「SHOGUN 将軍」の時代背景&文化を解説 より楽しむための5つのポイント
2024年4月15日 17:00
真田広之が主演・プロデュースを務め、ハリウッドの制作陣が戦国時代の日本を描くドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」が、ディズニープラスで配信中。関ヶ原の戦い前夜の日本を舞台に、徳川家康や石田三成ら歴史上の人物にインスパイアされた、天下獲りに向けた陰謀と策略の“謀り事”を壮大なスケールで紡ぎ出し、国内外で高い評価を獲得している。
もしも、「時代劇は不慣れ」「歴史の知識がなくて……」と本作を敬遠している人がいれば、それはもう「もったいない!」の一言。そこで「SHOGUN 将軍」をより理解し、楽しむため、この記事では5つのポイントをご紹介する。ドラマシリーズも後半に差しかかり、クライマックスに向けた盛り上がりを見せる“時は来た”タイミングだけに、いまこそ魅力溢れる戦国絵巻に飛び込んでほしい。
15世紀末から16世紀末にかけて、日本各地で戦乱が巻き起こった戦国時代。「SHOGUN 将軍」は、戦国時代の後期にあたる1600年の日本を舞台としている。応仁の乱から100年以上の間、全国各地で台頭した戦国大名が、領地内で独自に法を定め、一元支配する傾向を強め、領地拡大のためにほかの大名と戦闘を重ねていた。
内戦の混乱で、限定的だが、階級の流動性が生まれたのも戦国時代の特徴。“天下人”豊臣秀吉がそうであったように、低階級の農民でも、実力と才覚次第で出世し、足軽、武士、地元の領主、あわよくば天下統一を目指せる時代だったともいえる。
「SHOGUN 将軍」の物語のなかで、日本は戦国時代の混乱の後、中村秀俊(太閤)によって統一される。太閤は死去する前、5人の高位で力のある大名からなる五大老を設立した。彼らの役割は、太閤の若い息子である八重千代が元服(=男子が成人になったことを示す儀式)を迎え新しい統治者となるまで、合議制で政治を行い、日本を割ることなく平和を維持することだった。
従って、吉井虎永(真田)ら5人の大老たちは、動乱の時代のなかで、権力争いに関与せず、世継ぎを守ることを求められた。だが、太閤亡き後の1600年、五大老の間の確執が表面化し、虎永はライバル・石堂和成(平岳大)率いる大老衆に謀反の疑いをかけられ、孤立無援となる。
大航海時代にあった1600年のヨーロッパでは、帝国主義が繁栄。プロテスタントのイギリスに対して、カトリックのポルトガルとスペインが敵対し、戦争が勃発した。スペインと敵対していたオランダは、同様にプロテスタントであるイギリスと同盟を結び、共同航海に乗り出した。
先に日本に到着して、アジア圏の貿易を独占していたポルトガル宣教師や商人にとって、新参者であるイギリス人やオランダ人は邪魔な存在。自らの優位な立場を守るため、「イギリス人とオランダ人は泥棒や強盗である」と日本人に訴え、不信を煽った。「SHOGUN 将軍」の物語で、カトリックの宣教師たちが、虎永の領地へ漂着したイギリス人航海士ジョン・ブラックソーン、後の按針(コズモ・ジャービス)を海賊として処刑しようとするのも、そのためだった。
仏教と神道が長く根付いていた戦国時代。「SHOGUN 将軍」の物語が始まる60年ほど前には、ポルトガルの宣教師たちが日本に到着し、布教活動が一定の成功をおさめると同時に、日本で産出される銀で莫大な利益を上げ、黒船でキリシタン大名と通商し、鉄砲・大砲などを供与していた。
一方、多くの日本人が改宗し、権力を増していったイエズス会(カトリックの男子修道会)に対して、大名らは次第に不信感を募らせ、「キリスト教は伝統的な侍の価値観と相反する」と解釈し、禁教や迫害に至ることもあった。宣教師たちは、南蛮貿易の鍵を握り、有用な通訳であったため、辛うじて容認されていたに過ぎなかったのだ。
その後の江戸時代と比べると、戦国時代の服装や文化は、簡素で実用的で緩い傾向にあったとされる。その理由は、何世紀にもわたる内戦の間、生き残ることが最優先であったため、厳格な慣習が発展しなかったからとも考えられている。
また、戦国時代の女性は、江戸時代と比べ地位が高く自由だった。男性に主導権があったことには変わりないが、多くの女性が一族を守るために武道を心得ていた。また、この時代の遊女は、のちの芸妓文化の核となる音楽や舞踊の訓練を受けた芸能者でもあった。
「SHOGUN 将軍」(全10話)は、ディズニープラスの「スター」で独占配信中。以降毎週火曜に1話ずつ配信される(最終話は4月23日配信予定)。
フォトギャラリー
PR
©2024 Disney and its related entities
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。