第1話で不安は吹っ飛んだ Netflix「三体」はフィナーレまで見届けたい<ネタバレ注意>【ハリウッドコラムvol.350】
2024年3月19日 09:00
ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米ロサンゼルス在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリストの小西未来氏が、ハリウッドの最新情報をお届けします。
NetflixのSFドラマ「三体」がいよいよ3月21日に世界配信される。世界的なベストセラー小説で、「ゲーム・オブ・スローンズ」のクリエイターチームが映像化を手がける話題作だ(中国のテンセントが手がけるドラマ版は別モノ)。
ぼくは原作のオーディオブックを散歩の最中に聞きながら、期待と不安を募らせつつ、この日をずっと待ち続けていた。そして、先日、「三体」シーズン1がマスコミ向けに公開された。第1話で不安は吹っ飛び、気がついたら全8話を見終えていた。
まったく知らない人にひとことで説明するなら、「三体」は地球侵略モノだ。エイリアンははるかに優れた文明を持つ知的生命体だから、人類を滅ぼすことなど、虫けらを踏み潰すことに等しい。
だが、「三体」がユニークなのは、そんな強力無比なエイリアンたちが地球に襲来するまでに400年の年月を要する設定になっている点だ。審判の日までのとてつもなく長い猶予期間のあいだの、人類の葛藤とエイリアンとの駆け引きが三部作にまたがって描かれる壮大な叙事詩になっている。
何の前知識もなくても楽しめる作りになっているので、壮大なスケールで展開するSFドラマを満喫してほしいと思う。
ここから先は、原作ファン向けにNetflix版の違いについて触れておこうと思う。ちょっとネタバレになるので、観賞してからのほうがいいかもしれない。
まず、Netflix版は原作にほぼ忠実なので、ご安心を。原作で描かれた重要なイベントは踏襲されている。
同時にアレンジされている点もある。明白なのは、キャラクター設定だろう。
実は「三体」三部作の主人公は各巻でそれぞれ異なる。「三体」はナノテク素材の研究者の汪淼(ワン・ミャオ)、「三体II 暗黒森林」は元天文学者の羅輯(ルオ・ジー)、「三体III 死神永生」は女性エンジニアの程心(チェン・シン)である。全員が中国人で、舞台も主に中国。そして、生きる時代も異なる。
そのおかげでこの危機が多角的に描かれるわけだが、読者にとっては次巻に進むたびに新しいキャラクターに慣れなきゃいけないというハードルがあった。
Netflix版は、現代のパートの舞台をイギリスのオックスフォードに移した。そして、主要キャラクターはこの大学都市で働く若い研究者たちだ。それぞれ国籍も人種も専門分野も異なるが、自らを「オックスフォード・ファイブ」と呼ぶほどの仲良しだ。
世界をターゲットにするNetflixが、登場人物を多様化させたのは当然の流れだろう。ついでに言うと、原作は女性の扱いがひどかった――絶世の美女か、家事をこなすだけの存在で、深みがないのだ――が、ナノテク素材の男性研究者「汪淼」を女性のオギーに変更するなど、このあたりのバランス感覚もさすがである。
でも、ぼくがもっとも驚いたのは、「オックスフォード・ファイブ」のなかに、三部作の主人公3名が潜んでいたことだ。冒頭はオギーと4人の仲間たち、という感じなのだが、やがてこのなかに「羅輯」と「程心」もいることがわかる。これはNetflix版の発明だ。つまり、オックスフォードに場所を移しただけでなく、主要キャラクターたちが生きる時代も統一したのだ。おかげで、ひとつの物語としての一体感が生まれた。
もうひとつの大きな違いは速度だ。「三体」第1巻の映像化にテンセント版は30話も費やしていたのに、Netflix版は5話でほとんどを終えて、その先にずんずん進んでいくのだ。原作の魅力に、劉慈欣が想像力を羽ばたかせて綴る思考実験やさまざまなサブキャラのドラマなどがあるが、Netflix版ではバッサリいっている。原作と比較すれば、まさに光速の展開である。このあたりは、原作ファンからすると不満があるかもしれない。ぼく自身、ちょっと飛ばしすぎじゃないかと思った。
だが、一緒に視聴したうちの子供たち(13歳と10歳)は、食い入るように見ていたので、ドラマとしては成功しているんじゃないかと思う。
実は現時点でシーズン2以降の製作は決まっていない。かなりの製作費が投じられたリスキーな作品なので、Netflixとしては継続の価値があるかどうか、反響を待ってから判断するつもりなのだろう。
実は、これこそがぼくがこのコラムを書いた理由だ。ぜひ「三体」を観てほしい。そして、もし気に入ったら、口コミを広げてほしい。Netflix版をフィナーレまで見届けたいからだ。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
舘ひろし、芸能生活50年で初の冠番組がスタート! NEW
【“新・放送局”ついに開局!!】ここでしか観られない“貴重な作品”が無料放送!(提供:BS10 スターチャンネル)
室町無頼
【激推しの良作】「SHOGUN 将軍」などに続く“令和の時代劇ブーム”の“集大成”がついに来た!
提供:東映
サンセット・サンライズ
【新年初“泣き笑い”は、圧倒的にこの映画】宮藤官九郎ワールド全力全開! 面白さハンパねえ!
提供:ワーナー・ブラザース映画
意外な傑作、ゾクゾク!
年に数100本映画を鑑賞する人が、半信半疑で“タテ”で映画を観てみた結果…
提供:TikTok Japan
ライオンキング ムファサ
【脳がバグる映像美】衝撃体験にド肝を抜かれた…開始20分で“涙腺決壊”の超良作だった!
提供:ディズニー
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
トニー・レオンとアンディ・ラウが「インファナル・アフェア」シリーズ以来、およそ20年ぶりに共演した作品で、1980年代の香港バブル経済時代を舞台に巨額の金融詐欺事件を描いた。 イギリスによる植民地支配の終焉が近づいた1980年代の香港。海外でビジネスに失敗し、身ひとつで香港にやってきた野心家のチン・ヤッインは、悪質な違法取引を通じて香港に足場を築く。チンは80年代株式市場ブームの波に乗り、無一文から資産100億ドルの嘉文世紀グループを立ち上げ、一躍時代の寵児となる。そんなチンの陰謀に狙いを定めた汚職対策独立委員会(ICAC)のエリート捜査官ラウ・カイユンは、15年間の時間をかけ、粘り強くチンの捜査を進めていた。 凄腕詐欺師チン・ヤッイン役をトニー・レオンが、執念の捜査官ラウ・カイユン役をアンディ・ラウがそれぞれ演じる。監督、脚本を「インファナル・アフェア」3部作の脚本を手がけたフェリックス・チョンが務めた。香港で興行ランキング5週連続1位となるなど大ヒットを記録し、香港のアカデミー賞と言われる第42回香港電影金像奨で12部門にノミネートされ、トニー・レオンの主演男優賞など6部門を受賞した。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。