【パリ発コラム】ジブリUT発売記念 鈴木プロデューサー、ユニクロ柳井氏、「レッドタートル」監督がトーク
2025年7月27日 14:00

アールデコ調の美しい外観やヨーロッパ最大のスクリーンで知られ、フランスの歴史的建造物に指定されているパリのシネコン、Le Grand Rex (ル・グラン・レックス)で7月4日、ユニクロ主催のスタジオ・ジブリ・イベントが開催された。ユニクロがジブリとの3度目のコラボレーションとして、全21柄のTシャツを発売するのを記念しておこなわれたものだ。これを機にル・グラン・レックスでは4日から6日まで、スタジオ・ジブリ作品の特集上映も催された。
イベントには日本からジブリの鈴木敏夫プロデューサーとユニクロの柳井康治氏、そしてスタジオ・ジブリ共同制作で、高畑勲がアーティスティック・プロデューサーを務めた「レッドタートル ある島の物語」(2016)のマイケル・デュドク・ドゥ・ビット監督が、それぞれ新作のUTコレクションを着て参加し、本作の上映前にトークをおこなった。

まずは鈴木氏と柳井氏が登壇し、今回のコラボレーションの成り行きを語った。
柳井氏は、「きっかけはカンヤダ・プラテンさん(タイ人の写真家、イラストレーターでTシャツのイラストを担当。鈴木氏は彼女に関するノンフィクション小説『南の国のカンヤダ』を2018年に出版している)という鈴木さんのお友達の存在が大きかったと思います。4年前に鈴木さんにお会いして、カンヤダさんを交えたコラボレーションができるといいねという話で盛り上がったのを覚えています。お会いする前、ひとつだけ心に決めていたことがあるんですが、それはどんなに携帯に連絡が来ても絶対に携帯を取り出さないということでした」と振り返った。
一方鈴木氏は、柳井氏が初めてジブリを訪れ、3時間の対談をしたときの印象について、「僕が書いた本を読んでいらして、話の内容がカンヤダさんのことばかりだったんです。驚いたのは、そのあとさあここからジブリの話をするのかなと思ったら、柳井さんは立ち上がって『じゃあ帰ります』と帰っちゃったんですよ(笑)」と明かし、「すごく印象に残りました。柳井さんはとても優れたビジネスマンで、自分という存在を相手に印象づけることを心得ていらっしゃるんです。だからその成果としてTシャツが出来たとき、嬉しいというより『してやられた』という感じ(笑)。僕はやっぱり柳井さんの手のひらで踊ったんだなあと感じました」と語り、会場の笑いを誘った。

続いて第2部では、デュドク・ドゥ・ビット監督と鈴木氏が対談。鈴木氏は「レッドタートル」の馴れ初めについて、「彼の短編『岸部とふたり』(2000)を観て大好きになり、この監督に長編を撮らせたらどんなものになるだろうと思ってマイケルに提案したんです。そうしたら彼から、やる場合ひとつだけ条件がある、と。自分は長編を作ったことがないので、長編の作り方を教えてくれるならやると言われたんです。それで僕が考えたのは、これにもっとも適しているのは、先生としても優れている高畑勲だということ。彼の協力が得られるなら、マイケルもやってくれるんじゃないかと思い提案しました」と述懐。
一方デュドク・ドゥ・ビット監督は、「無人島での生活というテーマが自分にとってまず魅力的でした。自分は自然のなかで育ったので、自然への深い愛があり、その奥深さを描くことは大きなモチベーションでした。そしてもちろん、敬愛するスタジオ・ジブリで作品を作ることができるのは、この上ない栄誉でした」とジブリ愛を明かした。ちなみに彼がもっとも好きなジブリ作品は、「火垂るの墓」と「千と千尋の神隠し」だそうだ。

鈴木氏はさらに宮崎駿監督が「内緒で」編集室で「レッドタートル」を観たエピソードも披露。「彼はへそ曲がりなので、当初観ないと言っていたのですが相当気になっていたようで、ある日編集者が仕事をしていると後ろに宮崎が立っていたそうです。作品を観た後はいたく感動して、僕のところにきて、『同じスタッフで作品を作りたい』と言ったほどでした」。
鈴木氏はさらにデュドク・ドゥ・ビット監督に、「いまエドガー・アラン・ポーの『大鴉』という小説が気になっているのですが、これをアニメーションとして映画化したら面白いのでは?」と持ちかけ、監督も「あとで話し合いましょう!」と意気投合した。もしも企画が実現したら、パリでの縁が取り持ったと言えるだろう。(佐藤久理子)
執筆者紹介
佐藤久理子 (さとう・くりこ)
パリ在住。編集者を経て、現在フリージャーナリスト。映画だけでなく、ファッション、アート等の分野でも筆を振るう。「CUT」「キネマ旬報」「ふらんす」などでその活躍を披露している。著書に「映画で歩くパリ」(スペースシャワーネットワーク)。
Twitter:@KurikoSato
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