【「ナイトサイレン 呪縛」評論】現代の魔女伝説を題材にした中欧スロバキア発のフォークホラー
2024年7月28日 20:00

「ヨーロッパには今もなお民間伝承や中世の迷信を信じて暮らす、人里離れた村がある」。冒頭にこのようなテロップが提示される本作は、1988年生まれのテレザ・ヌボトバ監督が撮り上げたスロバキアとチェコの合作映画だ。「ウィッチ」「ミッドサマー」の登場によって再注目されてきた“フォークホラー”の流れをくむ恐怖劇である。
映画はシャロータという看護師の女性が遺産相続のため、20年ぶりに故郷の村に帰ってくるところから始まる。幼少期に母親の虐待を逃れてこの村を飛び出した彼女は、その際に妹のタマラを誤って崖から突き落としてしまったトラウマに苛まれている。やがてシャロータはかつて魔女が住んでいたとされる山小屋に身を寄せ、薬草売りの若い女性ミラと心を通わせるが、彼女たちを異端視する地元の人々との間にいさかいが生じていく。
シャロータの視点で描かれる田舎の村には不穏な閉塞感が漂っている。男性優位社会であるこの村では、女性は決まりきった役目を従順にこなすことが求められ、ひとたび自己主張したり奔放に振る舞えば、問題児や売女と見なされる。それだけならまだマシだ。村人たちは前時代的な魔女伝説を信じており、地域の価値観を揺るがすシャロータやミラは魔女狩りの迫害を誘発しかねない。フォークホラーとは非科学的な因習や信仰などの民間伝承を題材にしたホラー映画のサブジャンルだが、まぎれもない現代劇である本作は、世代を超えて脈々と受け継がれる女性への蔑視と抑圧を描いている。
またフォークホラーでは“土地”が重要な要素となるが、都会から遠く離れたスロバキアの山村を舞台にした本作では、森林地帯の風景をダイナミックに、時に神秘的に捉えたショットの数々に目を奪われる。シャロータの行く手にはオオカミや白いヘビがたびたび出現し、グリム童話のような幻想性を醸し出す。さらに村の伝統行事である夏至祭を映像化したパートでは、「ウィッチ」やフォークホラーの元祖たる「ウィッカーマン」を想起させるサイケデリックな裸踊りが繰り広げられる。
かくしてヌボトバ監督は、現実と妄想の境目が失われていくパラノイア的描写を積極的に織り交ぜ、原始的な迷信と現代におけるジェンダーの問題をスリリングに結合させた。そして呪われた主人公シャロータがたどる理不尽な運命を通して、私たち観客に“魔女”を生み出す本当の根源は何なのかと問いかけてくるのだ。
(C)BFILM s.r.o., moloko film s.r.o., Rozhlas a televizia Slovenska 2022
関連ニュース






映画.com注目特集をチェック

「鬼滅の刃」無限城編&超人気アニメ映画が【500円】で観られる!
【絶対にこの記事を読んでから観て】確実に損しないオトク情報
提供:KDDI

売春婦殺人事件、深刻な麻薬汚染…
遺体発見。妹でないことに、少しだけ安堵した。【現代の闇を描く、注目の衝撃作】
提供:BS10スターチャンネル

絶対に開かないでください。
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい
提供:ワーナー・ブラザース映画

雪風 YUKIKAZE
【観て、心から本当によかった】「コード・ブルー」「海猿」に涙した人にもオススメしたい新たな傑作
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、バンダイナムコフィルムワークス

なんだこのとんでもない映画は!?
【観ないのは映画人生の損失?】狂気的なクオリティでぶち抜く“常識外れの超高評価作”
提供:東映

入国審査
【これめっちゃ面白かった】この2人、空港の入国審査で何時間も尋問される…一体なぜ? 衝撃の結末へ
提供:松竹

またピクサーが大傑作つくったんですか…
【ボロボロ泣く感動超大作】両親を失った少年の、再生の物語。そのままの君が好きだよ。
提供:ディズニー

映画界を変える“究極の推し活”がある!
【革命的すぎてヤバい】大好きな俳優と映画を“まさかの方法”でとことん応援できる!!
提供:フィリップ証券

ジュラシック・ワールド 復活の大地
【超絶パワーアップ】観てきたけど…マジ最高!! 究極のスリル、圧倒的な感動、全瞬間が限界突破!!
提供:東宝東和