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「アルトマン作品に影響を受けた」ショパン国際ピアノコンクールの舞台裏に迫るドキュメント「ピアノフォルテ」監督インタビュー

2025年9月26日 15:00

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ヤクブ・ピョンテック監督
ヤクブ・ピョンテック監督
(C)Pianoforte

多くの世界的ピアニストを輩出してきた、世界最古かつ最高峰の舞台であるショパン国際ピアノコンクールに挑む若きピアニストたちに迫ったドキュメンタリー「ピアノフォルテ」が公開された。

画像2(C)Pianoforte

ショパンの出身国であるポーランドの首都ワルシャワで、5年に1度開催されているショパン国際ピアノコンクール。世界中の若きピアニストたちがその頂点を目指し切磋琢磨する。本作は、反田恭平さんと小林愛実さんという2人の日本人が入賞を果たした2021年・第18回大会の舞台裏を追い、ポーランド、ロシア、中国、イタリアなど国籍も育った環境も異なる6人の出場者をとらえた。ヤクブ・ピョンテック監督のインタビューを映画.comが入手した。

――まず、本作製作の経緯を教えてください。

最初にお伝えしたいのは、私自身ミュージシャンではないですし、正式に音楽の教育を受けたことはありません。学生時代、学割があるから交響楽団のコンサートを聴きに行った、クラシックとはそのような出合いでした。その後映画をつくるようになり、フリーランスとしてさまざまな場所へ出入りするようになり、フレデリック・ショパン研究所やショパン国際ピアノコンクールを取材している人々と知り合って、私もバックステージに入ることになりました。

コンクールについてのドキュメンタリーは1971年に製作された「Pierwszy. Szósty」という短編が最後で、それから50年間何も作られていないので、今の様子を映したいと思いました。また、コンクールや音楽について描くというよりは、あくまでも若者たちが大人になる過程、その背景を扱いました。

画像3(C)Pianoforte

映画のより明確なアイディアは2016年、第17回コンクール開催(2015年)の翌年に生まれました。私はバックステージに出入りすることができる環境にあったので、この時にぜひ映画を撮ってみたいテーマだと思い、ドキュメンタリー撮影の話を持ちかけたところ、関係者の皆さんともう顔馴染みというのもあり、許諾を得ることができました。ショパンコンクールの主催者の人もプロデューサーとして参加されています。

資金は、ショパン研究所、コンクールを開催する地元のファンド、テレビ局などから集めました。また、本作はリスクが高い作品――つまり、コンテスタントたちを撮影しても、誰がどこまで勝ち進むか分からないので――ですので、最初に撮影、編集をおこない、ピッチができる段階になってから出資の交渉をする、というやり方でも集めました。

画像7(C)Pianoforte
――新型コロナウイルスの流行時、制約なども本当に多く大変だったと思います。撮影をするにあたり、基本的には出場者のほぼ全員に声をかけ、そのうち4~50人に監督が絞って撮っていったとのことですが、実際に撮影をしていて難しかったことや、カメラがまわっていないところで印象的だった出来事などありますか。

コロナの影響で1年間延期しての開催だったので、映画づくりも正直あまりに大変でやめようと思った時期もありました。これだけ複雑な感情を描く作品をつくろうとしている中で、マスクで顔の半分を隠されているような状況でつくることができるのだろうかと。でもプロデューサーのマチェクが、ここまで続けたのだからやろうと言ってくれ、その彼の決断が良かったと今になって思います。みな、あの時期は対面のライブで演奏を見るということに楽しみを見出していて、特別な意味があったコンクールでした。大変だったことは、クルーがコロナウイルスに感染していないか常にテストすること、また、もし私たちによってコンテスタントが感染してコンクールに出られないというようなことになったら、大変な事態になってしまうので、本当に気をつけていました。

画像4(C)Pianoforte

本作はワルシャワのドキュメンタリー映画祭でプレミアをおこなったのですが、エンドクレジットが終わった後にステージにグランドピアノが現れ、マルチン・ヴィエチョレクが登場して、本来コンクールで弾く予定だった曲を演奏したのは思い出深いです。映画が完成したという感じでした。また、中国人のピアニストが空港で演奏し、泣いてしまった女性が劇中映っていたと思いますが、あの後カメラを止めて話を聞いたところ、彼女はポーランド出身ですが移住していて、久しぶりに帰ってきたら空港でショパンが流れていて、色々込み上げて泣いてしまったそうです。フィクションの脚本でこのようなシーンを書いたら陳腐になってしまうかもしれないですが、現実の世界だと、本当にこういうことが起こるんですよね。

画像5(C)Pianoforte
――ショパンコンクールやショパンの音楽は、ポーランドの人々にとってどのような存在なのでしょうか?

ポーランドには、ショパンが至るところに溢れています。特急電車に乗ると「ノクターン」が流れてきたり、名前を冠した空港があったり。同時に、この5年に一度のコンクールがあることにより、ポーランド人はあまり強くないサッカーのことを忘れて、その時はショパンに熱中します(笑)。個人的には5年に一度と言わず、もっと頻繁にコンクールがある方がサッカーに煩わされなくて済むのではと思っています。しかし、高い音楽性があると同時に、基本的なレベルにおいては音楽の教育が行き届いていないと思います。一般的にきちんとした音楽教育が行き届いていない一方で素晴らしいレベルの人たちもいる、この溝やばらつきが課題だと思います。私は悪い音楽教育を受けた例の一人で、楽器も弾けないですし、歌うことも怖いレベルです。

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――ピョンテク監督が好きな映画、好きな映画監督をぜひ教えてください。

今日の気分でいうと、好きな映画はミロス・フォアマン監督の「アマデウス」(84)です。フォアマン監督の作品は、どれも何度でも見たくなる名作ばかりですよね。ドキュメンタリーの映画監督では、私の恩師であるカジミェシュ・カラバス監督の、1958年に作られた「The Musicians (Muzykanci) 」という短編が名作です。マルチェル・ウォジンスキ監督の「89mm from Europe (89 mm od Europy) 」(93)は、非常に大きなものを描くためには、まずはディティールを詰めていくこと、という比喩に富んだ作品です。また、ポール・トーマス・アンダーソン監督も大好きで、彼の作品は毎年見直すように心がけています。「ピアノフォルテ」をつくるにあたっては、ロバート・アルトマン作品に大きな影響を受けました。

画像6(C)Pianoforte
――最後に日本の観客へ向けてメッセージ、映画の注目して欲しいところを教えてください。

まず、日本で公開されることがとても光栄です。先ほどポーランドでショパンがどのくらい愛されているかという話をしましたが、日本でも負けないくらいショパンは愛されていると思うので、みなさんに届くのが嬉しいです。この映画では、私たちは「負ける人」を描いています。人間は常に勝てるわけではない。負けるということを分かっていて、ではその状況にどう対応していくか、というテーマがあります。誰の人生においても、この連続ですよね。「負ける」という視点から描かれる物語が個人的に少ないと思っていたので、ぜひそのドラマを感じていただきたいと思います。

9月26日より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開中。

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