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映画「岸辺露伴は動かない 懺悔室」は日本映画の未来を変えるか?【コラム/細野真宏の試写室日記】

2025年5月24日 07:00

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「岸辺露伴は動かない 懺悔室」(公開中)
「岸辺露伴は動かない 懺悔室」(公開中)
(C)2025「岸辺露伴は動かない 懺悔室」製作委員会 (C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)


今週末5月23日(金)から「岸辺露伴は動かない 懺悔室」が公開されました。

前作の「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」はパリのルーヴル美術館でロケをするなど本格的な作風で話題になりましたが、第2弾の本作は、ついに「全編イタリア・ベネチアでのロケ」を敢行した意欲作です。

そしてその甲斐もあって、本作の出来栄えは、前作を大きく越えた仕上がりになっているのです。

荒木飛呂彦の原作マンガ「ジョジョの奇妙な冒険」に登場する「漫画家・岸辺露伴」を主人公にしたスピンオフシリーズで、NHKで連ドラ化された「岸辺露伴は動かない」。

映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」は興行収入12.5億円を記録し、「NHK連ドラ関連の映画」としては、興行収入10億円を突破した唯一の作品となっているのです。

そして、本作「岸辺露伴は動かない 懺悔室」でも興行収入10億円突破に期待がかかっています。

画像2(C)2025「岸辺露伴は動かない 懺悔室」製作委員会 (C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
画像3(C)2025「岸辺露伴は動かない 懺悔室」製作委員会 (C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

本作は全編イタリアのベネチアで撮影されているので、通常の日本国内で撮影される場合に比べて制作費が上がる面が出てきます。

おそらく通常の邦画では、やや高めの「制作費6億円クラス」だと思われます。

そして、このクラスだと宣伝費は2.5億円くらいが相場となります。

そうなると映画館の上映だけで回収するには、興行収入19億円が大まかな採算ラインとなるのです。

画像4(C)2025「岸辺露伴は動かない 懺悔室」製作委員会 (C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

ところが、本作では、「上手い手法」を使うことで採算ラインを大きく下げることに成功している可能性があります。

それは、世界各国が打ち出している「制作費の優遇措置」の活用です。

そもそも、本作はベネチアで撮影することで、日本国内では実現不可能な、かなり良質で本格的な映像表現を実現できるメリットを享受しています。

その一方で、イタリアにとっても、大きく2つのメリットがあるのです。

1つ目はベネチアが映画のロケ地で使われることで、映画自体が観光プロモーションになることです。

そしてもう1つが、イタリア経済にプラスに働くことです。

例えばベネチアで日本映画を作る場合には、日本からベネチアに大勢が移動して、ホテルなどに宿泊することになります。

当然、外食も含めてイタリア経済にはプラスとして作用します。

また、撮影に必要な人材や機材などは現地調達もするので、雇用などにもプラスに働くのです。

このようなメリットを踏まえて、例えばイタリアでは一般的に、イタリアで使った制作費の最大75%に対して、4割の補助が出るのです。

画像5(C)2025「岸辺露伴は動かない 懺悔室」製作委員会 (C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
画像6(C)2025「岸辺露伴は動かない 懺悔室」製作委員会 (C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

ただ、いくら「全編ベネチアロケ」といっても、撮影後の仕上げは日本でしますし、日本のキャストやスタッフの人件費はイタリアの補助の対象にはなりません。

そのため、本作のイタリアで使う制作費を4億円とすると、(4億円×0.75×0.4=)1.2億円の「映画制作に対する優遇措置」があるのです。

そのため、トータル6億円の制作費について、全編ベネチアロケによって実質的な制作費が4.8億円に抑えられます!

ハリウッド映画の場合では、例えば現在公開中の「マインクラフト ザ・ムービー」は、多くをニュージーランドで撮影されています。

そのため、ニュージーランドでの制作費の25%程度の補助金をニュージーランド政府からもらっていると想定されるのです。

その結果、ニュージーランドで使う制作費は実質的に4分の3で済んだりもするわけです。

このように世界で撮影誘致などの競争が起こっていて、日本映画でも海外ロケを活用する作品が増えていくのかもしれません。

画像7(C)2025「岸辺露伴は動かない 懺悔室」製作委員会 (C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

ちなみに、「岸辺露伴は動かない 懺悔室」が優遇措置の仕組みを上手く活用できているとすると、劇場公開だけで採算ラインを稼ぐには興行収入16.6億円がリクープラインとなります。

そして、劇場公開後に配信などで回収することになるのですが、本作はすでに実績のある大人気シリーズなので、配信業者が欲しがるコンテンツなのは間違いないでしょう。

本作のような優良コンテンツだと、大手配信プラットフォームから独占先行配信で3億円クラスの契約料も手に入るので、それを踏まえると、興行収入は10億円でリクープできることになるのです。

このように、本作は出来が良いことに加えて、優れたビジネスモデルを構築しているので、大ヒットすれば、さらなる続編の製作も期待できるでしょう。

この新たな可能性を秘めた作品がどのような結果になるのか――大いに注目したいと思います。

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