眞栄田郷敦、絵画特訓の成果がリアルに映る手元まで徹底した演技 映画「ブルーピリオド」撮影現場レポート
2024年7月3日 12:00
眞栄田郷敦が主演し、山口つばさ氏による人気漫画の実写化で話題の映画「ブルーピリオド」(8月9日公開)。原作は2017年6月に「月刊アフタヌーン」(講談社)で連載開始後、「TSUTAYAコミック大賞」「このマンガがすごい!」など国内の主要漫画賞にノミネート、「マンガ大賞2020」を受賞した大ヒット作だ。アニメ化、舞台化もされ、累計発行部数は700万部を超える。
映画は萩原健太郎監督のメガホンで、眞栄田が主人公の矢口八虎役、高橋文哉、板垣李光人、桜田ひよりがメインキャストとして参加、原作をリスペクトしたキャラクターたちが発表され、注目を浴びている。
クランクイン直後の2023年6月に映画.com編集部が撮影現場での取材を敢行。舞台となった美術室での撮影レポート、プロデューサー陣のコメントを紹介する。
周囲の空気を読みながら器用に生きてきた高校2年生、主人公の矢口八虎(眞栄田)。ある日、美術の授業で「私の好きな風景」という課題を与えられ、仲間と夜を明かした後に見た早朝の渋谷の風景を描く。“青く”見えたその風景を想いのままに描くことで、八虎は初めて本当の自分をさらけ出し「生きている実感」を感じ、美術に自分の生きる道を見つける。
「東大より難しい」と言われる東京藝術大学への受験を決意する八虎の前に立ちはだかるのは、才能あふれるライバルたち。美術予備校で出会う天才・高橋世田介(板垣)に、八虎の背中を押す同級生のユカちゃん(高橋)、八虎にとってミューズ的存在の先輩・森まる(桜田)。仲間やライバルに出会う中で、八虎はもがきながらも挑戦し続ける――という物語。
映画.comが見学したのは、廃校となった横浜市の旧瀬谷高校でのロケ。この日は美術室を訪れた八虎に、佐伯先生(薬師丸ひろ子)が、自分が夢中になれる「好きなこと、楽しいこと」で人生を決めてもいいと語り、東京藝術大学という存在を伝え、八虎が受験を決意する重要な場面をはじめ、八虎とユカちゃんの対面、八虎の初めてのデッサンシーンから、美術部員たちと月日を重ねてデッサンをこなし上達していくシーンなどが撮影された。
八虎たちが通う井の頭高校の美術室は、美大出身のプロダクションデザイナーの宮守由衣氏をはじめ、映画制作における美術部と呼ばれるスタッフが一から作り上げたもの。デッサン用の胸像やイーゼルが並び、年季の入った洗い場、壁面の作品群も印刷ではなく実際に描かれたもので、架空の展覧会告知のポスターも貼られているなど本格的に作りこまれ、美術部員たちの活動が目に浮かぶようなリアルな空間だ。
眞栄田をはじめ、キャスト陣はクランクイン前から絵画の特訓を受けた。眞栄田は訓練開始前から良い感覚を持っていたそうで、6時間もの間一度も席を立たず、水も飲まず、驚くほどの集中力で絵に打ち込んだという。指導を担当した新宿美術学院講師の海老澤功氏は「本当に藝大に受かるんじゃないか」とその熱意に太鼓判を押す。
近藤多聞プロデューサーは「映像ではある種の新しさ、見たことのないことをやろうとしています。VFXなど技術面ももちろん、クオリティの高い映像を志そうと考えたのが、山口先生の琴線に引っかかったのではないでしょうか。半年前から始めた絵画練習には、藝大受験のレジェンド講師にお付き合いいただき、そういった本気度が、原作者の山口先生にも響いていらっしゃるような気がします」と、表現のプロである原作者にも響く映像作りを志したと語る。
デッサンシーンは映像としては地味ではあるが、手の動かし方など細部が重要になる。今作では、絵を描く手元やシーンに吹き替えを一切使用しないことにこだわった。2カメ体制で撮影されたこの日のシーンは、八虎は初心者にありがちな鉛筆の持ち方でデッサンする、という設定だったことから、眞栄田は撮影後にモニターで映像を逐次チェックし、講師にアドバイスを求めるという徹底ぶり。半年にも及ぶ絵画特訓を経て、既に素人以上の画力を身につけていた眞栄田に対し、海老澤講師が「下手に描く方が難しいんだよね……」と苦笑する場面も見られた。
またこの日は眞栄田と高橋が、八虎とユカちゃんとして初めて出会うシーンの撮影という記念すべきタイミングだった。スカートの制服に、金髪ロングヘアのウィッグを着用した高橋が校内の廊下を歩いたり、美術室に佇むと、一瞬にして周囲の空気がはっと変わるような存在感を見せていた。「ふたりは相対する役柄ということで、徐々に距離感を縮めながらも、あえて縮めすぎないようにしているような印象はあります。今後重要なシーンの撮影もありますが、お互いそこにむけて緊張感を高めている印象もありますね」(近藤プロデューサー)
豊福陽子プロデューサーは「原作に、八虎が自分が描いた絵の中の渋谷を浮遊するようなシーンがあるんです。これを実写化してこのシーンが成功できたら、すごくエンタメで、見ごたえのある作品になるだろうと思いました。萩原監督にお願いしたのも、そのシーンがきっかけです。漫画では描けるかもしれないけれど、実写にして、現実と地続きで、高揚感もあるシーンにできる方、ということで萩原監督を思い浮かべました。CMやミュージックビデオも手掛けていて、そういった映像に関しては得意でいらっしゃるので、ぜひ実現したいと思ったのがきっかけです」と萩原監督起用の理由を明かす。
フレッシュなキャスト陣、そして「サヨナラまでの30分」「傲慢と善良」(9月27日公開予定)の萩原監督を筆頭に、カメラマン、助監督をはじめ、多くの若手スタッフが結集した萩原組。ピリリとした緊張感あふれる大御所監督の現場とはまた異なり、萩原監督に対しスタッフもキャストもフラットに意見を出し合いながら、全員で作品を作り上げていく様子が印象的だった。
豊福プロデューサーは「八虎はそれまで夢中になれるものがなく、生きている実感がない高校生でしたが、絵を描くという自分が夢中になれることに出会って、彼の世界は変わっていく。鮎川龍二(ユカちゃん)から多様性を学んだり、高橋世田介というライバルに対して何を武器に戦うのか――凡人はその努力と情熱で、ライバルに勝っていくんだって、自分の世界をどんどん広げていく。そういう彼の姿に感動できる物語です。ですので、映画を見終わったお客さんに、少しの勇気を持つことで、自分の世界は変えることができるんだよと伝え、何かを始めようと思っていたけど、一歩踏み出せずにいる人に対して、背中を押してあげられるような熱量のある作品にしたい」と、実写化する意義を熱く語る。
今年の実写映画化発表イベントでも、メインキャスト4人が「何かに対する情熱を大切にしてほしい」と作品のテーマを改めて強調した。そんな俳優、製作陣の熱がみなぎる映画「ブルーピリオド」、藝大受験までの八虎たちの青春、そして努力と葛藤をぜひスクリーンで体感してほしい。映画は8月9日公開。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
十一人の賊軍 NEW
【本音レビュー】嘘があふれる世界で、本作はただリアルを突きつける。偽物はいらない。本物を観ろ。
提供:東映
映画料金が500円になる“裏ワザ” NEW
【仰天】「2000円は高い」という、あなただけに伝授…期間限定の最強キャンペーンに急げ!
提供:KDDI
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 NEW
【人生最高の映画は?】彼らは即答する、「グラディエーター」だと…最新作に「今年ベスト」究極の絶賛
提供:東和ピクチャーズ
ヴェノム ザ・ラストダンス NEW
【最高の最終章だった】まさかの涙腺大決壊…すべての感情がバグり、ラストは涙で視界がぼやける
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
“サイコパス”、最愛の娘とライブへ行く
ライブ会場に300人の警察!! 「シックス・センス」監督が贈る予測不能の極上スリラー!
提供:ワーナー・ブラザース映画
予告編だけでめちゃくちゃ面白そう
見たことも聞いたこともない物語! 私たちの「コレ観たかった」全部入り“新傑作”誕生か!?
提供:ワーナー・ブラザース映画
八犬伝
【90%の観客が「想像超えた面白さ」と回答】「ゴジラ-1.0」監督も心酔した“前代未聞”の渾身作
提供:キノフィルムズ
追加料金ナシで映画館を極上にする方法、こっそり教えます
【利用すると「こんなすごいの!?」と絶句】案件とか関係なしに、シンプルにめちゃ良いのでオススメ
提供:TOHOシネマズ
ジョーカー フォリ・ア・ドゥ
【ネタバレ解説・考察】“賛否両論の衝撃作”を100倍味わう徹底攻略ガイド あのシーンの意味は?
提供:ワーナー・ブラザース映画
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
死刑囚の告発をもとに、雑誌ジャーナリストが未解決の殺人事件を暴いていく過程をつづったベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」(新潮45編集部編)を映画化。取材のため東京拘置所でヤクザの死刑囚・須藤と面会した雑誌ジャーナリストの藤井は、須藤が死刑判決を受けた事件のほかに、3つの殺人に関与しており、そのすべてに「先生」と呼ばれる首謀者がいるという告白を受ける。須藤は「先生」がのうのうと生きていることが許せず、藤井に「先生」の存在を記事にして世に暴くよう依頼。藤井が調査を進めると、やがて恐るべき凶悪事件の真相が明らかになっていく。ジャーナリストとしての使命感と狂気の間で揺れ動く藤井役を山田孝之、死刑囚・須藤をピエール瀧が演じ、「先生」役でリリー・フランキーが初の悪役に挑む。故・若松孝二監督に師事した白石和彌がメガホンをとった。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
ハングルを作り出したことで知られる世宗大王と、彼に仕えた科学者チョン・ヨンシルの身分を超えた熱い絆を描いた韓国の歴史ロマン。「ベルリンファイル」のハン・ソッキュが世宗大王、「悪いやつら」のチェ・ミンシクがチャン・ヨンシルを演じ、2人にとっては「シュリ」以来20年ぶりの共演作となった。朝鮮王朝が明国の影響下にあった時代。第4代王・世宗は、奴婢の身分ながら科学者として才能にあふれたチャン・ヨンシルを武官に任命し、ヨンシルは、豊富な科学知識と高い技術力で水時計や天体観測機器を次々と発明し、庶民の生活に大いに貢献する。また、朝鮮の自立を成し遂げたい世宗は、朝鮮独自の文字であるハングルを作ろうと考えていた。2人は身分の差を超え、特別な絆を結んでいくが、朝鮮の独立を許さない明からの攻撃を恐れた臣下たちは、秘密裏に2人を引き離そうとする。監督は「四月の雪」「ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女」のホ・ジノ。