「ランド・オブ・バッド」あらすじ・概要・評論まとめ ~テクノロジーを超えて主演二人の人間力が熱く炸裂する戦場サバイバル~【おすすめの注目映画】
2025年8月14日 09:00

近日公開または上映中の最新作の中から映画.com編集部が選りすぐった作品を、毎週3作品ご紹介!
本記事では、「ランド・オブ・バッド」(2025年8月15日公開)の概要とあらすじ、評論をお届けします。

ラッセル・クロウとリアム・ヘムズワースが共演し、戦場で孤立した若手軍曹と、彼を後方から支援する無人戦闘機のベテラン操縦官の闘いを活写したサバイバルアクション。
イスラム過激派の温床となっているスールー海の緑豊かな島で、米軍特殊部隊デルタフォースが、拉致されたCIAエージェントを救出するという極秘任務に乗り出した。精鋭ぞろいの部隊の中で、JTAC(統合末端攻撃統制官)のキニー軍曹は航空支援の連絡役として、実戦経験がほとんどないまま任務に参加することになる。しかし目的地に着いた直後、部隊は反政府ゲリラに遭遇し、激しい銃撃戦の末に壊滅寸前に陥る。戦場で孤立したキニーは、はるか上空から支援する無人戦闘機MQ-9リーパーのベテラン操縦官だけを頼りに、決死の脱出に挑むが……。
無人戦闘機の操縦官をクロウ、若手軍曹キニーをリアム・ヘムズワースが演じ、リアムの実兄ルーク・ヘムズワースもデルタフォース隊員役で出演。「アンダーウォーター」のウィリアム・ユーバンクが監督を務め、アメリカ海軍全面協力のもと、入念な取材に基づいて現代の軍事作戦をリアルに描写した。

空から状況を俯瞰する神の眼となり、いざとなればミサイルで敵を一網打尽にする―そんなドローン戦術が戦争のあり方を豹変させて久しい。思えば「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」や「ドローン・オブ・ウォー」の製作がちょうど10年前。それらのインパクトに比べると、今や「ランド・オブ・バッド」が描く内容は目新しいとは言えないが、しかしこれはこれで、撮り方、迫力、人間ドラマの各面で見劣りするところなく、堅実に観客を惹きつける。思いがけない拾い物として心を満たす一作だ。
物語は、デルタフォースが東南アジアの過激派拠点へ乗り込む場面から始まる。彼らの任務は、囚われたCIAスパイを救出すること。クルーには経験豊富な兵士の他に、JTAC(攻撃統制官)のキニー(リアム・ヘムズワース)も含まれている。彼が担うのは上空に浮かぶ無人機に対し地上から詳細な指示を出す役目だ。しかしいざ戦闘が始まると、屈強な仲間は次々と倒れ、キニーはただ一人、ジャングルで追われ続けることに。頼れるのは、遥かラスベガスの基地から無人機を操るリーパー(ラッセル・クロウ)のみ。顔を合わせたこともない二人は、音声だけで絆を深めつつ脱出の道を探るのだが・・・。

監督を務めたウィリアム・ユーバンクというと、深海から宇宙空間まで、独自のコンセプトに基づく様々な緊迫状況を創り上げてきた人である。その世界観に投入されるのだから、ヘムズワース兄弟の末っ子にして最長身(191cm)のリアムがたどる状況も相当過酷なものに。そこで炸裂する銃撃&爆破アクションは、非スタジオ映画にしてはなかなかのスケールで、無人機にミサイル発射を命じてから着弾するまでの数十秒のタイムラグがハラハラするような緊迫のリズムを生む。

そこに絶妙な変化球と味わいを加えるのが操縦士リーパーだろう。彼には差し迫った身の危険はなくとも、妻が出産間近ゆえ緊張のあまり苛立っていたり、普段からこうと決めたら譲らない性格の持ち主だったりで、ややつきあいづらいところがある。その強烈な”人間臭さ”が遠く離れたキニーを救いたい一心で勢いよく噴射する様子を、クロウがいっさい名優ぶらず、かといって力み過ぎることもなく、時におかしみを添えながら巧みに彩っている。その姿が実に良い。
テクノロジーがどれだけ進歩しても、根底に関わるのは結局のところ人間だ。彼らのギリギリの粘りと判断が胸を沸き立たせる、見て損はない変則的バディムービーの力作である。
執筆者紹介

牛津厚信 (うしづ・あつのぶ)
映画ライター。77年長崎生まれ。明治大学を卒業後、某映画専門放送局の勤務を経てフリーに転身。クリエイティブ・マガジン「EYESCREAM」や「パーフェクトムービーガイド」などでレビュー執筆やインタビュー記事を手掛ける。またイギリス文化をこよなく愛し、その背後にある歴史や精神性を読み解くことをライフワークとしている。
Twitter:@tweeting_cows/Website:http://cows.air-nifty.com/
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