カトキハジメ : ウィキペディア(Wikipedia)

カトキ ハジメ(1963年12月3日 - )は、日本のメカニックデザイナー、イラストレーター。埼玉県出身。

『ガンダム』シリーズなどのアニメ作品や『電脳戦機バーチャロン』『スーパーロボット大戦』シリーズなどのゲームのメカニカルデザインを手がけるほか、イラストレーターとしてCG作品集『GUNDAM FIX』などを発表している。また、それらの派生商品であるプラモデルやアクションフィギュアなどの玩具の監修・プロデュースを担当したり、アニメ作品の監督・演出を手掛けたりなど、多彩な活動を行っている。

人物

大学で機械工学を専攻。趣味が高じて在学中より雑誌等のイラストレーションを描いたり漫画家のアシスタントをしたりするようになる。

1987年、素人時代に模型雑誌モデルグラフィックスの連載企画『ガンダム・センチネル』で手掛けたメカニックデザインやSF設定で一躍脚光を浴びる。その後、サンライズやバンダイの本家のガンダムシリーズのメカデザインやデザインのリファイン(通称"カトキ版")を手掛けるようになる。以降、同シリーズのプラモデル(ガンプラ)のコンセプトデザインを担当するなど、一貫して関わり続けている。

『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』においては、河森正治がデザインを行った前半の主役機ガンダム試作1号機の、機構部分などのデザインを担当した際に自らの観点で修正(リファイン)を行い、その延長として後半の主役機のガンダム試作3号機(GP03)等、大半をデザインした。オリジナルである河森の試作1号機について「デザインはあまり好きじゃないけど」「(カトキハジメの主観で、特にガンダムという作品において既存のものから浮いたデザインは)メカデザイナーの自己満足であってファンは喜ばないと思います」とコメントをしているキネマ旬報別冊 動画王Vol.05 1998年6月10日号。。その主張は、既存作の『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』用に起こされたメカニックデザインを、『ガンダム・センチネル』『機動戦士ガンダム0083』中に取り入れる試みなどにも現れている。

仕事はメカニックデザインが中心ではあるが、雑誌のイラストレーションやパッケージアートを描いたり写真撮影を行ったりすることもある。またメカだけでなくキャラクターの画稿を描くこともある。活動の場をプロに移してからはリアル志向のメカ・人物以外の画風を披露する事は稀だが、同人作家時代の『超時空要塞マクロス』のオペレーター三人娘の水着カット等、『電脳戦機バーチャロン』のCDジャケットに女性型メカのフェイ・イェンの擬人化イラスト、『涼宮ハルヒの憂鬱』のアンソロジー出版物にイラストを描く等、その芸の幅はパブリックイメージよりも広い。

2013年に短編アニメ4本で構成されるオムニバス映画『SHORT PEACE』の中の1本「武器よさらば」で初めてアニメ監督を務めた。また、2014年7月から上映・発売された『ガールズ&パンツァー』OVA「これが本当のアンツィオ戦です!」では、絵コンテで参加した。

ガンダム関連ではアレンジワークが多い事から、オリジナルのデザイナーである大河原邦男と対比されることが多い。主役機デザインコンペで『機動戦士Vガンダム』は採用されたが、続く『機動武闘伝Gガンダム』『新機動戦記ガンダムW』では大河原のデザインが採用された。 『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』では、作品の主要支持層である女性に対してデザインの方向性についてアンケートを取るなど、それまでには無かったアプローチを試みた。

作風

現実の兵器・銃器や航空機、宇宙船などの特徴を採り入れた、情報量の多いメカデザインを得意とする。工業製品的と評される作風は、パブリックな記号をデザインに取り込む事でフィクション性を低くする為の手法としている。

ガンダムの原作者富野由悠季からは、Vガンダムのデザインワークに対し「彼の絵の晴れやかなルックスがあったおかげで、救われた」「エンジェル・ハイロウのデザインを彼にまかせたらもっといい形になっていたでしょう」ササキバラ・ゴウ「第3部 Vガンダムという戦い 富野由悠季インタビュー」『それがVガンダムだ―機動戦士Vガンダム徹底ガイドブック―』銀河出版、2004年2月7日、、165-166・184頁。と評価する一方、「旧来のガンダム的なものに汚染されている」「オーバーデコレーションにしかならない」との酷評もある。同監督作品の∀ガンダムにカトキの方から参加の意向を伝えたものの断られた『聖戦士ダンバイン・ノスタルジア』富野由悠季vs湖川友謙対談。。

漫画家の吉崎観音、作家の福井晴敏、イラストレーターの新川洋司等は彼のファンを公言している。柳瀬敬之や藤岡建機、瀧川虚至など彼の作風の影響を受けたデザイナーも数多い。

カトキ立ち

アニメ作品におけるメカニックデザイナーという役職を確立した大河原邦男が設定画で描くロボットのポージングが「ガワラ立ち」と呼ばれるのに対し、カトキハジメのものは「カトキ立ち」と呼ばれる。彼の描くロボットは、常に肩幅より少し広い程度に両脚を開き、左足の爪先を画面の右斜め下方向、右足の爪先を画面の左斜め下方向に向け、軽く両肘を曲げて拳を握り、軽く肩を怒らせながら胸を張って正面を見据える姿で描かれる。この時の視点は真正面ではなく多少横にズレた位置であり、ロボットの顔はいわゆるカメラ目線である。カトキハジメの設定画に限らずアニメのイラストやプラモデルのディスプレイでも広く用いられている。ちなみに本人は「カトキ立ち」について「(ロボットが)最もスタイリッシュに見える素立ち姿として」考えたものであるという。既存のロボットの設定画において、足首の立体感・接地感が表現されていない場合が多かった事に対する不満がその原点としている。

カトキ版(ver.Ka)

『機動戦士ガンダム』など既存作品に関するイラストの内、その本来の設定イラストや劇中イメージとは異なり、カトキハジメが作品内の歴史や系統を重視し「本来こうなるべきではないか?」といった主観に基づき描いた二次創作物を「カトキ版」・「ver.Ka」(version Katoki)と呼ぶ。

「ver.Ka」という名は、B-CLUB製のガレージキットで用いられたのが発祥である。当初は「ガンダム・センチネル0079版」として発売予定だったが、当時センチネルの版権の関係でバンダイとモデルグラフィックスが揉めており、この名称が使えなかったための措置だった。それ以降は、バンダイのマスターグレード(以下MG)シリーズやGUNDAM FIX FIGURATIONでも使用されている。

関わった作品・商品

アニメーション作品

公開年タイトルクレジット備考
1991-1992機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORYメカニカルデザイン、設定協力、原画OVA
1992機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光メカニカルデザイン、原画、設定協力映画
1993-1994機動戦士VガンダムメカニカルデザインTV
1993機動警察パトレイバー 2 the Movieメカニックデザイン映画
1994ザ・コクピット「音速雷撃隊」メカニックデザインOVA
1994-1995機動武闘伝GガンダムメカニカルデザインTV
1994おいら宇宙の探鉱夫原画OVA
1995-1996新機動戦記ガンダムWメカニカルデザインTV
1995-1997銀河お嬢様伝説ユナメカニックデザインOVA
1996-1999機動戦士ガンダム 第08MS小隊メカニカルデザインOVA
1996機動新世紀ガンダムX設定協力TV
1997新機動戦記ガンダムW Endless WaltzメカニカルデザインOVA
1998新機動戦記ガンダムW Endless Waltz 特別篇メカニカルデザイン映画
機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ミラーズ・リポートメカニカルデザイン映画
2002機動警察パトレイバー WXIIIメカニックデザイン、絵コンテ協力映画
2004SDガンダムフォースSDデザインTV
2004-2005ケロロ軍曹オープニング(1stシーズン)TV
2004、2006機動戦士ガンダム MS IGLOOデザインワークスOVA
2005劇場版 機動戦士ΖガンダムIII A New Translation -星の鼓動は愛-設定協力映画
スーパーロボット大戦ORIGINAL GENERATION THE ANIMATIONメカ原案OVA
2006超劇場版ケロロ軍曹メカデザイン映画
2006-2007スーパーロボット大戦OG ~ディバイン・ウォーズ~メカデザインTV
2006N・H・Kにようこそ!第24話 デザインワークスTV
2009ケロ0 出発だよ! 全員集合メカデザイン映画
2010-2014機動戦士ガンダムUCメカニカルデザインOVA
2010-2011スーパーロボット大戦OG -ジ・インスペクター-メカニックデザイン、原画TV
2013SHORT PEACE「武器よさらば」監督、脚本、メカニカルデザイン、絵コンテ映画
2013-2016コードギアス 亡国のアキトメカデザイン(第2章より)OVA
2014ガールズ&パンツァー これが本当のアンツィオ戦です!絵コンテ、作画協力、素材提供OVA
2015アイカツ!第122話「ヴァンパイアミステリー」絵コンテTV
2015-2018機動戦士ガンダム THE ORIGINメカニカルデザイン、原画、絵コンテ、演出OVA
2015ガールズ&パンツァー 劇場版素材提供映画
2015-2017機動戦士ガンダム サンダーボルトアニメーションメカニカルデザイン、絵コンテOVA
2016メカニカルデザインTV
機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKYアニメーションメカニカルデザイン映画
2017機動戦士ガンダム サンダーボルト BANDIT FLOWERアニメーションメカニカルデザイン映画
2018機動戦士ガンダムNTメカニカルデザイン映画
2019機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星メカニカルデザイン、エンディングスタッフ、絵コンテ、演出、原画TV
2020ポチっと発明 ピカちんキット第114話 ポチローロボデザイン、絵コンテ、原画TV
2021機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイメカニカルデザイン映画
2022デリシャスパーティ♡プリキュア第5話 絵コンテTV
機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島メカニカルデザイン映画
映画 デリシャスパーティ♡プリキュア 夢みる♡お子さまランチ!サブキャラクターデザイン映画
ヤマノススメ Next Summit第3話 ショートストーリ#03  脚本・絵コンテTV

書籍

発表期間 タイトル クレジット 備考
1987-1990ガンダム・センチネル設定、イラスト、漫画「かときはじめ」名義。
1990ガンダム・センチネル0079設定、イラスト「かときはじめ」名義。
1992機動戦士ガンダム0083口絵イラスト著:山口宏
1994-1997機動戦士クロスボーン・ガンダムデザイン協力原作:富野由悠季、漫画:長谷川裕一、原案:矢立肇
1988灼熱の竜騎兵挿絵著:田中芳樹月刊ドラゴンマガジン1988年5月号-10月号掲載版のみ担当。
19926億kmの燐光イラスト、設定著:宇童ケン
1994機動戦士Vガンダム5 エンジェル・ハィロゥイラスト著:富野由悠季
1995-1998GUNDAM FIX
2001KATOKI HAJIME DESIGNS & PRODUCTS
2002-2004機動戦士クロスボーン・ガンダム外伝デザイン協力漫画:長谷川裕一、原作:矢立肇、富野由悠季
2003カトキハジメデザインアンドプロダクツアプルーブドガンダム
2006-2007機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人デザイン協力漫画:長谷川裕一、原作:矢立肇、富野由悠季
2007-2009機動戦士ガンダムUCメカニックデザイン著:福井晴敏、原案:矢立肇、富野由悠季角川コミック・エース版の表紙イラストも担当。
2007トニーたけざきのガンダム漫画漫画:トニーたけざきシャア専用ボールのデザインを担当。
2010-2016新機動戦記ガンダムW Frozen Teardropメカニックデザイン著:隅沢克之、原案:矢立肇、富野由悠季単行本の「装画」も担当。
2010機動戦士ガンダムUC カトキハジメ メカニカルアーカイブス
2010-機動戦士ガンダムUC バンデシネメカニックデザインストーリー:福井晴敏、漫画:大森倖三
2011-2013トップをねらえ!RX-7のリファインデザインを担当。
2012-2016機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴーストデザイン協力漫画:長谷川裕一、原作:矢立肇、富野由悠季
2013-2014機動戦士ガンダム U.C.0094 アクロス・ザ・スカイメカニックデザイン漫画:葛木ヒヨシ、シナリオ:関西リョウジ
2016とある魔術の電脳戦機イラスト著:鎌池和馬
2016-2019機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島メカニカルデザイン漫画:おおのじゅんじ
2018-機動戦士ガンダムNTメカニックデザインストーリー:福井晴敏、コミカライズ:大森倖三
2021-機動戦士クロスボーン・ガンダムX-11デザイン協力漫画:長谷川裕一、原作:矢立肇、富野由悠季

ゲーム

発表年 タイトル クレジット 備考
1992グラディウスII「かときはじめ」名義。X68000版説明書用イラストを担当。
超攻合神サーディオンメカニックデザイン
1994ポリスノーツメカニックデザイン
1995第4次スーパーロボット大戦メカニックデザイン
機動戦士ガンダムガンダム&ザクコクピットデザイン
1995-電脳戦機バーチャロンメインメカニックデザイン
1996スーパーロボット大戦外伝 魔装機神 THE LORD OF ELEMENTALメカニックデザイン
新スーパーロボット大戦オリジナルメカデザイン
1997スーパーロボット大戦Fオリジナルメカデザイン
機動戦士Ζガンダムパッケージデザイン
1998リアルロボッツファイナルアタックメカニックデザイン
スーパーロボット大戦F完結編メカニックデザイン
スーパーロボットスピリッツメカニックデザイン
1999スーパーヒーロー作戦メカニックデザイン
スーパーロボット大戦コンプリートボックスオリジナルメカデザイン
リアルロボット戦線メカニックデザイン
2000スーパーロボット大戦αメカニックデザイン
2001スーパーロボット大戦α外伝メカニックデザイン
2002スーパーロボット大戦ORIGINAL GENERATIONメカニックデザイン
2003第2次スーパーロボット大戦αメカニックデザイン
機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙メカニカルデザイン
2005スーパーロボット大戦ORIGINAL GENERATION2メカニックデザイン
第3次スーパーロボット大戦α 終焉の銀河へメカニックデザイン
2006-機動戦士ガンダム 戦場の絆
2007ガンダム無双オリジナルモビルスーツデザイン
スーパーロボット大戦OG ORIGINAL GENERATIONSメカニックデザイン
スーパーロボット大戦OG外伝メカニックデザイン
2008ガンダム無双 Specialオリジナルモビルスーツデザイン
ガンダム無双2オリジナルモビルスーツデザイン
2009機動戦士ガンダム戦記
2010スーパーロボット大戦OGサーガ 魔装機神 THE LORD OF ELEMENTALメカニックデザイン
ガンダム無双3オリジナルモビルスーツデザイン
2012第2次スーパーロボット大戦OGメカニックデザイン
2013スーパーロボット大戦OG ダークプリズンメカニックデザイン
2018電脳戦機バーチャロン×とある魔術の禁書目録 とある魔術の電脳戦機メカデザイン
2020スーパーロボット大戦DDウイングガンダムゼロリベリオンのカラー設定を担当。
2021スーパーロボット大戦30オリジナルメカデザイン

立体物

  • ビームライフル
Vガンダムのなりきり玩具アイテム。玩具用のハイディテール画稿が存在する。
  • ガンプラ(一部商品のコンセプトデザイン及び監修)
    • マスターグレード シリーズ
    • マスターグレード・Ver.Kaシリーズ
    • ハイグレード・ユニバーサルセンチュリー シリーズ
    • リアルグレードシリーズ
  • GUNDAM FIX FIGURATION(コンセプトデザイン、監修)
  • ZEONOGRAPHY(コンセプトデザイン、監修)
  • KERORO FIX FIGURATION(コンセプトデザイン、監修)
  • オリジナルドール KATOKI DESIGN momokomono(PetWORKS)
  • イメージセンサーマウス M-MAPP1KHシリーズ(エレコム)
  • 福井晴敏6ステイン付属ピンズ

その他

  • 劇場版機動戦士ガンダムLDジャケットイラスト
  • ファミリーソフト機動戦士ガンダムジャケットイラスト
  • エンジェルジグソーパズル機動戦士ガンダム0083
  • エンジェルジグソーパズル機動戦士Vガンダム
  • バンダイカードダスフュージョン戦記ガンダムバトレイヴ
  • 2007年シーズンのSUPER GTに出場していたBANDAI DUNLOP SC430のカラーリング
第5戦からガンダムカラーとなり、エントリー名は「BANDAI 00 DUNLOP SC430」となった。

注釈

出典

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/03/12 10:50 UTC (変更履歴
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