アリ・アスター監督「観客が求める“安心”を拒否する。それが私のスタイル」 “混沌”の新作を語る
2025年11月7日 19:00

「ヘレディタリー 継承」「ミッドサマー」「ボーはおそれている」で知られるアリ・アスター監督の最新作「エディントンへようこそ」のトークイベントが10月31日、Dover Street Market Ginzaで行われ、アスター監督が出席した。
カンヌ国際映画祭でコンペティション部門出品作であり、前作「ボーはおそれている」に続くアスター監督とホアキン・フェニックスのタッグ作。物語の舞台は2020年、ニューメキシコ州の小さな町、エディントン。コロナ禍で町はロックダウンされ、息苦しい隔離生活の中、住民たちの不満と不安は爆発寸前。保安官ジョー(フェニックス)は、IT企業誘致で町を“救おう”とする野心家の市長テッド(ペドロ・パスカル)と“マスクをするしない”の小競り合いから対立し「俺が市長になる!」と突如、市長選に立候補する。ジョーとテッドの諍いの火は周囲に広がっていき、SNSはフェイクニュースと憎悪で大炎上。同じ頃、ジョーの妻ルイーズ(エマ・ストーン)は、過激な動画配信者(オースティン・バトラー)の扇動動画に心を奪われ、陰謀論にハマっていく。
(C)2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.第38回東京国際映画祭でジャパンプレミアが行われた「エディントンへようこそ」。同イベントは、プレミアの翌日に開催された。コム デ ギャルソンの川久保玲がディレクションを手がけ、コム デ ギャルソンの全ブランドに加え、世界のメゾンブランドからストリートブランドまで独自の目線でセレクトされたアイテムが並ぶ「Dover Street Market Ginza」において、アスター監督はMCや観客とのQ&Aに参加。アスター監督は「日本のみなさんの反応が、めちゃくちゃ気になってるんです!」と切り出した。
アメリカでは7月、カンヌでは5月に上映された本作。「反応は真っ二つ。でもそれが狙いでした」と話すアスター監督。登場人物たちは互いに相手の話を聞かずに声高に叫び会話が噛み合わない。そうしている間にもっと大きな問題が襲い掛かってくる。まるでSNSのタイムラインをそのまま映したようなカオス――“それこそが現代の縮図だ”とアスター監督はニヤリと笑う。
(C)2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.「ヘレディタリー 継承」の恐怖、「ミッドサマー」の悪夢、「ボーはおそれている」の不安。アスター監督の作品はしばしば“カオス”と表現されることがある。「なぜあなたの映画にはカオスが映るのか?」という問いには、アスター監督はこう答えた。
Instagramの無限スクロール、Xの炎上。日常に溢れるカオスを、スリラー、陰謀論、ブラックコメディとして魅せながら、物語は誰もが想像しない結末にたどり着く。
(C)2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.「現代の風刺でもあるのに笑える、笑えることで共感が生まれた」という感想には「芸術には2種類あります。答えを出すか、現実を映すか。『エディントンへようこそ』は後者です」「ニュースが速すぎて消化できない。希望が見えないのは当然」と本作に現代人が共感することに同意。「この映画が意味を持つなら、時代の“病的”な精神を映していること。恐怖や孤独を共有することで、『ひとりじゃない』と思えるかもしれません」と語った。
「エディントンへようこそ」は、12月12日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
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