カズオ・イシグロが語る「遠い山なみの光」と戦争、そして長崎
2025年8月15日 12:00

ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロのデビュー作を、広瀬すず主演で石川慶監督が映画化する「遠い山なみの光」(9月5日公開)。本作は戦後復興期の長崎も舞台としており、本日8月15日の終戦記念日に原作者であり、本作エグゼクティブプロデューサーも務めるイシグロが本作と戦争、長崎について語るインタビュー動画が公開された。
日本人の母とイギリス人の父を持ち、大学を中退して作家を目指すニキ。彼女は、戦後長崎から渡英してきた母悦子の半生を綴りたいと考える。娘に乞われ、口を閉ざしてきた過去の記憶を語り始める悦子。それは30年前、戦後復興期の活気溢れる長崎で出会った、佐知子という女性とその幼い娘と過ごしたひと夏の思い出だった。初めて聞く母の話に心揺さぶられるニキ。しかし、彼女は悦子の語る物語に秘められた嘘に気付き始め、やがて思いがけない真実にたどり着く――という物語。
日本、イギリス、ポーランドの合作で、長崎時代の悦子を演じるのは広瀬すず、佐知子に二階堂ふみ、イギリス時代の悦子に吉田羊、ニキにはオーディションで選ばれたカミラ・アイコ、さらに長崎時代の悦子の夫に松下洸平、その父親を三浦友和。日本パートには柴田理恵、渡辺大知、鈴木碧桜(子役)らが出演。豪華実力派キャストが集結した。

カズオ・イシグロのデビュー作に新たな命を吹き込んだ石川監督は、「原作は戦後の長崎と1980年代のイギリスが舞台の話ですが、戦後の描かれ方が誠実でそこにとても共感しました。長崎や戦争というテーマや小津安二郎作品的な人物たちは、何度も日本映画で描かれてきましたが、イギリスからの視点が入ること、そしてカズオ・イシグロ的な“信頼できない語り手”によるミステリー感が加わることによって、全く新しい視座を獲得しているように思いました。これらのテーマを新しい世代の感覚でアップデートすることは、戦後80年の今必要なことだと実感しています」と語る。
戦後80年となる年に、40年間に執筆した自著が映画化されることについてイシグロは「適切な時期だと思います。日本だけでなく世界的に節目となる年で、我々は世界が混乱に陥っていた時代があったことを思い出さなければならない。特に若い世代の人たち、戦争が終わって何年も経ってから生まれた日本の人々はそう。今の日本は豊かさだけでなく、安定性を持った偉大な自由民主主義国家のひとつです。欧米諸国が経験してきたような不安定さは経験していないかもしれない。そんな中、この映画は、その平和な日常が当たり前のものではないことを思い出させてくれる」と振り返り、本作に込められている想いを吐露する。
「ほんの数世代前は違いました。当時の日本はとても暗い時代で、恐ろしい世界大戦も経験しました。だから今こそ思い出すべきで、こんなふうにそれぞれの世代が、私たちは幸運なのだと忘れないことが大切だと思う。同時にこの平和と民主主義を守り続けなくてはいけない。そんな思いもあって、この映画がこの節目を過ぎてからも、ずっと残っていくことを願っています。そして、何とかこの40年以上残ってきた僕が書いた原作のように、石川さんの映画も何十年も続いて、普遍的で時代を超えた作品として受け入れられると期待しています。なぜなら本作は最悪の状態からどのように人々が立ち直るかを描いているからです」

長崎で生まれ、5歳の時にその地を離れたイシグロ。自身が暮らした頃の思い出とともに、故郷への思い入れを語る。
「だから私が覚えている長崎のイメージは、太陽、海、広い空、そして山と木々の風景です。街は再生と前進の雰囲気に包まれていたんです。それは、イギリスの人々が抱く『破壊された街』という印象とはまったく異なるものです」と明かす。原爆について深く考えるようになったのは、大人になってからのことだといい「私にとって長崎は、皆が将来に対して希望を持つ街でした。多くの産業が回復して造船所も活気を取り戻し、全て復興していきました。父はアメリカで研究を行った後、イギリスでの生活を望んでいました。外に目を向ける時代でしたね。長崎は古くから『世界への架け橋』でその伝統は長い歴史に根ざしています。私にとって長崎は『近代への扉を開いていった街』」とイギリスから遠く離れた故郷を描出した。
映画「遠い山なみの光」は9月5日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
(C)2025 A Pale View of Hills Film Partners
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