旧日本軍が東南アジアで行ったこと、語られなかった歴史 マレーシア出身監督が紐解く5時間のドキュメント【第2回沖縄環太平洋国際映画祭】
2025年2月26日 13:00

沖縄県・那覇市で開催中の第2回Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際映画祭「コンペティション長編部門」部門で、マレーシア出身、台湾を拠点に活動するラウ・ケクフアット監督によるドキュメンタリー「島から島へ」が2月25日上映された。ケクフアット監督が台湾・中興大学教授の朱惠足氏とともにQ&Aに応じた。
第2次世界大戦中、日本の植民地支配下にあった台湾。日本帝国主義がどれだけ深い影響を与えたのか、マレーシア出身の監督が東南アジア各国の“島から島へ”と撮影を重ね、世代を超えて紡がれていく記憶とアーカイブ資料(口述歴史、家族の手紙、日記、映像)によって浮き彫りにするドキュメンタリー。旧日本軍がマレーシアやシンガポールで行った虐殺、日本軍として働いた台湾籍兵士たちに課された役割などを当事者や家族が証言。シンガポールの731部隊の映像など東南アジアに残された多数の資料も引用されているほか、日本人、および日本での取材も行われている。
(C)hummingbird production2024年台北金馬奨で最優秀ドキュメンタリー賞、さらに2024年台北映画賞で年間最優秀映画賞と最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した本作は、290分という超大作で、前後2編の構成となっている。ケクフアット監督は、当初はオーストラリアの兵士についての90分のドキュメントを構想していたが、マレーシアで台湾出身の日本兵がいたという事実を知り、まずは、当時を知る人々の証言を軸に前半となる2時間の映像を制作した。「我々スタッフの中からも、祖父の時代のこういったことを描いて何がしたいんだ、何を表現したいんだ? という声も上がった」と明かし、後半は「前半で知った事実を基に、我々はどのように考え、行動していくべきなのか、そういった思考の部分にフォーカスしている」と説明した。

「私は台湾に移住して13年、虐殺に台湾人が関与していたという事実を知り、大きな憤りを感じました。第2次世界大戦が終わって80年が経って、このような事実が世に出ていないことにも怒りを覚えました。私=マレーシア代表として撮っているわけではなく、私を通し、いろんな群衆を代表して、個人個人から見た視点でどういった考えを持つかを意識して作った」と制作の意図を明かす。
そして、「私は、国を中心にした歴史教育は望ましくないと考えています。各地域の子どもたちが、あなたのおじいちゃんの時代にはこういうことがあった、僕のおじいちゃんは……そんな対話を深めてリンクさせていってほしい」と、本作を教育教材として分割して活用するなど、対話のためのリソースになることを望んでいると強調した。

本作は台湾で大きな衝撃とともに受け止められた。朱教授は、日本軍政下での敵性華僑という概念発生の理由、台湾人は福建出身者が多かったことからマレー半島の華僑たちと言語的コミュニケーションがとれたことなどを説明し、「引き上げ者も語らない、知られていなかった歴史」とコメントした。
「第2回Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際映画祭」は、3月2日まで那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール、桜坂劇場などで開催。スケジュール、上映作品詳細は公式HP(https://www.cinema-at-sea.com/)で告知している。
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