パレスチナの現状映す「ノー・アザー・ランド」本編映像 仲野太賀、奈良美智ら13名からのコメント
2025年2月10日 15:00

第74回ベルリン国際映画祭(2024年)で最優秀ドキュメンタリー賞と観客賞を受賞、第97回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にノミネートされている「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」の本編映像、仲野太賀、奈良美智らはじめ、13名からのコメントが公開された。
本作は、パレスチナ人とイスラエル人の若手監督によるドキュメンタリー映画。舞台となるのは、イスラエル軍による破壊行為と占領が今まさに進行している、ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区「マサーフェル・ヤッタ」。本作は、この現状をカメラに収め世界に発信することで占領を停止させ、故郷の村を守ろうとするパレスチナ人青年バーセル・アドラーと、彼に協力しようとその地にやってきたイスラエル人青年ユバル・アブラハームの2人による決死の活動を、2023年10月までの4年間に渡り記録している。
「マサーフェル・ヤッタ」の住民たちが家や小学校、ライフラインを目の前で破壊され強制的に追放されていく、あまりに不条理な占領行為を、そこで暮らす当事者だからこそ捉えることのできた至近距離からの緊迫感みなぎる映像であぶりだしていく。同時に、バゼルとユーバールが、パレスチナ人とイスラエル人という立場を越えて対話を重ね理解し合うことで生まれる奇跡的な友情と、ただ故郷の自由を願い強大な力に立ち向かい続ける人々の姿も映し出していく。監督は、彼ら自身を含むパレスチナ人2人・イスラエル人2人による若き映像作家兼活動家たち4人が共同で務めている。
本編映像が捉えるのは、2020年にマサーフェル・ヤッタで起こったある事件の一端だ。住民たちは、イスラエル軍と入植者による不条理な退去命令や破壊行為に抵抗しようと夜中のうちに家屋の建設を進めていたが、それが見つかってしまう。事態を聞きつけたバーセルが現場に向かうと、兵士たちが大工道具を没収しようとしていた。ユヴァルもカメラを手に「国の暴挙を見逃せない」などと抗議している。そうしているうちに、すぐそばで住民が所有する発電機を巡ってトラブルが発生。双方による激しいもみ合いが続く中で、イスラエル側による一発の銃声が鳴り響く…。この一部始終を記録していたカメラの不調も重なって、当事者だからこそ捉えることができた緊迫感みなぎる映像となっている。
本作がアカデミー賞にノミネートされた2日後の1月26日、監督のひとりであるバーセル・アドラーは「映画がアカデミー賞にノミネートされて2日後の今、入植者たちが私のコミュニティであるマサーフェル・ヤッタに侵入し、家々に火をつけて破壊しています。ノミネートされたことは光栄ですが、トランプ米大統領が入植者に対する制裁を解除したその一方で、私たちは抹殺されかけています。ハリウッドの人々は気にかけているでしょうか? どうか黙っていないでください」という訴えを、家々から煙が上がる様子を記録した動画とともにXに投稿している。
「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」は、2月21日からTOHOシネマズ シャンテ、シネ・リーブル池袋ほか全国公開。
パレスチナの現状を決死の覚悟で届けようとした、命懸けの記録をどうか心に留めてほしい。
――仲野太賀(俳優)
――奈良美智(美術作家)
――有働由美子(アナウンサー)
――空音央(映画監督)
――森達也(映画監督)
そこに映し出された、パレスチナのあまりにも過酷な現実。
あの「10月7日」以前にして、このありさまだ。
何とかしなくてはいけない。
しかしいったい何ができるのか。
パレスチナ人とイスラエル人の映画作家の間に芽生えた友情と理解と信頼だけが、一筋の光のように思える。
――想田和弘(映画作家)
これを民族浄化と呼ばず、なんと呼べるだろう。そして、問われる。この悲鳴に、無視を決め込む世界でいいのか――。
――安田菜津紀(メディアNPO Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)
――金平茂紀(ジャーナリスト)
――増田ユリヤ(ジャーナリスト)
――ISO(ライター)
――町山智浩(映画評論家)
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