとバレてしまったという。しかしえびはらは怒らず「なぜ黙って申し込んだんだ」と諭され、改めて「あだち充先生に是非会いたいのでお願いします」と頼み込み、面接へ参加する許可を得た。結果は落選したものの最終選考まで残り、駅まで送ってくれた小学館の編集者(後に最初の担当編集となる)から「君は上手いから頑張ってプロになりなさい」と激励され、これ以降からプロを志す様になる。
大学卒業後に金物店を継ぐ約束をしていたにもかかわらず、家業をおろそかにして部屋にこもり漫画を描いていたため、「両親との言い争いが絶えなかった」「夕飯は常に喧嘩の場だった」と述懐している。最終的に「月に8万円を家に入れる」ことを条件に(昭和60年頃の大卒初任給は13 - 14万円程度である)漫画家を目指す事を許され、アルバイトをしながら休日は1日中漫画を描く多忙な日々を送った。
デビュー後、ホラー漫画へ転向
1984年、『精霊島』(「レモンピープル」あまとりあ社)でプロデビュー。
デビューからしばらくの間はSFを好んで描いていたが、読者からの評価は芳しくなく、ある時ホラー特集があったためホラー漫画を描いたところ、「その回に限ってアンケートの結果が異常に高かった」と述べるほど好評を得る。これを機に、本格的にホラー漫画家へと転向した。
1980年代後半から90年代にかけて、『ハロウィン』『サスペリア』『ホラーM』といった恐怖漫画雑誌の常連作家として活躍した。
ホラー映画監督へ転向
2000年代に入ると徐々に漫画から映像分野へ軸足を移し、「惨劇館」の映像化や同じホラー漫画家で交流のある古賀新一、伊藤潤二とお互いの世界観をクロスオーバー作品として共同映像化するプロジェクト「古潤茶」に参加している。
漫画から遠ざかった理由について、本人の弁によると「映画はカメラワークや音、ライティングによる演出など刺激的で楽しい世界だが、その反動で漫画のネームがなかなか通らなくなり、漫画の中でストーリーを上手く表現する工夫が思いつかなくなった」という。このスランプが紙とペンのみで描く漫画の奥深さを見直すきっかけになったとも述べている。
2010年代からは再び漫画活動を活発化させており、2014年から『コミックスピカ』が休刊になるまで「地獄博士とネコ」を連載した他、過去作品の傑作選や未収録作品を電子書籍化している。
片目失明により引退
2023年11月3日、フジテレビのニュース・ワイドショー番組『Live News イット!』「しらべてみたら」コーナーの年金特集に出演。2020年頃に糖尿病を患って右目を失明し、執筆活動に支障が生じたため現在は引退状態にあること、また、連載が好調だった頃は年収3000万円ほどあったが、現在は月収4万円ほどの年金生活であることを告白した。
作風
独特の効果音演出や容赦のないゴア描写によるスプラッターホラーを得意とするが、追い詰められた人間の心理描写など絵的な部分以外で恐怖を煽るサイコ・サスペンス、奇想な設定を背景としたSFホラーにも定評がある。
絵柄は少女漫画風の柔らかい線を用いた中性的なタッチだったが、ホラー漫画家へ転向してからは大きく見開いた目、細い体つきが特徴の独特のシャープな絵柄がトレードマークになっていった。
近年はより太い線を使ったカートゥーン風の絵柄も用いている。本人は「昔から洋画のホラー映画が好きで、他のホラー漫画家の皆さんとは絵のタッチが違うものになっていった」と分析している。
人物・エピソード
- 影響を受けた漫画家は手塚治虫、大友克洋。
- 長らく性別・年齢不詳で通しており、風貌もお茶漬けをモチーフにした自画像しか掲載していなかった。初期の作風から女性作家と思っていたファンもいたという。
- インターネットが普及してからはメディア露出が増えて白い髭を蓄えた風貌も知られる様になったが、本人曰く「本名以外は特に隠したかった訳ではない」と明かしている。
- 黒い服が好きで、一年中黒い服を着ている。
- デビュー当時から「引きこもり漫画家」を自認しており、仕事中は外出せず1日のほとんどを自室の中で過ごすと語っている。
- 現在はワンルームマンションを所有しており、マンションの一室を仕事部屋として使用しているという。
- 「リーンカーネーション」は、歌手・小泉今日子のお気に入りで、それが縁で彼女のアルバム『Hippies』の作詞を依頼され「凍りの都市」の歌詞を書く。
- 猫が好きで、今まで何匹もの飼っている。現在はララという名の黒猫を飼っている。
- プロレスが好きで、大和ヒロシやモハメド・ヨネなど、多くのプロレスラーと親交がある。
- 得意な学科は理科。
- 野球は中日ドラゴンズのファン。
作品リスト
漫画
- 精霊島(1984年、久保書店『レモンピープル』掲載) - デビュー作品
- 東京に雪の降る日(1986年、朝日ソノラマ『バトル・マシーン』掲載) - デビュー作品
単行本
- 砂のテレビジョン(1985年刊 久保書店、全1巻)
- リーンカーネーション(1986年刊 東京三世社、全1巻)
- 童鬼(1987年刊 東京三世社、全1巻)
- 魔王グール -ネビルストーン伝説- (1987年刊 朝日ソノラマ『バトル・マシーン』(アンソロジー)掲載、全1巻)
- 惨劇館(1987年 - 1993年刊 朝日ソノラマ『ハロウィン』連載、全10巻) - 講談社より文庫版が刊行、1996年 - 1997年刊 全3巻
- ネビロスの双児(1988年刊 東京三世社、全2巻)
- 13日の御茶漬海苔(1988年刊 朝日ソノラマ、全1巻) - 新装版刊行、1993年 全1巻
- クルクル(1988年 - 1989年 朝日ソノラマ『ハロウィン』連載、全1巻) - ぶんか社からも新装版刊行、1996年刊 全1巻
- TVO(1989年 - 1990年刊 ヤングサンデーコミックス『ヤングサンデー』連載、全3巻)
- ギギラ(1991年刊 徳間書店『月刊少年キャプテン』連載、全1巻)
- 姫(1991年 - 1992年刊 少年画報社、全3巻)
- チョーク(1991年 - 1992年刊 リイド社、全5巻) - 『恐怖学園 指輪』のタイトルで電子書籍化されている。
- 妖怪物語(1993年 - 1994年 ぶんか社、全3巻)
- 恐怖実験室(1994年 - 1996年 秋田書店『サスペリア』連載、全5巻)
- 恐怖テレビ(旧名 TVO、1994年刊 ぶんか社『ホラーM』連載、全4巻)
- 暗黒辞典(1995年 - 1997年刊 ぶんか社『ホラーM』連載、全4巻)
- 魔夜子ちゃん(1995年 - 1997年刊 リイド社『恐怖の館DX』連載、全3巻)
- 怪奇恐怖全集(1996年 - 1997年刊 蒼馬社』)
- 怪奇恐怖全集 密室倶楽部
- 怪奇恐怖全集13 姫I
- 怪奇恐怖全集16 姫II
- 恐怖テレビ TVO 御茶漬海苔 自選集(1998年刊 ぶんか社、全1巻)
- 恐怖の心理ゲーム(1999年刊 河出書房新社、全1巻) - 心理学者・富田隆(富田たかし)との共著
- 昭和金物屋物語(2007年刊 笠倉出版社、全1巻)
- 痛いんです(2012年刊 メディアファクトリー『コミックエッセイ劇場』連載、全1巻)
- レジェンドオブホラー(2016年刊 レジェンドオブホラー制作委員会、全1巻) - 犬木加奈子、関よしみ、と集結して、クラウドファンディングによって作られた限定本。
- 斬殺サーカス(学研『Manga Samurai Style』連載、2013年 - 2016年、全2巻)
- 地獄博士とネコ(2014年 - 2015年、幻冬舎コミックス『コミックスピカ』連載、全1巻) - KADOKAWA『ハルタ』とKADOKAWA『月刊Asuka』の付属冊子『青騎士』第1号 - 第5号に再録連載。単行本はKADOKAWAから発売。
- おんニャの一生(2021年 - 、KADOKAWA『青騎士』連載中)
電子コミック
- 怖くて残酷な日本の怪談(全3巻)
- 怖くて残酷な日本の童話(全3巻)
- 怖くて残酷なグリム童話(全2巻)
- 愛と涙の…大人のための怖い童話(全3巻) - お馴染みの童話や古典や昔話の数々を、独自の解釈で凶悪アレンジの童話集。
- 怪奇ホラー暗黒劇場(全4巻) - 単行本未発表の血みどろの怪奇ホラーコミック
- 1巻 - 『ブラッド女王』『O・FILM〜絵理香』
- 2巻 - 『女王太陽姫』『早まった埋葬』
- 3巻 - 『切り裂きジャック』『隔離〜白い壁』
- 4巻 - 『豆の木』『三匹の子豚』
雑誌
- 月刊ハロウィン 別冊 御茶漬海苔がやってきた!(1987年4月30日、朝日ソノラマ) - 表紙は山瀬まみ
- 月刊ハロウィン 別冊 御茶漬海苔がやってきた!2 大惨劇館(1988年4月30日、朝日ソノラマ) - 3Dメガネ付き
- 月刊ハロウィン 別冊 御茶漬海苔がやってきた! 悪魔の惨劇館(1989年3月30日、朝日ソノラマ)
舞台
- 漫劇(2015年5月1日 - 4日、中野スタジオあくとれ)
- 3本のオムニバスの中の1本 「花」の脚本・演出。
イラストレーション
- W-1(川崎大会パンフレット) - 表紙イラスト。川崎出身ということで、プロレスラーの大和ヒロシに依頼される。
- 小林泰三『惨劇アルバム』(光文社文庫、2012年) - 装画
- 西日本豪雨復興応援アート展、西日本豪雨復興応援チャリティーアートブック - イラスト。平成30年7月豪雨での被災地に向けての復興応援イラスト及びメッセージを寄贈。
デザイン
- グローバル・レスリング連盟ロゴマーク
ゲーム
- SIMPLE1500シリーズ Vol.74 THE ホラーミステリー 〜惨劇館 ケビン伯爵の復活〜(2001年) - 漫画『ケビン伯爵の惨劇』を原作としたサウンドノベルで、自らストーリーを監修している。2010年にゲームアーカイブスで配信もされた。
コミカライズ作品
- 御茶漬版スウィートホーム
- 『惨劇館』の単行本7巻(朝日ソノラマ)に収録。原作映画の前日談的な内容となっている。
- ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説
- 『MONSTER COMIC 怪獣伝説』に収録。
実写映画等
- TVO 恋愛犯罪映画(監督:太田達也)
- 惨劇館(監督:御茶漬海苔)
- 惨劇館 夢子(監督:久保山努 )
- 惨劇館-ブラインド-(原作・脚本・監督:御茶漬海苔)
- 古賀新一、伊藤潤二との共同プロジェクト「古潤茶」の1作品
- 姫 一人の少女の物語(監督:藤井道人)
- 作者本人も俳優として出演している。
CD
- あぁ御茶漬の唄 (2010年8月4日発売、唄:まついえつこ) - 映画『御茶漬海苔の惨劇館』の主題歌CD。ボーナストラックに自らが熱唱する特別ヴァージョンも収録。
作詞
- 凍りの都市(Hippies/小泉今日子)
関連人物
- 富士鷹なすび
- アシスタントをしていた関係で、「リーンカーネーション」の巻末に作品解説を書いてもらっている。
- えびはら武司
- アシスタントをしていた。
- 犬木加奈子
- 親交がありイベントに共同参加することもある。
外部リンク
- 御茶漬海苔の館(公式サイト)
- 旧公式サイト
- 御茶漬海苔 怪奇ブログ
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/11/07 04:42 UTC (変更履歴)
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