トランスジェンダーの当事者キャスティングにこだわった「ブルーボーイ事件」 主演・中川未悠「俳優業を続けることによって、誰かの光になれたら」
2025年11月11日 14:00

かつて日本で実際に起こった、性別適合手術(※当時の呼称は性転換手術)をめぐる事件をもとに描く映画「ブルーボーイ事件」の主演を務める中川未悠と飯塚花笑監督が11月10日、東京・丸の内の外国特派員協会で行われた記者会見に出席した。
本作は、高度経済成長期の日本で実際に起きた「ブルーボーイ事件」を題材に、性別適合手術の違法性を問う裁判に関わった人々の姿を描いた社会派ドラマ。主演を務める中川は、トランスジェンダー女性を集めたオーディションに挑み、主役を勝ちとった。
そのキャスティングについて「この事件は実在するものなので、当時を生きたクィアの方々を描くにあたり、当事者の生の声を尊重したいと思いました」と語る飯塚監督は、「労働環境としても、性的マイノリティの俳優がキャスティングされる機会はまだ多くありません。だからこそ、この作品が当事者の方々がしっかりと活躍できる場、そのための“土壌”を用意することを強く意識しました」と振り返る。

本作にはドラァグクイーンのイズミ・セクシーや、シンガーソングライターで女優の中村中といった多彩な俳優陣が集結。撮影現場の雰囲気について、中川は「撮影中はこの映画を皆さんに観ていただきたいという思いで真剣に撮影していたんですが、撮影が終わると、食事やお酒に行くのが楽しみでした。チームワークが良かったのも、そうしたコミュニケーションがあったからこそだと思います」と笑顔で振り返った。
演技経験がないなか、本作で主演を務めた中川には「今後も女優として活動するつもりは?」という質問も。それには「この映画を通して、お芝居の難しさや楽しさに気づかせていただけたので、今後も続けていきたいと思っています」と返答した中川。「これまで性的マイノリティの方々は、コメディ的な扱いとなることが多かったので。わたし自身が俳優業を続けることによって、誰かの光になれたらいいなと思いますし、わたし自身が芝居に力を入れることで、それを目指そうとしてくださる人が増えて、世の中が変わっていってくれたらいいなと思うので。これからも頑張りたいと思います」と意気込んだ。

また劇中で使用されている言葉について、映画の最初の方では現代では使用されないような差別的で侮辱的な言葉が使用されていたが、映画が終盤に向かうにつれて、差別的な言葉から現代でも使用されている言葉に置き換わるようになっていた、という指摘も。
そのニュアンスについて質問された飯塚監督は「それはこの映画の核心に迫る質問だと思います」と切り出すと、「言葉の表現に関しては、当時の週刊誌や新聞紙などでかなり調べました。当時の特徴としては、トランスジェンダーとゲイの境目がなかったということがあります。それは自分たちで表明することがまずなかったという時代背景もあったと思います。当時は“ゲイボーイ”という言い方で一緒くたにされていたんです。これは非常に当時を物語る部分だと思い、当時の時代背景を尊重してその言葉を使用しました」と説明する。

それを踏まえた上で後半の裁判シーンについて、「これは実際の裁判の流れでもそうなっているんですが、裁判のなかで“性的指向”の問題と“性的自認”の話は分けるべきだというようなトピックが出てくるんです。こういったある意味、画期的な議論が当時の裁判のなかで行われていた、ということを表現したいと思い、言葉のチョイスの変化を映画のなかでも描いています」と明かした飯塚監督。
また会見中には、今後、LGBTQ+の人々が暮らしやすくなるために「どんな法律があれば良いと思うか?」といった問いかけも。それに対して飯塚監督は、「法律が新たに生まれるというよりも、今、わたし自身が問題点として考えているのが、今まさに議論の渦中にある『性同一性障害特例法』です。これは肉体の一部を変えないと戸籍が変更できないという要項なのですが、この点に関してはなるべく早く改善をしてもらいたいと思っています」と訴えるひと幕もあった。
映画「ブルーボーイ事件」は、11月14日より全国公開。
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