能登から東京に進学した高校生の青春描く「スキップとローファー」チャリティ上映 出合小都美監督&脚本家、米内山陽子がトーク【ひろしまアニメーションシーズン2024】
2024年8月19日 10:00

広島市で開催された、アニメーション芸術の祭典「ひろしまアニメーションシーズン2024(HAS)」で8月18日、能登半島地震復興応援チャリティプログラムとして「スキップとローファー」の無料上映が行われ、本作監督・シリーズ構成の出合小都美監督と、脚本家、米内山陽子氏がトークを行った。
月刊アフタヌーン(講談社)で連載中の高松美咲氏による同名マンガが原作。石川県の端っこの町の小さな中学校から、東京の高偏差値高校に首席入学した岩倉美津未(みつみ)のスクールライフを描く。今回は傑作選として1話/9話/12話が上映された。9話で本作の主人公・みつみが里帰りする故郷、凧島町のモデルは、石川県珠洲市。
出合監督は、本映画祭の日本依頼作品コンペティション部門の審査員も務めており、「審査員で呼んでいただき、『スキップとローファー』の上映も提案いただいた。基本的に私の演出回を上映するということで1話と12話を、そして、能登の風景を大画面で見られる機会があったら素敵じゃないかと思い9話を提案した」と今回の上映作品決定の経緯を説明する。
スクリーンで計3話を鑑賞し、「大画面で、いい音で見せて聴かせていただく機会はなかなかないので、ありがたい気持ち。9話は背景の描き込みもかなり頑張っている回なので、大画面映えする話数だと思った」と出合監督。上映中に泣いてしまったという米内山氏は「テレビ放送、配信、円盤になった時と何度も見返していますが、大きい画面で見ると自分の気持ちが動く瞬間にぐっときて、テレビで見るより気持ちがはっきり伝わってくるような感じが新鮮。小さな心の動きを書いているこの作品を、大画面で見るのが不思議な感覚だった」と感想を語る。
今シリーズの具体的な仕事について問われると、「アニメーションシリーズの監督の仕事は、アニメーション作品としてどういう形に持っていくのがベストかを模索し、それを現場でスタッフの方とうまく共有すること。1話作るのには、ものすごい数のスタッフが関わってくださるんです。だから、みんなで一丸となっていいものを作ろう、同じ方向を向いて作ろうというのをどう伝えていくかが、監督の仕事の難しいところ。シリーズ構成については、原作があるので1話ごと、どのようにまとめるかを考えました」と出合監督。
米内山氏は「今回は監督がシリーズ構成を切られたので、私は自分の担当話数の原作を読み、大事なポイントを見つけて、それを20数分で見られるよう整えて脚本を書くのが仕事。絵コンテを見せてもらうこともあり、たった一行のト書きが、この数秒のふくらみ方をするんだ……ということに感動する」と仕事での醍醐味を語る。

今シリーズで、初めて一緒に仕事をしたというふたり。「ふたりとも原作がすごく好きで、『スキップとローファー』が好きな人に悪い人はいない(笑)。出合監督は口数が多い方ではないけれど、一言一言深くて、クリティカルなことを言っていただけるし、その静かな内面に嵐のような情熱と感情が渦巻いている方じゃないかなと勝手に思ってます。そして、感情の捉え方がとてもフラット。脚本家は、監督がどの感情を拾うか、どういう風にシーンを捉えているかを大事にしたいと考えますが、出合監督はフラットでフェアでいらっしゃるのが素敵」と米内山氏。
出合監督は、「原作の高松先生もですが、『スキップとローファー』は、そういう視点の作品で、それが求められると思ったから」と謙遜しながら、「米内山さんは自分にはない感覚を持たれていて、一緒にお仕事をしていてそれに気付くのが楽しい。そして感情に届く言葉の選び方をされるのに憧れる」と伝えた。
本作のアニメーションシリーズ化については「構成を決めた時に、原作の流れもそうですが志摩くんの話をメイン軸にと決めた。1話で志摩くんが起点になるところをちゃんと描きたかった。美津未がヒーローで、志摩くんがヒーローに引っ張られて変わっていく、そんなイメージで進めた」と出合監督。
1話での志摩と美津未の今後の関係性を表す象徴的なシーンについて、米内山氏は「脚本はト書き1行しかなくて、“美津未走る、志摩少しずつ笑顔になっていく”くらいのことしか書いていないんです。でも、美津未の足の裏が汚れていく感じや、志摩くんの心が少しずつ引っ張られていく絵の力がものすごい。脚本で監督や絵コンテを描く方をどう刺激できるか……というようなところもありますが、1行をあの絵にされると、もう、参ったなと言うしかない」と振り返る。
「基本的に次の工程に行く場合は、前の工程よりもいいものにする」という意識で制作を進めているという出合監督。「例えばシナリオより絵コンテ、絵コンテより原画、原画より動いた映像……という意識でものづくりをしていきます。いろんな人が入ってくることによって、新しいアイデアや表現を足しながら最終的な映像になっていく。それは、集団作業だからこそ出る面白さだと思います」と語る。
そのほか、上映された各話のさまざまな設定やこだわり、声優キャストとの仕事やオープニングアニメーション制作についても言及した。
最後に、今回のチャリティ上映にあたり、「9話のこの景色が今もうないのかもしれないということに胸がすごく詰まった。広島は瀬戸内海、能登は日本海ですが、海は繋がっている。同じ海で繋がっている人として、少しでもお手伝いになれば」(米内山)、「9話の美津未の実家のシーンは、高松先生の祖父母のお家が写真などからかなり再現されているんです。しかし、そのお家も被災されたそうで、私も胸が苦しいです。(復興まで)本当に長い闘いになると思うので、ご協力いただけたら嬉しいです」(出合)と会場に呼びかけていた。
本プログラムで観客から集まった募金、製作委員会から義援金として寄付してほしいと受取辞退の申し出があった上映料は全額石川県に寄付される。
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