映画.comでできることを探す
作品を探す
映画館・スケジュールを探す
最新のニュースを見る
ランキングを見る
映画の知識を深める
映画レビューを見る
プレゼントに応募する
最新のアニメ情報をチェック
その他情報をチェック

フォローして最新情報を受け取ろう

検索

ドキュメンタリー界の巨匠フレデリック・ワイズマン監督が三つ星レストラン「トロワグロ」に魅了された理由

2024年8月24日 07:00

リンクをコピーしました。
フレデリック・ワイズマン監督
フレデリック・ワイズマン監督
by Erik Madigan Heck

ドキュメンタリー界の巨匠フレデリック・ワイズマン監督が、ミシュラン三つ星を55年間持ちつづけるフレンチレストランの裏側を映したドキュメンタリー「至福のレストラン 三つ星トロワグロ」が公開された。

「トロワグロ」は創業以来94年間続く、トロワグロ一家が経営するレストランで、親子3代にわたりミシュラン三つ星を55年間維持している。本作は、樹々と湖に囲まれたフランスの村ウーシュで自然と融合する新しいレストランを舞台に、オーナーシェフ3代目のミッシェルと4代目のセザール、その他スタッフたちの仕事ぶりに密着した。

メニューが生み出される瞬間、厨房での調理の模様から、従業員だけではなく、顧客たちの様子、農家をはじめとした生産者、環境問題などフランス社会の一部も垣間見ることができる。240分と長尺ではあるが、目に楽しく美しく、精神的に豊かな時間を受け取れる、三つ星級のぜいたくな鑑賞体験になるだろう。このほど、ワイズマン監督が映画.comのオンラインインタビューに応じた。

画像2(C)2023 3 Star LLC – All Rights Reserved
――トロワグロでランチを召し上がって感激されたのが本作製作のきっかけだそうですね。ワイズマン監督とフランス料理との出合いを教えてください。

どんなメニューだったかは忘れてしまいましたが、とにかくものすごく美味しかったことを覚えています。1956年から58年にかけて、私はフランスに留学していました。当時はお金がなかったので普段は学食で食事をしていましたが、ある日、友人の親が三つ星レストランのマキシムに連れて行ってくれたのです。非常に美味しかったですね。その後、何度かフランスに行くようになって、少しずつお金ができると、美味しいものを食べました。

それで、このような三つ星レストランも、社会を構成する1つの団体ではないかと考えるようになりました。これまでに、学校や病院、美術館などの団体、生活のシリーズを記録していますので、レストランも撮ってみたいと思ったのです。私はそういった団体を構成する場所について、自分なりの緩い定義を持って作品を作っています。レストランはその考えに合致したのです。

画像3(C)2023 3 Star LLC – All Rights Reserved
――アメリカ的な社会を題材に扱った作品が多いですが、フランスでも主に芸術に関する作品をいくつか作られています。ワイズマン監督にとってフランス文化、フランス社会で興味深いと思う点、アメリカと異なる点を教えてください。

もう、それについては1冊本を書けるくらいのことがあります。アメリカとフランスは社会の在り方、文化が全く異なります。似ているところもありますけれども、すべてが違っていると私は思います。

私がフランスの文化で関心があるのは、映画もある程度興味がありますが、とりわけ舞台やバレエです。パリだけでも250もの劇団があり、アメリカとは違って、フランスでは国が支援しています。バレエも同様で、おまけにフランスのバレエ団は世界中をツアーします。

映画館もたくさんあり、パリではどんなジャンルも見られます。シネマテークフランセーズだけでなく、一般の映画館でも様々な時代や国々の作品の回顧上映をやっています。また、本屋もたくさん残っていて、みんなよく本を読んでいる印象があります。

アメリカでも近年良いレストランが増えてきましたが、パリには昔から良いレストランが何百軒もあって、35~40ユーロぐらいでそこそこ美味しいものが食べられるのが素晴らしいですね。

画像4(C)2023 3 Star LLC – All Rights Reserved
――現オーナーシェフ、ミシェルさんをはじめ、トロワグロ一家の仕事への向き合い方や、思い出深いエピソードがありましたら教えてください。

彼らは数世代にわたり長い間三つ星を保っている珍しいファミリーです。しかし、ステレオタイプのクリシェとは違って、優しくよく働き、知的で、怒鳴り合ったりはしない人たちです。家族が仲良く、一緒に働き、愛し合っています。

――この映画から従業員の方々も、トロワグロ一家の理念に共感して働いていることがわかりました。しかし、忙しい厨房などをはじめ、カメラが入るにあたり何らかの撮影のルールを求められましたか?

なんでも好きなように撮って良いという許可をもらいました。厨房もダイニングもです。しかし、お客さんには許可を得る必要がありました。でも、皆さん快諾してくださって、何の問題もありませんでした。

画像5(C)2023 3 Star LLC – All Rights Reserved
――4時間という長さになりました。あなたの作品は長いものが多いですが、事前にこれくらいのボリュームになることは想定されているのですか。

撮影前から、どのくらいの長さにするかなどは全く計画しません。どれだけのものが撮れるかもわかりませんから。しかし、撮影を始めて1週間くらいがたってから、レストラン3つのうちの2つを訪れたり、市場に誘われて行ったり、生産者のところに行くうちに、これは長い作品になるだろうという予感はありました。

――全体のフランスでの滞在はどれくらいでしたか? また撮影中はトロワグロのオーベルジュ(宿泊施設)に滞在されたのでしょうか?

撮影は7週間です。さすがに、オーベルジュは宿泊料金が高く毎日泊まれませんので、トロワグロから車で3分間ぐらいの場所に滞在していました。でも、疲れた時など、撮影の途中でひと休みできる休憩用の部屋を用意してくれました。

画像6(C)2023 3 Star LLC – All Rights Reserved
――滞在中にトロワグロの料理を召し上る機会もあったのでしょうか。

はい。毎日、お昼と夜は彼らがご馳走してくれたんです。厨房に従業員専用のスペースがあり、そこで食べさせてもらいました。シェフが食べる賄いを毎日一緒に食べるんです。70回も食べたので、ギネスブックの記録になると思いますよ(笑)。

――それはスクリーンには映らない、とても貴重な体験ですね。

私の映画では毎回違った題材を扱うので、その度に異なる特権的な経験をしています。例えば「パリ・オペラ座のすべて」(09)を撮ったときには、毎日7~8時間のリハーサルを見られました。これはすごい体験だと思います。また、68年に「法と秩序」という警察についての映画を撮りました。その時には8週間パトカーにずっと乗るという特別な体験もしました。

画像7(C)2023 3 Star LLC – All Rights Reserved
――トロワグロのミシェルは日本との関わりも深く、シソなど日本由来の食材を使うシーンも本編で紹介されます。日本人としては嬉しいことですが、ワイズマン監督も日本食を召し上がることはありますか。

私は日本食も大好きです。これまで3回日本に行きましたが、その度に日本食を食べました。寿司が好きですね。パリでもよく日本料理店に行きます。

――話は変わりまして、今アメリカは政治的に重要な局面を迎えていますね。その状況をどのように受け止めていますか?

私はバイデン大統領を尊敬しますし、歳を取りすぎてるからという理由で立候補を止めたことも良かったと思っています。トランプではなく、カマラ・ハリスが勝ってくれることを願っています。

画像8(C)2023 3 Star LLC – All Rights Reserved
――多様なテーマを扱う監督の新作を見るたびに、新たな驚きと喜びを発見します。次回作として進行中の企画や今、ご興味がある題材を教えてください。

じつは今、少し健康状態が良くなくて、次の企画のことは考えられないのです。体も精神も状態が良く、安心に準備ができないと映画制作はできませんからね。体の状態が良くなったら考えられるようになると思います。

――お体を大事になさってください。また監督の新作を拝見できる日を楽しみにしています。

ありがとうございます。このようにまたインタビューを受けられるようになりたいと思っていますし、私の作品に興味を抱いてくださって感謝しています。

フレデリック・ワイズマン の関連作を観る


Amazonで関連商品を見る

関連ニュース

映画.com注目特集をチェック

関連コンテンツをチェック

シネマ映画.comで今すぐ見る

それでも夜は明ける

それでも夜は明ける NEW

第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。

aftersun アフターサン

aftersun アフターサン NEW

父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。

HOW TO HAVE SEX

HOW TO HAVE SEX NEW

ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。

愛のぬくもり

愛のぬくもり NEW

「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。

卍 リバース

卍 リバース NEW

文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。

痴人の愛 リバース

痴人の愛 リバース NEW

奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。

おすすめ情報

映画ニュースアクセスランキング

映画ニュースアクセスランキングをもっと見る

シネマ映画.comで今すぐ見る

他配信中作品を見る