オクターブ・ミルボー : ウィキペディア(Wikipedia)
オクターヴ・ミルボー(Octave Mirbeau, 1848年2月16日カルヴァドス県トレヴィエール - 1917年2月16日パリ)は、フランスの作家、劇作家。
略歴
ジャーナリストとして出発、1899年に小説『責苦の庭』を発表して注目をあびる。続いて1900年には『小間使の日記』をあらわし、1903年には戯曲『ビジネスはビジネス』を書き、自然主義作家としての地位を確立した。また、モネやロダンとも交友をふかめ、美術批評においても一家をなした。『小間使の日記』がルイス・ブニュエル監督によって映画化されると(1964年)、20世紀後半になって、世紀末作家として再評価され、初期の作品『セバスティアン・ロック』、『ジュール神父』などもあいついで再刊されている。またゴッホを描いた新聞小説『天空にて』(1892年 - 1893年)も注目される。
「良識家」やあらゆる偽善者の目からすれば、社会にその醜い真実を直視させたこと、そして自ら自己嫌悪に陥らせたことが彼の「罪」であった。真実と正義の要求に反するものすべてに反発することによって、彼はこの世の権力者にとって具合の悪いものになった。権力者たちはその点で彼を死んだあとまで追及したのである。ミルボーは40年にわたって俗悪なる愚昧な民衆がひたすら大事にしようとしてきたものを残酷な喜びをもって暴露し、焼印をおし、いためつけてきた。
それはデマゴーグであり、政治ゴロであり、投資家であり、事業家であり、証券市場のごろつきであり、産業界の黒幕だった。またそれは教会の「精神的圧制者」であり文芸美術のいかさま師だった。あるいはそれは不健康なマスコミの操り人形であり、ペテン師だった。またそれは貧しいものを食い物にしてふとる金持ちであり、哀れみの心も待たなければ、「芸術の精神」もまた個人的な考えもなく、精神的知的満足のために、たんに良識にぬくぬくと安住しているものたちだった。それは病んだ社会の産物であり、そこではすべてが良識と正義の反対に動いてゆくのだった。そこでは「民主主義」と「共和制」の名のもとに、少数の不徳義漢が臆面もなく大衆を蛆虫のように収奪し、蹂躙し、痛めつけ、粉砕してゆくのである。それは才能を平均化してしまう社会である。芸術を「人気投票」化してしまい、人間も物事も、才能も名誉もすべて、俗悪な商品にかえ、需要と供給の掟に従わせてしまうものである。人間精神の廃墟のうえにそれは非人間的な顔をした資本主義、黄金の子牛の祭壇をうちたてる。それが地上のありとあらゆるところで勝ちをおさめ、世界をおそるべき「責苦の庭」と化しているのである。
作品
- Le Calvaire (1886).
- L'Abbé Jules (1888).
- Sébastien Roch (1890).
- Dans le ciel (1893-1989).
- Les Mauvais bergers (1897).
- Le Jardin des supplices (責苦の庭) (1899).
- Le Journal d'une femme de chambre (小間使の日記) (1900).
- Les 21 jours d'un neurasthénique (1901).
- Les affaires sont les affaires (ビジネスはビジネス) (1903).
- Farces et moralités (1904).
- La 628-E8 (1907).
- Le Foyer (1908).
- Dingo (1913).
- Contes cruels (1990).
- L'Affaire Dreyfus (1991).
- Lettres de l'Inde (1991).
- Combats esthétiques (1993).
- L'Amour de la femme vénale (1994).
- Combats littéraires (2006).
- Correspondance générale (2003 - 2005 - 2009).
伝記研究
- ピエール・ミシェル, Octave Mirbeau, l'imprécateur au cœur fidèle, 1990.
- Cahiers Octave Mirbeau, 1994-2014.
日本語訳
- 『責苦の庭』 篠田知和基訳、国書刊行会、1984年
- 『恐ろしい話』 ちくま文学の森:筑摩書房、1988年-短編「ごくつぶし」
- 『フランス幻想文学傑作選3』 白水社、1983年-短編「呪われた制服」
- 戦前では、『小間使の日記』 岡野かをる訳、春陽堂、1932年
- 『近代劇全集』第一書房、1927年-戯曲『事業は事業』
- 『メイドの日記』高橋昌久訳、京都緑社、2023年
外部リンク
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