石丸幹二、双子ピアニストの苦難と成功を描いた「デュオ」の魅力を語り尽くす 自身の経験ともリンク「励ましの映画でもあります」
2025年2月24日 10:00

アカデミー賞作品賞含む主要3部門受賞「コーダ あいのうた」のプロデューサー最新作「デュオ 1/2のピアニスト」が、2月28日に公開される。同作のオフィシャルサポーターを務めているのは、舞台、映像、音楽と幅広く活動し、2017年より「題名のない音楽会」の司会としてクラシック音楽の若手演奏家の紹介に努めてきた石丸幹二。このほど、石丸が「デュオ 1/2のピアニスト」の魅力を語り尽くしたオフィシャルインタビューが披露された。

実在するフランスの双子ピアニスト、プレネ姉妹をモデルに、難病によって夢を絶たれた双子の天才ピアニストの苦難と成功を描いた音楽ドラマ。
幼い頃からピアノに情熱を注いできた双子の姉妹クレールとジャンヌは、名門カールスルーエ音楽院に入学する。それぞれソリストを目指し、今後のキャリアを左右するコンサートのオーディションに向けて練習に励む日々を送っていたが、ある日2人は自分たちの両手が徐々に不自由になってしまう難病に冒されていることを知る。最悪の事態に直面するなかで、改めてピアノへのかけがえのない思いに気づいた2人は、家族に支えられながら、夢を掴みとるべく唯一無二の演奏方法を生みだす。

私自身、音楽をやってきた人間なので、(映画の内容が)他人事だとは思えませんでした。主人公の双子の姉妹は、子供の頃から色々な課題をクリアしながら上に登っていかなきゃいけない、その姿を観ていると胸が締め付けられる思いになりました。すごくリアルなお話で、音楽家を目指す人にとっては、この映画を観ることで、自分はどういうふうに道を選べばいいのかヒントになる映画でもある。これはぜひ多くの人にお伝えしたいと思い、サポーターをお引き受けしました。音楽に特化している映画なので、個人的に感情移入しながら観ていましたが、一方で俳優の立場としては、クレールとジャンヌを演じている俳優さんの演技力は凄いぞと、感嘆の目線でも見ていました。
前半で衝撃的だったのは、双子が2人から個になる展開ですね。それまで一緒に英才教育を受けてきて、いつも一緒だったのに、大学に入った途端に分けられてしまう。あれは本人たちにはショックですよね。個でいることに向き合わなくてはならなくて、2人で頑張ってきたものが段々と離れていく、そこが僕にとってはすごく胸に刺さり、リアルに映りました。その後、挫折や障害を乗り越えながら2人が同じ道にたどり着く瞬間は、なんとも言えない感動でした。
そもそも芸術は、本来1番・2番……と競うものではないと思うんです。それぞれが個性を出せばそれでいいはずなのに、(音楽に限らず)学生時代っていうのは、どうしても順番をつけられてしまう。それを自分たちの力で乗り越えていく彼女たちの姿に強さを感じました。

大学に入ると指導教授たちからいろんな指示が出ますよね。ある先生からの指示に思い悩んで立ち向かっていくと、別の先生からは、それは問題ではなく、逆に「いいことだよ」と言われてしまう。そういった感覚の違いはよくあることで、私にも経験がある。私が感動したのは──、これは想像でしかないんだけれど、彼女たちには双子だからこその、“あうん”の感性があって、同じことを同時にできてしまう。それが非常に感動的なんです。しかも、周りをうならせて、認めさせてしまうんです。
この作品は、いわゆる教育システムに対して問題を投げかけてもいて、マシンのように正確に弾けることだけがいいわけではない、とも言っています。いっぽうで、私は、ヨーロッパ人たちの感性はこんなにも豊かで自由なんだ、ということをこの映画から学びました。EUは国境を閉ざしていないので、フランス人が車に乗ってドイツの学校に行って勉強できる。そういうシステムも素敵です。
技術というのは、ある域に達するまで(ひたすら)しのぎを削らなければならなくて。自分だけが満足していれば、それはそれでいいのかもしれませんが、やはり評価されたり、聴衆に感動を届けられる域にまで行くには、自分自身との戦いになってくるんですよね。双子の姉妹たちは、才能もあって、環境にも恵まれていたので成功しましたが、誰もが成功するとは限らない厳しい道です。この映画を観ながら、自分もそうやって地道にコツコツ研鑚してきたなあと、今の自分がいる位置を再確認し、もっともっと進んでいかなくちゃいけないんだなと思ったりして。励ましの映画でもあります。

何かを目指していると、想定できないハプニングの連続ですよね。だからこそ、自分との大きな戦いで、プレッシャーの連続になっていくんでしょうね。自身を責め続けることも多い。けれど、前に向かって歩むことが人生の面白さでもあるし、どんなに道半ばでも、周りの人は喜んでいてくれるかもしれない。だから多少は自分に甘くというか、自分を褒めてあげてほしい、そんなことも映画を観ながら感じていました。双子の姉妹があの後どんな人生を送ったのか──それも(映画で)見てみたいですよね。
オリンピック選手たちがゴールの後に、自分を褒めてあげたいっておっしゃる気持ちが分かるというか。結果を導く努力と苦しみがあったからこその記録という意味では、芸術家たちも同じだと思うんです。なかには、たとえば絵を描く人たちは、作品が評価されるまでに歳月を要することもありますよね。それでも、信じて前に向かって進む姿は共感できるものがあります。
映画が始まってからエンディングに行くまで、次から次へと波が押し寄せてくるような感覚というか、自分もその波に乗り遅れちゃいけないと思って、一緒になってサーフィンをしているような、そんな気持ちでした。

よくよく見ると違うんですけど、でも双子に見える。彼女たちのお芝居もまた素晴らしかったですね。それはやっぱり俳優としての技。また、ピアノをちゃんと弾いている、演奏もすごいなと思います。
なんと!セリフを両方覚えるのは大変だったでしょうね。準備も色々あったと思いますし……監督はどうして逆にしようと思ったんでしょう。
だとしたら面白いアイデアのひとつだと思います。演じる本人たちは多分ドキドキしたでしょうけれど。おっしゃるように、逆の立場を頭に入れることで、違う視点で見ることができる。苦労は倍だけど得たものはきっと何倍にもなっていると思います。

この作品は音楽を扱ってはいますが、どうやって人生の苦難に立ち向かっていくか、について、ものすごくリアルに描いている作品です。どの世代であっても、ご自身の人生になぞらえて見ることができると思います。ひとりでじっくり観てもいいですし、ご家族と一緒に観ても、特に子供が習い事をしているお父さんお母さんはお子さんと一緒に観て、子供が何を感じるか、自分はどう感じるか、互いに感じたことを話し合うのもいいですよね。そんな時間を共有できるとても素敵な映画だと思います。
随所に流れているクラシックの名曲がほんとに美しいので、この曲聞いたことあるなとか、あるいはこれ演奏したことあるなとか、懐かしく思う人もいるはずです。
確かに、この映画は最高の音楽が聞ける映画ですから、映画を観て、演奏を聴いて、自分もあんな風に弾いてみたいとか、音楽を始めるきっかけになったら嬉しいですね。
(C)2024 / JERICO - ONE WORLD FILMS - STUDIOCANAL - FRANCE 3 CINEMA
関連ニュース

「コーダ あいのうた」プロデューサー最新作 難病の双子天才ピアニスト苦難と成功の感動作「デュオ 1/2のピアニスト」公開 石丸幹二がサポーター
2024年12月19日 07:00





映画.com注目特集をチェック

片思い世界
【“鑑賞確定”の超期待作】広瀬すず×杉咲花×清原果耶主演×「はな恋」製作陣…そして涙腺崩壊へ
提供:リトルモア

ミッキー17
【前代未聞のオール社畜レビュー】史上最凶のブラック仕事を描いた痛快作…社畜が観たらどうなった!?
提供:ワーナー・ブラザース映画

侍タイムスリッパー
【ついに見放題“最速”配信中!!!】観たかった人も、何度も観た人も今すぐ観て!【ネタバレ厳禁】
提供:JCOM株式会社

この村の住人は、人間を喰ってる――
【衝撃の問題作】異常なクオリティで世界が熱狂…“絶対的支持”の理由を徹底解説!
提供:ディズニー

観ないとぜっったい後悔する
【ラスト5分の破壊力】そして“観たことないシーン”のゲリラ豪雨に、感動を超えてもはや放心状態――
提供:東和ピクチャーズ

映画を安く観たい人、絶対にチェックして!
【映画2000円は高すぎる!!?】知らないと損な“1250円も安く観る裏ワザ”、ここに置いときます
提供:KDDI

厳選した名作“だけ”をあなたに。
【探す時間、ゼロ】家のテレビが「あなただけの24時間シアター」に!(提供:BS10 スターチャンネル)