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妻夫木聡×大友啓史監督、不退転の決意と覚悟「たかが映画されど映画」【「宝島」インタビュー後編】

2025年9月19日 08:00

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妻夫木聡が主演を務める大友啓史監督最新作「宝島」(公開中)の“熱波”が、日本列島を駆け巡ろうとしている。その立役者である妻夫木と大友監督の胸にあるのは、「この作品をただの映画で終わらせたくない」という一念。作品の舞台である沖縄を皮切りに全国キャラバンをスタートさせた2人は、北海道まで20都市以上も訪れ、観客1人ひとりに熱い想いを直接届けてきた。そこまで衝き動かす原動力はどこにあるのか、その真意に迫るべくロングインタビューを敢行。今回の後編では、コザで暮らす妻夫木の親友である宮島真一さんの声などもお届けする。(取材・文/大塚史貴、写真/間庭裕基


■コザ在住、妻夫木聡の親友が語る20年越しの想い

俳優・妻夫木聡を語るうえで、欠かすことのできない作品のひとつに「涙そうそう」が挙げられる。言わずと知れた名作だが、コザが舞台になった今作で妻夫木の方言指導を担ったのが宮島真一さんだ。慈愛に満ちた眼差しを注ぐ宮島さんは現在、コザで映画館「シアタードーナツ」を経営しており、妻夫木との親交は現在も続いている。

宮島氏「20年以上のお付き合いで、当時から意気投合する部分がありましたし、その頃に交わした会話を忘れたことはありません。『いち役者、いち表現者として、もしまた沖縄に携わることがあったときにはぜひよろしく』『もしそういう仕事に順番が回ってこなかったとしても、沖縄のことをちゃんと見ていてほしいし、もし向き合うことがあったらできることをやってくれ』と、互いに酔っ払いながら話した記憶があります。

画像2写真提供:宮島真一氏

まさか『宝島』というド直球の作品で彼と再会できるとは、僕の中ではすごくロマンティックなことと感じています。20年ずっと一緒ではなくとも、『一緒に過去・現在・未来へ向き合っていこうな』と交わした想いが、根底で繋がっていたからこそだと思います」

本編を観た宮島氏は、「圧倒されました。あっという間の3時間11分でしたし、テンポも良くて『二度、三度観ないといけないな』と感じました」と興奮気味に話す。そのうえで、「これから大切になるのは『どう伝えるか』だと思います。先日、ショックだったのは……」とあるエピソードを紹介してくれた。

「『宝島』にも出て来る宮森小学校への墜落事故について、同じ地域に住む中学生と話をしたところ『知らなかった』と言われたことです。学校教育や平和学習で触れているはずなのに、フックになっていないと感じることがありました。『どう伝えるか』は大人や保護者としての責任であり、その役割を担う映画という存在は本当に大きいと思います。僕は、この“伝える”という行為を決して諦めません」


妻夫木聡大友啓史監督の「諦めない」姿勢
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宮島氏から聞いた話を妻夫木と大友監督に共有し、改めて2人にとって「諦めない」という姿勢について聞いてみた。

妻夫木「諦めない……。僕自身、グスクとも共通したことなんですが、やっぱり『映画』なんです。『たかが映画されど映画』。僕は、映画の力を信じたいんです。この映画を観終わると、自分の中の“熱”が確実にボワッと火がついて、命の鼓動みたいなものがドクンドクンと聞こえてくるはず。僕はもう、それでいいと思うんです。

僕らは映画というものを通して伝えていく。宮島さんは映画館を営みながら伝えている。映画という媒体を通して知ってもらえるならそれは凄いこと。1本の映画がもしかしたら世界を変えられるかもしれない。誰かの人生が変わることがあるかもしれない。1%でもその可能性があるのなら、それを信じて突き進みたい。その一択です。

画像4(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

目の前の“今”があるということは、当たり前じゃないんだよということはこれからも届けていかなければならない。『なんで生きているんだろう?』と考えてほしいとは言わないけれど、命というものこそ宝だと僕は思うんです。“死”は終わりではなくて、先人たちの想いは引き継いで今も僕らの中で生きている。そして次の世代へ託していかなければならないものなんだと心から思っています。命って繋がっているんだな……と考えるだけでも、明日見える世界や映画館を出た後の景色がほんの少し変わっている気がする。僕はそこにある映画の力を信じたいです」

大友監督「僕はね、自分自身、相当諦めが悪い人間だと思うんですね(その場にいる全員が強く同意)。自分がそういう人間だからこそかもしれませんが、一時期、そう、『龍馬伝』の頃ですね、幕末の志士たちの思いの強さを知るにつけ、『念は何らかの形になって残るのではないか』と、そういう思いにとりつかれた時期があって。いま抱えている自分のこの想いは、自分が死んじゃったらどこへ行くんだろう? と。きっと想いが強ければ強いほど、それは何らかの形になって、肉体が滅びた後も他者に影響を及ぼすくらいのエネルギーになって残るんじゃないかと。うまく言えないんだけれども、そういう考えに執着したことのある自分にとって、沖縄という島には、青い空、青い海の向こう側に、多くの人たちの『念』が、形を変えて無数に漂っているような、そんな気すらするんですよね。

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映画の企画って、一度足を突っ込んで準備に入ってしまうと、なかなか捨てられなくなっちゃうんですが、そういう『念』を題材の中にうっすら感じ始めると、“なおさら”なんですよね。『もう無理ですよ』と言われれば言われるほど、諦めたくない。『宝島』の準備段階でも、『キャリアに傷がつく』『やめたほうがいい』『いますぐ撤退すべきだ』って散々言われました。でも、言われれば言われるほど『絶対にやめない!』という気持ちになっちゃうんですよ。この『諦めない』という気持ちがぐるっと回って、どこかでグスク、ヤマコ、レイとも繋がっていく。映画の核となるもののヒントになるような、そんな気すらしたんですね。

そしてここからは、最後まで届けることを『諦めず』に頑張ろうと思っています。先日もある学校へ特別授業で行ったんですが、最初は『この子たち興味ないな』と感じたのですが、絶対に振り向かせたいと思って。歴史ってのは他人事じゃないからね、もし自分のお母さんが、妹が、恋人がこんな目にあったらって考えてみてねって。みんなの想像力が勝負だからねって。そうしたら少しずつ、彼らが顔を上げ始めて。みんなきっと、普段は映画を観ない子たちなんです。でも、この子たちにも届けなければならないという気持ちに、切実になる。そんな風に思える映画って珍しい。

画像6(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

『たかが映画されど映画』っていう言葉でいうと、作り手としては『たかが映画だから』という方に気持ちが流れてしまいがちだけど、そうじゃない。『されど映画』なんだと。僕は過去に観てきたものを含め、映画に勇気をもらったり、人生を変えるような感動をもらったことがありますからね、もう一度それを確認したい想いがあるんですよ」


■妻夫木にとって、大友監督にとっての「宝」とは?

妻夫木の口から「命こそ宝」という言葉が出てきたが、沖縄にも「命どぅ宝」という同義の言葉がある。前述の宮島さんも、取材中にこの言葉を使っていた。

画像7(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

宮島氏「『宝島』はビッグバジェットで大きな劇場でもたくさん上映されるので、その分、賛否両論いろいろな意見が出てくると思います。『宝島』の“宝”とはどこにあるのか……。沖縄が宝島なのではなく、この映画を観てくれた人それぞれの地元にも“宝”があるんだということに気づいてほしいです。『宝島』の“宝”とは何を指しているのか?という問いがきっとこの映画にはあると思います。沖縄には『命どぅ宝(ぬちどぅたから)』=「命こそ宝」という言葉があります。この映画もそのメッセージを指しているところがありますし、『みんなにとっての宝とは何か?』ということをみんなで考えてほしいです」

さて、妻夫木と大友監督にとって、「宝」とは何か? という問いかけで、このインタビューを締め括りたい。

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妻夫木「僕はもう、分かりやすく『家族』です。家族ができて、それまでと価値観がガラッと変わりました。それまでは『いつ死んでもいい』と、どこかで思っている部分があったんです。若い頃は、それくらい俳優として役に向き合うべきだと、他のことに顧みないタイプだったのですが、今は死ねません。家族や子どもの未来を考えるのは僕の責務だと思っています。子どもからもらう力こそ、最大の原動力になりますから、そのおかげでいまは家に役を持ち帰らないようになりましたね」

画像9(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

大友監督「僕は『時間』。59歳になると、もはやその領域に入ってきますね。これまではあえてそれを自覚せずに生きてきましたが、これからは残された時間を意識せざるを得ませんね。誰にでも平等に与えられているのが時間なので、映画に限らず自分の人生の時間を使い切って『何をするのか』。そういったことを考える年代に入ってきた気がします」

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執筆者紹介

大塚史貴 (おおつか・ふみたか)

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映画.com副編集長。1976年生まれ、神奈川県出身。出版社やハリウッドのエンタメ業界紙の日本版「Variety Japan」を経て、2009年から映画.com編集部に所属。規模の大小を問わず、数多くの邦画作品の撮影現場を取材し、日本映画プロフェッショナル大賞選考委員を務める。

Twitter:@com56362672


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