プログレファン必見! そして、落涙必至のドキュメンタリー【映画.com編集長コラム】
2025年2月7日 13:00

久しぶりに、「オレの映画」に出合ってしまいました。中学生の頃、自分の血となり肉となったUKロックのバンドの数々。ピンク・フロイド、ジェネシス、エマーソン・レイク&パーマーといったプログレ陣や、レッド・ツェッペリン、ポール・マッカートニー&ザ・ウィングス……。それらのバンドのアルバムジャケットを制作していた、ヒプノシス(HIPGNOSIS)というクリエイターチームの隆盛と没落に関するドキュメンタリー「ヒプノシス レコードジャケットの美学」です。
この映画の存在を知ったのは2024年の夏頃でしたが、ずっと楽しみに待っていました。ついに日本公開を迎え、試写で見ることができて感無量です。そして意外だったのは、「シド・バレット 独りぼっちの狂気」と姉妹作品みたいだって分かったことです。「ヒプノシス」の名付け親はシド・バレットだったって証言も出てきます(諸説語られますが)。1960年〜70年頃のUKロックの中でも、ひときわ輝いていたバンドたちは、音楽だけじゃなくアルバムジャケットのアートで数々のセンセーションを世間に浴びせていました。その、コアにいたのがヒプノシスなのです。
とりわけ、ピンク・フロイドの一連の作品群を彩ったアルバムジャケットは秀逸でした。秀逸というより、当時としては斬新だったと言った方がいい。

一頭の牛が、ふり返ってこちらを見ている写真をセンターにデーンと置いた「原子心母(Atom Heart Mother)」。バンド名もなければ、アルバムのタイトルも記されていない、なかなか挑発的なジャケットです。レコード会社も大反対したこのジャケットで成功を収めたフロイドとヒプノシスは、その後も「狂気」や「炎」といったアルバムのジャケットと楽曲の内容で話題をさらいます。「次は何をやるんだ?」「どんな、とんでもないジャケットを世に出すんだ?」
ロンドンのバターシー火力発電所の上空に、ブタの風船を飛ばして撮影した「アニマルズ」はあまりにも有名。私も自分の部屋にこのアルバムを飾っていましたよ。
この映画で、撮影の時にあのブタは風に飛ばされてしまったというエピソードが披露されます。結局、ブタは合成したんだと。これは初耳でした。みんな騙されていたんですね。
ヒプノシスについては、当時、日本ではほとんど情報がありませんでした。ストーム・トーガソンとオーブリー・パウエルによるユニットですが、「ジャケットデザイン」というカテゴリを、アートの世界で非常に価値の高い地位に持ち上げた功績は誰もが認めるところ。

しかし、アナログ盤のLPがCDになり、さらにはストリーミングへと変遷してしまった現在、ジャケットデザインは単なる「サムネイル」になってしまいました。果たして、その価値が後世まで残り続けるのかは微妙なところです。
そんな時代の流れ、アルバムジャケットがどんどん小さく変化していく流れにあって、彼らはビジネスモデルを変化させなくては生き残れないという問題に直面します。
私の記憶でも、「いつの間にか名前を聞かなくなったよね。今は何してんのかな?」といつも思っていたヒプノシス、その衰退のくだりが語られるシークエンスは涙なしでは見られませんでした。

あのバンドのこのアルバムジャケットは、こうやって作られていたのか! あのオプチカル効果は、こうやって撮影されていたのか! などなど、50年の時を超えて初めて知る驚きに満ちた映画でした。
プログレファンなら必見の1本だと思います。私は、中学生の頃の自分と一緒に見たいと思いました。監督はアントン・コービン。この人もジャケ写の達人ですが、モノクロ映画の達人でもありますね。まさに、本作の監督としてこれ以上の適任者はいなかっただろうと思います。懐かしさと嬉しさと、それらを上回る寂しさを感じた一本でした。
執筆者紹介

駒井尚文 (こまいなおふみ)
1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi
関連ニュース




【「MONTEREY POP モンタレー・ポップ」評論】世界初のロックフェスを“特等席”から収めた記念碑的ドキュメンタリー。レストア版でより生々しい鑑賞体験に
2024年3月24日 10:00


映画.com注目特集をチェック

「鬼滅の刃」無限城編&超人気アニメ映画が【500円】で観られる!
【絶対にこの記事を読んでから観て】確実に損しないオトク情報
提供:KDDI

売春婦殺人事件、深刻な麻薬汚染…
遺体発見。妹でないことに、少しだけ安堵した。【現代の闇を描く、注目の衝撃作】
提供:BS10スターチャンネル

絶対に開かないでください。
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい
提供:ワーナー・ブラザース映画

雪風 YUKIKAZE
【観て、心から本当によかった】「コード・ブルー」「海猿」に涙した人にもオススメしたい新たな傑作
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、バンダイナムコフィルムワークス

なんだこのとんでもない映画は!?
【観ないのは映画人生の損失?】狂気的なクオリティでぶち抜く“常識外れの超高評価作”
提供:東映

入国審査
【これめっちゃ面白かった】この2人、空港の入国審査で何時間も尋問される…一体なぜ? 衝撃の結末へ
提供:松竹

またピクサーが大傑作つくったんですか…
【ボロボロ泣く感動超大作】両親を失った主人公の再生の物語。そのままの君が、好きだよ。
提供:ディズニー

映画界を変える“究極の推し活”がある!
【革命的すぎてヤバい】大好きな俳優と映画を“まさかの方法”でとことん応援できる!!
提供:フィリップ証券

ジュラシック・ワールド 復活の大地
【超絶パワーアップ】観てきたけど…マジ最高!! 究極のスリル、圧倒的な感動、全瞬間が限界突破!!
提供:東宝東和