【世界の映画館めぐり】大阪・プラネットプラスワン レトロでアナログ、秘密基地のような空間でフィルム上映と生演奏を楽しむ
2025年12月28日 09:00

映画.comスタッフが訪れた日本&世界各地の映画館や上映施設を紹介する「世界の映画館めぐり」。今回は大阪の個性派ミニシアター、PLANET+1 プラネットプラスワンをご紹介します。
配信サービスが普及し、古今東西のたくさんの映画が自宅で、そして小さなタブレットでも見られるようになった現在、映画館に行く理由は、作品鑑賞の価値をより高めてくれるリアルな体験を得るため……ここ数年、そんな風潮を感じます。最新技術搭載のハイスペックな大スクリーンや音響など最新の上映機材を備えたシネコンも話題を集めますが、ここプラネットプラスワンの売りはその真逆。クラシック作品、フィルム上映にこだわり、時に無声映画では生演奏も楽しめる……というレトロでアナログな名画座です。

筆者がこちらを訪れたのは今年9月。休暇で大阪に滞在しており、たまたま予定が空いたので、映画でも見ようと映画.comで大阪の上映劇場を検索したところ、ヒットしたのがこちらの劇場のプログラム「前衛映画入門 ダダイズムからシュールレアリズムの時代 パリ・アヴァンギャルドとフォトジェニーと幻想1927-28」でした。上映作品はジャン・エプスタイン監督「三面鏡」(1927)と「アッシャー家の末裔」(28)の2本立てです。

プラネットプラスワンは、大阪メトロ谷町線、中崎町駅からすぐのビルの2階にあります。上映時間近くに到着し、「Cinema」と書かれたビル入口のドアを開けると急な階段があり、何かのアジトを訪問するような気分で、一段一段上ります。両壁にはルイーズ・ブルックスやマルクス兄弟などクラシック映画の印象的なスチル、ポスターが貼られており、なんだかタイムスリップをしているような気分になります。



階段を登り切った正面に、チケット販売スペースがあり、スタッフの方が対応してくださいます。雑居ビルのワンフロアという限られた空間ゆえ、待合スペースなどはありませんが、カプセル式ドリップのコーヒーが購入できます。チケットを買って、上映会場に入場。観客席は25席。木製の座席にクッションが置かれ、後方、壁横、前方スクリーン前にスピーカーが設置されています。これから一体どんな映画が上映されるのか……と手作り感あふれる、秘密基地のような雰囲気に期待が高まりました。


上映前に、館長の富岡邦彦さんからの作品解説が入ります。「三面鏡」は三人の女性と恋に落ちる責任感のない男の末路が描かれる物語。「アッシャー家の末裔」は、恐怖小説の大家、エドガー・アラン・ポー原作、ルイス・ブニュエルも脚本に参加したホラー作品です。時折字幕で場面解説は入りますが、基本的に登場人物たちのセリフはないので、役者の演技や映像効果から自分で物語を想像しながら物語を楽しみます。フィルムならではの質感、デジタル技術がない時代のアナログなSFXも興味深いものでした。


そして、映画を盛り上げるのが、プロのピアニストの生演奏です。サイレント映画の楽士として、物語に即興で音楽をつけていったのは鳥飼りょうさん。日本全国の上映会で活躍されているので、ご存じの方も多いことでしょう。この日は、エリック・サティなど誰もが良く知る作曲家による名曲のフレーズをはじめ、オリジナルの劇伴曲が奏でられました。上映ごとの演奏ですから、まったく同じ回はありません。1800円(一般料金)でこんな贅沢な体験ができるなんて! と感激です。ひとりで楽しんで、その後背景や物語をインターネットで検索して深堀りするのもよし、セリフがないからこそ、あのシーンはどんな意味だったのだろう? と同伴者と語り合うのもよしですね。

この生演奏付き無声映画上映企画以外も、プラネットプラスワンでは、長年、実写映画や映画祭のプロデューサーを務める館長の富岡さんがセレクトするクラシック映画(音声あり)が多数上映されています。映画史をしっかり学びたいシネフィルはもちろんのこと、フィルム上映やこれまで知らなかった古い映画を見てみたい映画ファンには是非訪れてほしいスポットです。
ビル1階には居心地のよさそうなカフェがあり、近隣には、個人経営の個性的なレストランやお店が立ち並ぶレトロな街並みも魅力。普通の観光とは一味違った、大阪の文化系スポットめぐりをしたい方にもお勧めの名画座です。
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