「マイスモールランド」川和田恵真監督、移民問題を描いた「バティモン5」に込められたメッセージを語る
2024年5月16日 21:30
映画「バティモン5 望まれざる者」トーク付き試写会が都内で開催され、映画監督の川和田恵真が登壇し、作品の見どころを語った。
本作は、パリ郊外で移民家族が多く暮らす地区を一掃しようとする行政と住民たちの衝突を緊迫感たっぷりに描いた意欲作。2020年公開のフランス映画「レ・ミゼラブル」を手掛けたラジ・リ監督が、大都会パリの知られざる暗部を浮き彫りにした社会派ドラマだ。
映画「マイスモールランド」で日本におけるクルド人移民問題を描いた川和田監督。映画の仕上げをパリで行ったため2カ月滞在したそうで、「私が滞在していたのはパリのきれいな部分が見えるところでしたが、実際は路上生活者も日本以上に多く、多くの人がイメージしているパリとは違った面が垣間見えた」と語る。
「バティモン5 望まれざる者」でも、そういったパリの暗部に焦点が当てられている。川和田監督は「この映画にはいろいろな立場の人が出てくるのですが、自分がどの目線にいるのだろうとか、違う立場の人がどんな思いで生活をしているのかを想像することができる作品になっています」と映画のポイントを語る。
川和田監督は、ラジ・リ監督の前作「レ・ミゼラブル」を鑑賞した際、「監督自身も団地で育ったとのことですが、最初は仲間内でドキュメンタリーを撮り、その後に強いメッセージを脚本に乗せて劇映画を作った。私が目指したい作品の完成形だった」と強い衝撃を受けたという。
また川和田監督は、本作で描かれていることは、日本という国を見ても、共通点が多いという。「私が『マイスモールランド』のために取材をした日本に住むクルド人のなかにも、いろいろな問題がありました。例えば騒音やごみの捨て方など、小さなことでも実際生活を行なっていると、大きなストレスになることはあり、ヘイトが起きている場所もありました」。
だからこそ移民が暮らしていくためには、対話をすることが必要であり、国の政策として考えなければいけないことも多いという。川和田監督は「移民と現地に住む人たちがどうやって共生していけるか」ということを、作品を通して考えるきっかけになれば……と語ると「日本でも労働力や観光者として望まれていても、生活者としては望まれていない部分もある」と問題点を挙げる。
また川和田監督は「自分はどちらかというと、狭い世界で俯瞰撮影をしないという作りをしていました。それはあくまで主人公が一人の少女であり、その少女が見える世界を表現したんです」と「マイスモールランド」で描いた視点を述べると「バティモン5」では「ラジ・リ監督は主人公をはっきりと描くのではなく、俯瞰的に捉えることで、観る方も広くいろいろな人に感情移入できる作りにしているのかなと感じました」と感想を述べていた。
最後に川和田監督は「想像力を持って、いろいろな立場の人について考えるきっかけになれば」と述べると「パリでの出来事を描いていますが、日本にもそういった状況があるということを考えながら観てほしい」とメッセージを伝えていた。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。